3年ぶり祭りばやし響く 水門祭、規模縮小もにぎわう

大勢が見守る中、奉納された獅子舞(和歌山県串本町大島で)

 和歌山県串本町大島(紀伊大島)にある水門(みなと)神社で11日、県の無形民俗文化財に指定されている例大祭「水門祭」が営まれた。コロナ禍のため、3年連続で勇壮な櫂伝馬競漕(かいてんまきょうそう)などは見送られたが、お的の儀と獅子舞の奉納が復活。規模縮小ながらも地区には久しぶりに祭りばやしが鳴り響き、関係者は「これを弾みに来年こそは」と意気込んでいた。

 水門祭は2月の第2土曜に営んでおり、豊漁や商売繁盛などを祈願。水門神社の主祭神である誉田別命(応神天皇)が大島近くの通夜島に立ち寄った際に島民が船で出迎えたことが由来とされる。

 例年は、地元の青年らが乗り込んだ2隻の伝馬船が大島港から串本港付近までの往復約3.8キロを勇壮にこぎ競う櫂伝馬競漕の他、色鮮やかな衣装に身を包んだ稚児らの行列などがあって多くの見物人でにぎわうが、コロナ禍のため、21、22年は神事のみを営んでいた。

 この日はまず、水門神社の本殿前で神事を営み、禰宜(ねぎ)の猪野久次さん(73)が祝詞を上げ、寺町忠区長(70)らが神前に玉串を供えるなどした。

 その後、境内に設けられた的に向かって矢を放つお的の儀があった。例年は地元の高校生が弓頭を務めるが、今年はコロナ禍のため、地元青年会「大同会」の福永晃太さん(26)と山本歩夢さん(23)が務め、伝統の所作を披露しながらそれぞれ6本ずつ矢を放った。福永さんは「稽古の成果を出せた」、山本さんも「以前からやりたかった弓頭を務めることができて良かった」と笑顔を見せた。

 続いて、青年らが獅子舞を奉納。「乱獅子」「てんぐの舞」などが披露され、境内に集まった人たちから大きな拍手が送られた。獅子舞は場所を変えながら3カ所で披露し、例大祭で獅子舞などを担う大同会の吉田龍会長(36)は「やっと奉納することができてうれしい。皆が集まってコミュニケーションを取ることができる祭りはすごく大事。来年の例大祭に向けて弾みになったと思う」と話した。

 寺町区長は「去年までは本当に静かな中で神事を執り行ったが、今年は境内がにぎやかになり、規模縮小ながらも祭りができて本当に感動した。盛り上げてくれた大同会や保存会の皆さんに感謝したい。来年は素晴らしい祭りができるよう皆で力を合わせて頑張りたい」と話していた。

お的の儀で矢を放つ青年(和歌山県串本町大島で)

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