コロナ検査場「安全のはずが…」 対象外続々、過酷な実態 スタッフ 使命感で乗り切る

無料検査を案内する県のホームページ。発熱などの症状がある人や濃厚接触者は検査が受けられないことが明記されて いるが、守らない人もいるという

 新型コロナウイルスの感染者が国内で初めて確認されて約3年。感染対策をしながら社会経済活動を進める「ウィズコロナ」への政策転換が進む中、重要な役割を果たしているのがPCR検査などを行う検査場だ。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)にスタッフのAさんから「現状を知ってもらえたら」と連絡があった。話を聞くと、医療機関などと同様の過酷な実態があった。

 県は昨年1月、無料検査を開始。同時期、県内各地に検査場が増えた。新型コロナの影響で仕事を辞めていたAさん。「人の役に立ちそう」と検査場のアルバイトが目に留まった。感染リスクが気になったが、有症状の患者を受け付ける診療・検査医療機関とは違い、「無症状」「濃厚接触者以外」などの条件を満たした人が検査対象と知って働くことにした。

 「安全のはずが…」。実態は違った。明らかに体調が悪そうな人や、同居の家族が感染したという濃厚接触者と思われる人も次々に来場。県や検査場のホームページには条件が明記されていたが、読んでいない人が多かった。

 「対象ではないので検査はできません」と伝えると応じてくれる人もいた。だが「(さっき言った)家族が感染しているというのはうそ」「症状があるから来たんだ」と開き直ったような態度を取る人や、「どうでもいいから早くやれ」「お前らの給料は税金だろう」と高圧的な態度を取る人もいた。肉体的にも精神的にも過酷な仕事。同僚の多くが短期で辞めていったが、使命感で続けている。

 中でも昨夏の流行第7波は「地獄だった」。感染者数は全国で爆発的に増え、県内でもピーク時には1日4千人台になった。Aさんの検査場にも多くの人が押し寄せた。場内の消毒を徹底し、スタッフはマスクを2重にしてフェースシールドも着用。手袋は1日に何度も替えた。真夏ということもあり、「暑さと息苦しさで立っているだけでも大変だった」。

 第7波の際は、検査数に占める陽性者の割合を示す「陽性率」が十数%に上ることもあった。症状がある人や濃厚接触者も検査に来ていることを裏付けるような数字だった。スタッフが感染するケースも増え、Aさんもその一人になった。働き始めて数カ月、感染予防に細心の注意を払い、出勤のたび検査を受けてきたが、防ぎきれなかった。

 第8波で感染者が増加した昨年12月中旬以降、再び多くの人が訪れたが、1月下旬ごろから感染者数が減り、比例するように来場者も減った。今、検査に来る人の多くは陰性の検査結果を「全国旅行支援のために利用しているようだ」と話す。月に数回利用する人もいて「お金と時間がある人たちのために税金が使われていることに疑問を感じる」。

 ただ、県が示している無料で検査を受けられる人の条件は▽発熱などの症状がない▽県内在住▽感染に不安がある-など。つまり、不安がある」と言われれば無料検査として受け付けることになる。

 新型コロナの感染症法上の位置付けは5月8日から季節性インフルエンザと同じ「5類」になる。医療費について感染者は一定の自己負担を求められ、公費支援は段階的に縮小される方向で検討が進んでいる。

 検査場はどうなるのか。5類移行後も果たせる役割があるかAさんに聞くと、「(本当に検査を必要とする)症状がある人や感染者と接触した人が医療機関を受診する前に無料で検査を受けられるような仕組みがあれば、医療逼迫(ひっぱく)の軽減につながるのではないか」と語った。

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