「多くの戦争は自衛から始まる」森達也さんが語る日本人の同調圧力

独自の視点で戦争や宗教、メディアについて語る森さん(大津市におの浜4丁目・解放県民センター)

 オウム真理教を題材にしたドキュメンタリー「A」で知られる映画監督で作家の森達也さん(66)がこのほど、大津市におの浜4丁目の解放県民センターで講演した。地下鉄サリン事件やロシアによるウクライナ侵攻で目立つ一方的な報道や、日本人の同調圧力の強さを取り上げ、「多くの戦争は自衛から始まる」と警鐘を鳴らした。

 森さんは、オウム真理教による1995年の地下鉄サリン事件を機に、動機が分からない凶悪犯罪への不安や恐怖から異物を排斥する集団心理が強まり、犯罪の監視や厳罰化が進んでいると説明。

 一方、ノルウェーでは凶悪犯であっても刑務所で人間らしい生活が保障されているとし「ほとんどの犯罪は三つの不足から起きる。幼年期の愛情不足、成長期の教育不足、現在の貧困で、それを補うのが社会の役割であり、刑罰だ」とする同国の法務関係者の言葉を紹介した。再犯率が高い日本では、刑務所は受刑者を懲らしめるばかりで社会復帰が考えられていないと批判した。

 ウクライナ侵攻を巡る報道も問題視した。武力行使したロシアが悪いとした上で、プーチン大統領のクリスマス休戦の提案をウクライナは拒否したにもかかわらず、クリスマス期間中のロシアの攻撃を非難したとし、「蹴ったのはゼレンスキー大統領。メディアは常軌を逸している。別の見方を示すべきではないか」と述べた。

 森さんは政治とメディア、社会は三位一体だとし「日本人は不安と恐怖に弱く、集団化を起こしやすい。再び悲劇を起こさないよう、集団に生きながら個を保つことが大事だ」と訴えた。質疑応答で「個」を強くする方法を問われ、「社会や組織ではなく『私』を主語に話し、考えること」と答えた。

 講演会は「建国記念の日」に合わせ、県内の労働組合や宗教関係者でつくる実行委員会が「第18回平和・靖国・憲法・教育・人権そして貧困を考える これでいいのか日本!2023滋賀集会」として開いた。約120人が来場した。

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