「迷っても加担しないで」 特殊詐欺防止に人気バンド協力

和歌山県警が認知した特殊詐欺被害件数と被害額

 相次ぐ特殊詐欺の防止につなげようと、和歌山県警はボーカルが御坊市出身の人気ロックバンド「キュウソネコカミ」の協力で、若者に対し、特殊詐欺に加担しないよう訴えていく。「闇バイト」などで犯罪に手を染める若者が後を絶たないためで、啓発動画を撮影し、県警公式ユーチューブで公開する予定。

 同バンドはボーカルなどを担当するヤマサキセイヤさんを含む5人組。県警が15日、「特殊詐欺被害防止広報大使」に委嘱する。

 県警はこれまでも「筋肉は裏切らない」の決めぜりふで知られる大学教員谷本道哉さんや、県内を中心に活動するアイドルグループFun×Fam(ファンファン)の協力などで、高齢者らに被害防止を呼びかけてきた。

 今回、若者への発信力が強い同バンドに協力を依頼したのは「闇バイト」に手を出し、被害者から現金やキャッシュカードなどを受け取る「受け子」や、だまし取ったキャッシュカードなどで、現金を引き出す「出し子」などに手を染める若者が多いため。「特殊詐欺に手を染めるな、迷っても踏みとどまれ」といったメッセージを伝える狙いがある。実際、県警が2022年中に逮捕した「受け子」や「出し子」の多くが10、20代という。

 生活安全企画課の岡田謙吾課長は「詐欺グループにとって、受け子や出し子は逮捕される確率が最も高い役割で、数万円で使い捨てられる。そそのかされて人生が狂う子をゼロにしたい」と話す。

■認知数 2年前の3倍

 県警によると、22年の特殊詐欺認知件数は102件で、20年の32件の約3倍。被害額は約1億7300万円で、21年の2倍近くに増えた。

 県警は防犯対策として「一番は犯人からの電話に出ないこと。出ると危機感をあおる、次々と役者を登場させるなどされ、術中にはまりやすくなる」と説明。常時留守番電話設定にするほか、自動録音などの防犯機能を備えた電話も有効という。また、電話に出ても不審と感じたら切れるよう「料理中」「孫が来ている」などの口実をあらかじめ考えておくことも勧める。

 県警は特殊詐欺被害防止専用の「ちょっと確認電話」(0120.508.878=無料)を設けている。22年は4486件を受理し、248件の被害を阻止したという。

© 株式会社紀伊民報