TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の斬新さと高橋洋子「残酷な天使のテーゼ」  エヴァを伝えるのは難しい…… だからこそ面白い!

1995年に放送開始 「新世紀エヴァンゲリオン」の斬新さ

ある日、テレビをぼんやり眺めていたら、なんだかまったくワケが分からないアニメに出会った。何かと闘っているけれど、何と闘っているのかすら分からない。その日は “ぽかーん” としたまま終わってしまった…。

翌週も観た。

“分からない…”

また翌週へ、さらに翌週へ…。

“まったく、分からない!!”

ーー 迎えた最終二話。いきなり、セルアニメから離れ、まるで絵コンテの連続のような画風で、主人公のエヴァンゲリオン初号機パイロット・碇シンジの内面世界が描き出された。もはや哲学の世界で、賛否両論飛び交った。

個人的にはこのラストが斬新で、深くて、“既存のアニメでここまでやるのか” と、この瞬間に作品の虜になってしまった。これが1995年10月に放送が開始されたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』との出会い。まさに私のファーストインパクト!

まさかこののち、約25年後に結末を迎え、そんなに長い時間、作品に引っ張られていくとは思いもしなかった。余談だが、熊本地震で被災したときも揺れの中、真剣に “エヴァの完結を見届けるまでは死ねない” と思った(苦笑)。そのくらいエヴァという作品を見届けることは自分の中の生きるモチベーションになっていた。

エヴァの名台詞「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」

アニメ版から時は流れ、2007年「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」から始まった四部作。2021年「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」でついにエヴァの長い旅を終えた。物語が終着点を迎えたことから、エヴァに疎い人たちからよく「結局、エヴァってどんな話だったの?」と聞かれることが増えた。一生懸命、説明するも「言ってる意味が分からない」と言われる始末ーー。

そう、実はこれだけ観てきたのに未だに私も “分かってない” のだ。いや、それでも最終作で分かったことはたくさんあったし、素晴らしい着地をしたと思っている。広げるだけ広げた大きな風呂敷、数々の伏線やナゾの回収もできたし大満足の結末だった。

それだけエヴァを伝えるのは難しい。今、こうして振り返って思うことは、“分からないから面白い” のかもしれないということだ。

エヴァンゲリオン初号機パイロット・碇シンジの「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ」という名台詞。嫌なことから「逃げだしたい」気持ちと、「逃げちゃダメだ」という狭間で苦しむさまに、多くの人が自分を重ねた。

きっと放送当時は、“逃げていい” は肯定されていなかった。 “逃げちゃダメだ” の間で人々が揺れた微妙な時代だったのだろう。けれど、きっと今の時代なら、“逃げてもいいよ” なのだろうなぁ…“逃げていい” が肯定される時代になったと思うと時代の変化を感じてしまう。

エヴァは、シンジの葛藤や大人になっていく姿を軸に、少女パイロットたち、回りの大人たちの心の内側を赤裸々に描き、どのキャラクターに自分を当てはめて観るかによっても、ストーリーは違った光景を見せてくれた。

映像のシンクロ率、無限大!「残酷な天使のテーゼ」

そしてエヴァの魅力で忘れてはならないのが音楽の素晴らしさだ。オープニング曲は言わずと知れた「残酷な天使のテーゼ」。高橋洋子の確かなボーカルがエヴァの世界に引き込む役割を果たす。オープニング映像ではこの曲と映像のシンクロ率が100%、いや無限大! 音楽に合わせて細かく映像を切り替えていく構成「フラッシュカット」と呼ばれる手法を使い、視覚と曲が一体となり、観ている人にたたみ掛けてくる。

しかもそのワンショット、ワンショットが物語の重要なポイントだったり、伏線だったり、謎のてんこ盛り。情報量があまりに多く、一瞬も目が離せない。見落とすまいと何度も観る、聴く、入り込む。そして気がつけばいつの間にか、エヴァに夢中になっていく… という、オープニングはまさに沼の入り口だった。

今では不動のアニソンとなった、通称「残テ」。2021年にスマートフォン向けゲーム「にゃんこ大戦争」のコラボ楽曲「にゃん酷なにゃんこのテーゼ」として、“にゃーにゃ、にゃーにゃーにゃ” とテレビから聴こえてきたときは笑いが止まらなかった。

まさかの高橋洋子さん本人が歌っており、フルコーラス、歌詞はすべて “にゃ”。それなのに声の表情の付け方、表現力がとても素晴らしくて、さすが!と思わずにいられない。映像も本家エヴァのオープニングと同じ構成、同じタイミング。すべてを忠実に再現。「にゃーにゃー」の歌声と、登場キャラすべてが “にゃんこ” に変えられている以外は…。

人生に最高の楽しみをくれたエヴァンゲリオンへ「さようなら」そして、「おめでとう」

音楽は庵野秀明作品ではお馴染みの鷺巣詩郎が長年にわたり担当。印象的なフレーズ “デンデンデンデン ドンドン” で知られるエヴァ戦闘シーンで使われる名曲をはじめ、お馴染みのインストゥルメンタル曲が作品の緊迫感や躍動感を盛り上げてきた。

今こうしてエンドレスな物語と思われてたエヴァが見事に幕を下ろしたわけだが、振り返れば、その時代、時代で素晴らしいクオリティの作品を見せて、魅せてくれた。ストーリー、構成、主題歌、そして印象的な鷺巣詩郎による楽曲たち、すべてが揃ってこそのエヴァンゲリオンだ。

人生に最高の楽しみをくれたエヴァンゲリオンへ「さよなら」、「ありがとう」。そしてやっぱりアニメのラストを飾ったこの言葉を贈りたい。

―― おめでとう!

カタリベ: 村上あやの

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