1キロあたり1万8000円のカニに「幻の魚」も! 高級食材が豊富な瀬戸内海は「宝の海」 広島漁業の最前線に迫る

濃厚な味が人気のガザミに…。幻の魚と呼ばれるキジハタ…。瀬戸内海で獲れる高級食材を増やして、漁業に潤いを! 広島を代表する海の幸「カキ」の生産現場では、未来を見すえてデジタル技術を導入する取り組みが進められています。瀬戸内海は「宝の海」。広島の漁業最前線に迫ります。

広島市中区の和食店「魚菜家」です。「地域の食材をもっと盛り立てよう」と、地産地消にこだわっています。

いけすで泳ぐ瀬戸内海でとれたウマヅラハギは、年間を通して食べられることから幅広い世代に人気です。

末川徹 記者
「身は薄いが、きれいです。肝醤油をたっぷりつけて、いただきます。かんでも、かんでも味が出る。初めて食べましたが、おいしい」

旬の時期になると、およそ30種の豊富な「海の幸」がメニューに並ぶといいます。店も太鼓判を押しているのが、ガザミことワタリガニです。

魚菜家 片本功 店長
「人気ですね。味の王様なので、カニ好きにしたら、どうしようもないくらい食べたい」

気性が荒いことに加えて、爪などが折れないようにと輪ゴムでとめられています。その後、15分から20分蒸したら塩ゆでの完成です。

ワタリガニは、1キロあたりの価格がなんと1万8000円から。漁獲量が非常に少ないことなどから、この店でも週に1匹から2匹しか入らない貴重な海の幸です。ほかのカニよりもさらに凝縮したうま味が、ワタリガニの特徴です。冬のこの時期、メスは内子も楽しめます。

こうした海の幸を支えているのが、竹原市にある広島県栽培漁業センターです。

カサゴ・オニオコゼ・ガザミにキジハタ… 高級食材を育て放流 海の幸を支える縁の下の力持ち

広島県栽培漁業センターでは、瀬戸内海の恵みをさらに豊かにして漁業関係者に還元しようと、放流するためのメバルやカサゴ・オニオコゼなど、9種類の魚介類を育てています。

水槽には、メバルやカサゴの稚魚が元気に泳いでいました。メバルは4月下旬に、カサゴは3月中旬に放流されます。

そして、高級食材のガザミもいます。ことしに入って購入したもので、親になるカニです。

広島県栽培漁業センター 松原弾司 開発担当部長
「1月から3月の間に天然からとってきて、5月の連休明けにふ化するように調整しています」

ここで育ったガザミの赤ちゃんは、各地の漁協に送られ、そこから放流されます。県は、2016年からガザミを集中放流をしています。去年、放流した数は120万匹にも上るといいます。

さらに、この水槽で泳いでいるのは、「幻の魚」と呼ばれるキジハタです。瀬戸内海地域では「アコウ」の名で知られる高級魚です。

7月下旬に卵をとり、稚魚を育てて、10月に放流します。キジハタも2016年から集中放流していて、年々、漁獲量が増えているといいます。

広島県栽培漁業センター 松原弾司 開発担当部長
「たくさんとれて、漁師さんも潤う。非常においしい魚なので、みなさんに食べていただきたい」

そして、瀬戸内海の幸の代表格と言えば「カキ」です。生産量全国一を誇る広島のカキの養殖には、デジタル技術を取り入れた試みが行われています。

瀬戸内海の幸といえば「カキ」 デジタル技術を活用した養殖に迫る

このカキについて、身入りのいいカキを安定的に生産するため、デジタル技術を導入する取り組みが進められています。

全国一の生産量を誇る広島のカキです。県は、昨年度からカキ養殖にデジタル技術を導入する事業を、県内の3つの地区で始めています。

その1つ、廿日市市の地御前漁協では青年部のメンバーが取り組んでいます。沖合に浮かぶカキ筏の横に小さな筏がありました。

地御前漁協 青年部 増木進一さん
「水温と塩分濃度と、クロロフィルといって海の中のエサを測る機械がついているセンサーですね」

海の中をのぞくと、センサーが取り付けてあります。水温・塩分濃度・エサの量を測る3つのセンサーは、それぞれ水深1m・5m・10mの地点に取り付けられています。

センサーの情報はタブレットやスマートフォンなどで、いつでもどこでも確認することができます。水温や塩分濃度・エサの量の変化がリアルタイムで反映されます。

地御前漁協 青年部 増木進一さん
「海の中が手元で分かるというのは、どれをとってもありがたい」

特にこれまで把握できなかった海中のエサの量がデーターとして分かることは大きなメリットです。よりエサが多い時期が分かることで、効率よく身入りを良くすることができます。

増木さんは、これから10年・20年先とこうしたデーターの活用に期待を寄せています。

地御前漁協 青年部 増木進一さん
「今までは海の中がどうなっているかのデーターがなかった。今の時代ならではで携帯端末でリアルタイムで見ることができる。今から先、もっともっとカキ養殖に活用できていければ」

県は、来年度以降も業者の人たちにとって使いやすい方法を探るとしています。

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