バレンタインデー「義理チョコ」文化が“消滅”寸前!? 「他人から自分へ」背景にある価値観の変化とは

2月14日を直前に控えた東京都内の百貨店では、特設コーナーも設けられ「バレンタイン」商戦が繰り広げられていた。女性客はもちろん男性客や家族連れが、思い思いにチョコレートを選ぶ姿が見られた。

女性から男性にチョコレートを贈り“愛を伝える日”として、日本では昭和30年ごろから長く親しまれているバレンタインデー。しかし今、バレンタインデーは転換期を迎えているようだ。

義理チョコは滅亡寸前

社会人であれば同僚・上司、学生であればクラスメイトなどに渡す「義理チョコ」は、日本独自の文化といえるだろう。しかしこの義理チョコという習慣が、いまや消滅の危機に瀕しているようだ。

「名古屋タカシマヤ」が毎年行っている「バレンタイン意識調査」によれば、今年、義理チョコを贈ると答えた人は全体の3%に留まっている。調査が開始された2017年には73%が義理チョコを贈ると回答していたといい、6年間で実にマイナス70%の急落ぶりだ。

ジェイアール名古屋タカシマヤのプレスリリース(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000184.000047031.html)より

義理チョコ文化「反対」約6割

また、「Job総研」が実施した「2023年 バレンタイン実態調査」からも義理チョコ文化の衰退が感じ取れる。調査に参加した448人のうち半数以上が義理チョコ文化に反対(※)の立場を示した。

(※)「とても反対」12.7%、「反対」21.0%、「やや反対」23.4%

反対の理由として挙げられたのは、「渡す側も渡される側もコストがかかるし心理的負担になるから」「コロナ禍で必要性が薄れ、さらに今年は物価高騰で負担が大きいのでなくなってほしい」など。コロナ禍で気にせざるを得ない衛生面、家計を圧迫する物価高騰も「義理チョコ」文化に影を落としているようだ。

この時期のチョコレート売り場は盛況だが…(2月上旬東京都内の百貨店/弁護士JP)

職場でのバレンタインは“パワハラ”の地雷?

一方、毎年バレンタインデーの時期が近づくと、SNSやインターネット掲示板で多く話題にあがるのが、職場でチョコレートを強要される、チョコレート代を徴収されるというもの。

労働事件を多く対応する三木悠希裕弁護士は、職場など上下関係のある場所においては、バレンタインデーが思わぬ「パワーハラスメント」の機会になってしまう可能性を指摘する。

「上司から部下に、バレンタインデーのチョコレートを強要したりする場合はもちろん、『楽しみにしてるね』などと暗に要求する行為でも、複数回繰り返しされるということであれば、パワーハラスメントに該当する可能性があります」

パワーハラスメントとは、『“優越的な関係”を背景に、業務に必要ない言動をして、労働者に身体的又は精神的な苦痛を与える行為』であり、性別は関係がない。そのため、女性の上司が男性の部下にチョコレートを贈り、ホワイトデーなどの“お返し”を要求する行為もパワーハラスメントに該当し得る。

バレンタインが職場内でのトラブルを生まないためにできることとして、三木弁護士は次のように語った。

「昨今の多様な価値観を考えれば、社内でバレンタインデーやホワイトデーのプレゼントに関する意識調査を行い、場合によっては社内ルールを定めることを検討してもよいかもしれません」(三木弁護士)

時代は自分への「ご褒美チョコ」に

厳しい時代を迎えた義理チョコに変わって、存在感を増しているのは自分への「ご褒美チョコ」だ。

「松屋銀座」が行った今年の「バレンタインデーに関するアンケート調査」の結果、自分用のチョコレートを購入すると回答した人は全体の6割に上った。さらに物価高騰もどこ吹く風か、自分用のチョコレートにかける平均予算は4415円と、本命用の予算(3748円)を上回った。

「チョコレートがもらえなかった」という人も、思い切って自分へのご褒美チョコレートを購入し、バレンタインの“最先端”を味わってみてはいかがだろうか。

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