うれしい、気が抜けない…埼玉各地で積雪 「落ち着いた雰囲気でいい」雪化粧の観光地を楽しむ人も

時の鐘や蔵造り建築で知られる中心市街地も白く雪化粧した=10日、埼玉県川越市幸町

 低気圧の影響で10日の埼玉県内は午前中から雪が降り始め、大雪警報が出された。通行人は滑って転倒しないよう身を震わせながら歩き、観光地では銀世界の風景を写真に収めるカメラマンの姿も。日中の気温もほとんど上がらず、週前半の温かさから一転、厳冬の凍える寒さが戻った。

■さいたま

 さいたま市のJR浦和駅周辺では正午ごろ、湿っぽい雪がパラパラと降った。歩道は溶けかけたシャーベット状の雪で滑りやすく、踏みしめるように歩く通行人の姿も見られた。

 「長靴を履いて歩いていても転びそう、気が抜けない」。駅周辺に住む80代女性は苦笑い。夕方ごろに買い物に出かけるのが日課だが、雪が積もることを懸念して時間を早めたという。

 浦和商業高校では、雪予報を受けてこの日は短縮授業を行う予定だったが、その後に大雪警報の発表でさらに短く、午前中で放課になった。同校に通う男子生徒(16)は「内心うれしいが、テストも近いので、不要な外出を控えるためにも勉強しようと思う」と話した。

 駅周辺の商業施設にある駐車場で20年以上、交通整理をしている70代男性によると、同時間帯の駐車状況は先週の同曜日と比較して3割程度だという。体調管理のために持ち歩いている気温計は1.7度を表示。「今日はいつもより1枚多く重ね着をした。日が暮れるともっと寒くなるので体調には気を付けたい」と語った。

■川越

 蔵造りの町並みで観光客に人気がある川越市の中心市街地も朝から雪。多くの商店が営業を始める午前10時ごろには、道路脇や屋根などに積もり始めた。大雪を予想して臨時休業する店もあったが、老舗和菓子店の亀屋は川越一番街商店街にある同市仲町の本店を通常通り同9時にオープン。地元住民が進物用に買い求める需要もあるため、山崎淳紀専務(36)は「できるだけ閉めないようにしたい」。だが、次第に強まる雪を気にかけつつ、「自転車通勤の従業員には早く帰宅してもらうなど、状況を見て安全を確保しなければ」と話していた。

 好天の日は観光客でにぎわう時間帯になっても、出足は鈍いまま。それでも、寒さに凍えながら町歩きを楽しむ人の姿も。大阪市から訪れた60代の会社員女性は「以前来て気に入ったので、群馬への温泉旅行のついでに寄った。雪になるとは思わなかったけれど、ほかの観光客が少なく、落ち着いた雰囲気でいい」とほほ笑んだ。

■長瀞

 午前7時過ぎから雪が降り始めた長瀞町の秩父鉄道長瀞駅前では、駅員や町観光協会職員らが雪かき作業に追われた。都内から家族4人で観光に訪れた大島達也さん(46)は「観光に行ける範囲は限られてしまうが、雪の風情を楽しみながら神社巡りをしたい」と話し、シャトルバスで宝登山神社(同町長瀞)へ。大島さんの長女千鶴さん(4)は「雪が降ってうれしい」と笑顔を見せていた。

 宝登山の山頂付近にあるロウバイ園は、一面銀世界に包まれた。同園は敷地約1万5千平方メートルに約3千本のロウバイが植えられ、現在は西ロウバイ園の開花が進んでいる。宝登山ロープウェイはこの日も通常運行し、雪をかぶったロウバイの花を楽しむ観光客の姿が見られた。

 同ロープウェイ助役の大島基文さんは「雪の日は毎年、観光客は少ないが、ロウバイの写真を収めに来る方は結構多い。天気予報によると、今回の雪は長引かないと聞くので、明日も通常運行を予定している。くれぐれも足元に注意し、雪の景色を楽しんでほしい」と話した。

■行田

 行田市本丸にある忍城も雪化粧した。人影は少なかったものの、傘を差しながら風情ある忍城を写真撮影する人の姿も見受けられた。写真撮影していた北本市在住の男性(75)は「城の雪景色を撮影したいなと思ってきた」と白い息を吐いた。

雪をかぶったロウバイを楽しむ観光客=10日午前11時ごろ、埼玉県長瀞町のロウバイ園
雪化粧し、風情ある姿となった忍城=10日午後1時15分ごろ、埼玉県行田市本丸

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