一家で地方移住後、リモート勤務縮小で週1自腹で飛行機通勤になった会社員。今後どうする?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、35歳、会社員の男性。コロナ禍にリモートワークが導入されたため、一家で地方へ移住したものの、現在は週1出勤が必要に。交通費の負担が生活を圧迫しているといいます。今後の選択肢は? FPの氏家祥美氏がお答えします。


コロナ期間でリモートワークに切り替わったことがきっかけで、地方に移住しました。しかし、徐々にフルリモートが解除となり週1回は出社が義務化されましたが、会社からは遠方分の交通費は出せないと言われてしまいました。この数カ月、出社時の飛行機代を自己負担しているのですが、このまま出社日が増えていったら賄いきれなくなります。

移住時に賃貸から持ち家になったことや、子どもの学校のこともあって、引っ越しは考えていません。超過分の交通費の補助を受けられたり、その他で補填を受けられる制度はないでしょうか? また、他にも何かいい方法はないでしょうか?

【相談者プロフィール】

・男性、35歳、会社員

・妻、37歳(共働き) ・子ども:9歳、6歳

・住居の形態:持ち家(戸建て、高知県)

・毎月の世帯の手取り金額:75万円(ともに月収37万5,000円程度)

・毎月の世帯の支出の目安:40万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:15万円

・食費:10万円

・水道光熱費:3万円

・教育費:5万円

・保険料:2万円

・通信費:1万円

・車両費:3万円

・お小遣い:1万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:5万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):300万円

・現在の投資総額:50万円

・現在の負債総額:住宅ローン残債2,700万円(物件購入額3500万円、借入額3000万円、金利1.75%、返済期間35年)

氏家:地方にマイホームを購入して家族で移住をしたご相談者さんですが、完全フルリモートではなくなり、想定外の飛行機通勤になっているのですね。今後どんな選択肢がとれるのか、一緒に考えていきましょう。

移住先の選び方は大きく3つ

コロナ禍では、相談者さん同様に、自然環境が豊かな場所に移住を考える人が増えました。移住の仕方としては、大きく3つに分けられます。一つ目は、状況が変わったらすぐに元の暮らしに戻れるように、一定期間だけ賃貸物件を借りるという方法です。この場合、勤務先がフルリモート勤務であれば、Wi-Fiなどの通信環境さえ整っていれば、全国どこにでも移住が可能になります。ひとり暮らしの場合には身軽に移住できます。家族連れの場合には、お子さんの学校や配偶者の勤務先などの調整が必要になりますが、それでもフルリモート期間をチャンスととらえてお試し移住した方はいるでしょう。

二つ目は、毎日電車で通うには遠いけれど週1、2回だったら電車で通ってもいいかなと思える距離のエリアを選ぶやり方です。子育て世代が、高騰した都心でマイホームを購入するよりも、環境がいい場所に安価で広い物件を購入できることにメリットを感じる人が選択しました。まずは賃貸で住んでみて、実際に子育てや通勤をしながら試してみて、購入するかどうかを決めるといいでしょう。

三つ目は、移住者の受け入れに積極的な自治体の中から移住先を選ぶという方法です。こうした自治体のなかには、一戸建て住宅を安い家賃で借りられたり、空き家物件を数百万円で購入できたりと住宅支援があるところがありますし、移住者向けに転職サポートをしているところもあります。移住先での収入がこれまでより低くなっても、住居費負担が少なく、その他生活費も安く済めば、生活できるという考え方になります。

今の会社に勤めるなら交通費負担はやむを得ない

移住にもさまざまな選択肢がある中で、ご相談者さんは、現在の移住先を選び、マイホームを購入しました。勤務先が当時フルリモート勤務だったとはいえ、飛行機でしか通えない場所に、35年間ローンを組んで一戸建てを購入というのは思い切った決断です。きっと思い入れのある土地なのでしょうね。

会社から飛行機代が出ないということですが、会社が転勤を命じたわけではないので、交通費既定の範囲内で交通費の支払いとなるのはやむを得ないでしょう。

「超過分の交通費の補助を受けられたり、その他で補填を受けられる制度はないでしょうか?」ということですが、残念ながら、航空券の早割や回数券、格安航空券などを駆使する、夜行バスを利用するくらいしか、交通費の負担軽減策は浮かびません。

世の中には、完全フルリモートができる会社、遠距離者向けの支援制度がある会社はあるでしょう。都市部への通勤者支援制度がある自治体も、もしかしたらあるかもしれません。しかし、今回の選択がそうした会社や自治体の制度にのっとった選択ではないため、交通費の自己負担はやむを得ないでしょう。

第2の選択肢は「暮らしを維持して会社を辞める」

家も会社も今のまま続けるとすると、交通費を自分で負担し続けることになります。それがどうしても苦しい、という場合には、第2第3の選択肢から選ぶことになるでしょう。

第二の選択肢は、いまの住環境を維持するために会社を辞めることです。暮らし自体は変わらないため支出は現在のまま変わりませんが、現在の住まいの近くで転職先を探すことになると収入が大幅に減少する可能性があります。

ご相談者さん夫婦は現在、共働きでいらっしゃいます。ご夫婦に37万5,000円ずつ稼ぎがあり、合計では月額75万円になります。それに対して毎月の支出は40万円です。40万円の内訳は、住居費15万円、食費10万円、教育費5万円が目立ちますが、それ以外はとてもコンパクトに抑えられています。

仮に月収が15万円減ったとしても、手取りで60万円あれば20万円貯蓄できる計算になります。いまの生活を守っていけば家計は十分に成り立つでしょう。現在の家計には金融資産が350万円(預貯金300万円+投資50万円)しかありませんから、今後も貯蓄を増やせるように引き締めて生活をしていきましょう。

第3の選択肢は「会社に残って家を手放す」

第3の選択肢は、収入を維持するために会社に残り、家を誰かに貸し出す方法です。賃料収入よりもローンの支払いが多くなるかもしれませんが、それでも夫婦の収入を維持できるメリットは大きいでしょう。毎週飛行機代を自己負担して通勤をすることを思えば、家計にとっての負担は少なくてすむでしょう。

いつか自分たちで住むことにこだわらなければ、家を売却してローンの残債を減らしてしまう方法もあります。

ただし、「移住時に賃貸から持ち家になったことや子どもの学校のこともあって、引っ越しは考えていません。」という言葉からは、この場所で家族で暮らしていくという強い意志が感じられます。そうなると、あまり気乗りのしない選択肢かもしれませんね。

価値観の優先順位付けと、価格を調べることから始めよう

「会社に交通費を負担してもらいながら、いまの家に住み続け、夫婦で今の仕事を続ける」がベストシナリオでありますが、それが難しい場合は、家をとるか、仕事をとるか、家族にとっての優先順位を決める必要があります。

選択しがたい場合には、それぞれの選択をした場合にかかる金額を調べることが役に立ちます。第1の選択肢では、交通費を毎週自己負担した場合の合計額が家計にとっての損失になります。一番安い方法を探して合計額を出しましょう。

第2の選択肢では、転職した場合の収入減少が家計にとっての損失になります。転職エージェントなどに登録して近隣で新たな仕事を探す場合について相談してみてもいいでしょう。

第3の選択肢は、家を貸し出した場合の賃料収入と住宅ローンの返済の差額が目安になります。もしくは家を売却した場合とローン残高の差額で計算してもいいでしょう。不動産会社に査定を依頼するといいですが、近隣の不動産広告で類似物件を探すことも参考になるでしょう。

それぞれの条件を数字で具体化して、家族の価値観とあわせて、これから取れる選択肢を検討してみましょう。

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