貴重な初版本 島外で初公開 対馬出身作家・半井桃水「胡砂吹く風」 長崎で出張展

「対馬の先人を長崎の人にも知ってほしい」と話す小島さん=長崎市、県立長崎図書館郷土資料センター

 対馬出身で明治、大正時代の作家、半井桃水(なからいとうすい)(1861~1926年)の代表作「胡砂(こさ)吹く風」の貴重な初版本が、長崎市立山1丁目の県立長崎図書館郷土資料センターで展示されている。対馬市厳原町の「半井桃水館」が同センターの企画展「対馬市ゆかりの資料」に出展し、島外での公開は初めて。同展は無料、26日まで。
 半井は少年期を韓国・釜山で過ごし、朝鮮語に精通。日本の新聞社初の海外特派員として朝鮮で活動後、新聞連載小説を数多く手がけて人気を博した。作家の樋口一葉が師と仰いだことでも知られる。
 「胡砂吹く風」は明治期の日本と朝鮮を舞台に、両国の風土や人々を描いた作品。初版本は新聞連載後の1892年出版。「樋口一葉日記」に当時、半井が樋口を訪ねて初版本を贈ったことが記されている。
 展示の初版本は、同館が半井の生家跡に開館した2006年に島内の旧家から寄贈を受けた品。日露戦争に従軍した際の記事が載った新聞、直筆はがきなどを合わせ、半井ゆかりの計約50点が並ぶ。企画展はほかに、対馬の郷土史家で15年死去した永留久恵さんの著書「対馬国志」の直筆原稿など、25点ほども併せて展示。
 同館を運営する地元のNPO法人「対馬郷宿」会員で県職員の小島俊郎さん(56)は「対馬の歴史と文化に育まれた郷土の先人を、長崎の人にも知ってほしい」と話した。


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