駅前ロータリーにEV用充電器 横浜市などが実証実験

実証実験の開始式でEVに充電器を差し込む四ツ柳社長(右)と山中市長=横浜市都筑区

 日産自動車(横浜市西区)など7社が出資するイーモビリティパワー(東京都)と横浜市は、電気自動車(EV)の普及に向けて実証実験を開始した。同市都筑区の市営地下鉄センター南駅前に、EV用充電器2基を設置。利用者の需要や課題を把握し、充電インフラの整備に生かす。公道への設置は同市青葉区に続き全国2例目で、駅前ロータリーは国内初となる。

 実証実験を展開するのは、一般車の乗り入れが可能な駅前ロータリーの一角。EVとプラグインハイブリッド車(PHV)向けの急速充電器2基を設置し、車2台分の専用駐車枠を用意した。本来は駐車禁止エリアだが、充電の場合に限って対象外とする。

 充電器は24時間、有料で利用できる。1回の充電時間は最大30分だが、出力が50キロワットあるため、「どの車種でも一定程度までは充電できる」とイー社の四ツ柳尚子社長。まずは、1基当たり月150回程度の利用を見込む。

 実証実験は来年3月まで展開する。利用者へのアンケートなどを通じて、公道に充電器を置く有用性や安全面などの課題を検証。「EV時代」の到来を見据え、充電インフラの在り方を探る。

 現地での開始式に参加した四ツ柳社長は「駅前の好立地で商業施設や店舗の充電器以上に利用しやすい。多くの方の目に触れれば、EV購入の心理的なハードルも下がる」と意義を強調。山中竹春市長は「EVの普及は二酸化炭素(CO2)排出量の削減につながる。市として日本の脱炭素化をけん引したい」と力を込めた。

 イー社と市は2020年3月、EVの普及促進に向けて連携協定を締結。21年6月には、同市青葉区で公道に急速充電器を設置する全国初の実証実験を開始し、現在も継続している。

 市温暖化対策統括本部によると、充電器の利用回数は21年度に月平均約250回だったが、22年度は約300回に増えた。昨年12月には単月で400回を超えるなど、「全国的に見てもトップクラスの利用実績」(四ツ柳社長)という。市の担当者も「ユーザーの反応は良好なものばかり。設置場所の拡充を求める声も多い」と話す。

 ただ、国内の充電インフラ整備は一進一退の状況にある。自動車販売店や大型商業施設の駐車場を中心に新設が進む一方、採算が合わずに撤去するケースが相次いでいるためだ。四ツ柳社長は、充電器の整備をビジネスとして成り立たせるためには「EVが現状の5倍以上普及しなければ厳しい」との見解を示す。

 市は民間企業の調査などから、市内に設置された充電器は現在800基程度と推測。インフラ整備の加速には、公道の活用が欠かせないとの認識だ。担当者は「充電器が増えなければEVの普及は進まない。インフラ整備を力強く推進していく」と話している。

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