「お料理を持ってきましたニャ」飲食店で広まる配膳ロボット 福井県内、人手不足解消し宣伝効果も

「岩塩熟成ジンギスカンぼんた福井駅前店」で導入している猫型の配膳ロボット。愛らしい表情などが家族客に好評という=福井県福井市大手2丁目

 人手不足に悩む福井県内飲食業界で、客席に料理を運ぶ配膳ロボットを導入する動きが広がっている。店舗運営の省人化や新型コロナウイルス感染防止の「非接触」接客に役立つ上、ロボットの愛らしい表情などが家族客に好評という。飲食店経営者や関係者からは「地方の飲食店は従業員やアルバイトの確保が難しく、配膳ロボットはさらに普及するだろう」との声が出ている。

 「ジン、ジン、ジンギスカン♪」。軽やかな音楽を鳴らしながら、画面に猫の顔を表示したロボットが料理を載せて滑らかに店内を走行。客席のテーブルに到着すると、「ご注文のお料理を持ってきましたニャ」などと客に話しかける。

 福井市大手2丁目の「岩塩熟成ジンギスカンぼんた福井駅前店」は2022年8月に猫型の配膳ロボットを導入した。調理場付近に待機しているロボットに、客から注文のあった料理を載せて画面のテーブル番号を押すと、そのテーブルまで自律走行して配送する。AI(人工知能)音声機能などが内蔵され、客が触ると反応し、画面に映る猫顔の表情も豊かだ。

 同店などを経営する「ぼんたグループ」は同店を含め2店舗で配膳ロボットを導入している。齋藤敏幸社長は、導入理由について「人手不足が一番大きい」とし、省人化やデジタルトランスフォーメーション(DX)による生産性向上の一環だと強調する。

 店舗の売上高に対する人件費の割合は通常30%程度だが、導入によって21~22%まで縮減できているという。ロボットには客が食べ終えた皿を回収する役割もあり、後片付けの効率化につながっているほか、「家族連れや子どもが喜び、宣伝効果もある」と付け加える。

 福井市荒木新保町にある焼き肉・ホルモン鍋の「六間星山福井店」も22年8月に配膳ロボットを導入した。経営するソンサン商店の星山永福社長は「社員やアルバイトを募集してもなかなか来ない。人手不足解消のため絶対に必要になると思ったし、ロボットは教育もいらない」と導入経緯を話す。

 福井店では従業員が配膳するゾーンとロボット配送範囲を分けるなどして運用。ロボットのリース代はアルバイト1人分の賃金と同程度という。省人化に向け、店ではロボットのほか、タブレット端末による注文システムを取り入れ、セルフレジも検討中だ。

 福井労働局によると、22年12月の職種別の有効求人倍率で飲食店などの「接客サービス」は6.94倍と、人手不足感が高い職種だ。配膳ロボットの販売代理店を担うネットシステム(福井市高木中央2丁目)の担当者は「コロナ禍の影響もあって県内飲食店の人手不足は深刻化しており、ロボット導入の問い合わせが多い」と話す。星山社長は「地方の郊外店は従業員確保が今後さらに難しくなるだろうし、配膳ロボットが普及していくと思う」と分析した。

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