物語の舞台は「東洋のベニス」アジアドラマは歴史と文化を知ればもっと面白い!

「瓔珞<エイラク>~紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~」のプロデューサー、ユー・ジョンが手がけた新作時代劇「清越坊の女たち〜当家主母〜」が日本上陸。「瓔珞<エイラク>〜」と同じく清朝・乾隆帝時代が舞台となる本作は、経済・文化の中心地・蘇州で伝統織物の技術を受け継いでいく女性たちが主人公。物語の背景となる歴史や文化について解説します。


「清越坊の女たち」のあらすじ

蘇州の四大織り元、任(じん)家で伝統織物・緙絲(こくし)の技術と経営を学んだ沈翠喜(しんすいき)は当主の任雪堂(じんせつどう)と結婚して工房・清越坊(せいえつぼう)を仕切る女主人となります。しかし、任雪堂が愛しているのは幼なじみの恋人で元令嬢の曽宝琴(そほうきん)。任雪堂は蘇州知府だった父親の汚職の罪で没落し楽戸(がっこ)に身を落とした曽宝琴を身請けすると別宅に囲います。その結果、正妻の沈翠喜と妾(めかけ)の曽宝琴は女性のプライドを懸けて対立することに。

そんな中、蘇州では生糸の値上がりが続いて不穏な陰謀の影がちらつき、任雪堂が行方不明となります。さらに、心に傷を抱えて生きる魏良弓(ぎりょうきゅう)が現れたことで、沈翠喜と曽宝琴の関係も変化していくことになります。

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物語の舞台は乾隆帝から嘉慶帝時代の蘇州

清の第6代皇帝・乾隆帝の治世は文化や経済が繁栄した清代の最盛期と言われています。乾隆帝は江南地方を巡る視察旅行「南巡」を6回行い、蘇州は乾隆帝のお気に入りの地となりました。

蘇州はマルコ・ポーロが「東洋のベニス」と呼んだ運河の流れる美しい街並みや庭園で知られる古都。古くから刺繍や織物の技術が発達したほか、崑曲などの芸能文化や学問も盛んで、清代には商業地としてさらに発展しました。

COLUMN 1「正妻と妾」

宮廷で皇后とその他の妃たちの身分にはっきりと違いがあるように、庶民の一族でも正妻と妾の待遇には大きな差がありました。妾は正門から輿入れできず、夫と正妻に跪くだけの婚礼が行われ、夫との共寝は多くて5日に1度。毎朝、正妻に挨拶を欠かしてはならないなど正妻に尽くすことが義務づけられていました。また、妾は子供を産んでも一緒に暮らせるとは限らず、正妻に子供がいない場合などは、正妻が嫡母として妾の子供を育てることも珍しくありませんでした。

COLUMN 2「清代の織造局」

清代は各地の織造局が政治に大きな影響力を持っていました。例えば康熙帝時代、蘇州織造局の長官を務めた李煦は現地の経済や社会状況、官吏の評判などの情報を皇帝に直接報告する役目を果たしていました。なお、李煦の妹が嫁いだのが江寧織造局の長官・曹寅。「紅楼夢」の作者として有名な曹雪芹は曹寅の一族で、彼の父も康熙帝時代に江寧織造局の長官として栄華を誇りました。しかし、雍正帝に代替わりすると没落、曹雪芹はその後、貧しい生活の中で「紅楼夢」を書いたと言われています。


TEXT: 小酒真由子(フリーライター)

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