島津製作所子会社の医療機器故障偽装、計43件に 報告書公表 

 昨年発覚した、島津製作所(京都市)子会社の島津メディカルシステムズ(大阪市、以下メディカル社)の技術者が、納入した医療機器に不正な操作を行い故障を偽装して修理費を騙し取っていた問題の調査報告書が公開された。発覚時に判明していた事例は5件だったが、調査報告書では計43件について不正の可能性があるとされた。島津製作所は指摘された件の関係先である医療機関に補償を行う方針を表明し、責任を取るとして社長を減給1ヵ月、常務(兼技術本部長)を解職する。

九州地域で広範囲に不正か

 同社が公開した第三者調査委員会による報告書では、さきに不正が認定された熊本県内の5件の事例では、X線撮影装置内の電源回路に市販のタイマーを取り付け、一定期間に作動させ電源が遮断されるような工作を行っていたという。タイマーが作動した機器では撮影に必要な部品だけが電源が通らず起動しない状態となり、外形的には故障したと誤認される状態となる。医療機関から連絡を受けると、不正を行った技術者が修理を装って訪れ、タイマーを外すことで現象を解消させ、部品交換代などと称して修理費を受け取っていた。

 調査委員会では先に発覚していた5件も含め、偽装の要因であるタイマーを回収する事例のため証拠が残らないとし、積極的な証拠を発見できないとしたものの、不正が行われた蓋然性の高い事例が5件以外にも38件も存在していたと報告した。発生箇所はすべて九州となっており、幹部を含め九州地域に勤務経験のある7名が実行者、あるいは不正を看過した者とされた。

 また報告書では、2017年に、不正を行う意図を示す関係者の会話の録音や、不正を確認できる写真をともなった内部通報があったことも初めて公表された。しかし報告を受けた幹部(執行役員企画管理本部長)は社長への報告を行っておらず、隠蔽したと言われても仕方のない対応だった。

 今後同社は再発防止を徹底するとしているが、不正を否定できない事例があったと報告されたことを受け、熊本、長崎各県の当局は、医薬品医療機器法(薬機法)に基づいた立ち入り検査を行う方針を決めた。鹿児島、宮崎各県も検査を検討する。

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