よゐこ有野が嘆く【宝くじ】が当たらない理由「そんなに持ってかれてたんや」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年2月は金融教育家の塚本俊太郎先生に、投資の基礎知識について、タレントで元「アイドリング!!!」14号の酒井瞳さんと一緒に学びます。

今回は、「投資」と「投機」の違いについて伺いました。金融商品を選ぶ時に知っておきたい基準とは、どんなものなのでしょうか?


有野晋哉(以下、有野): ふわぁ〜、アカン、目がしょぼしょぼしてる疲れ目や。

酒井瞳(以下、酒井):有野さん、なんだか今日はいつにも増して眠そうですね。

有野:“いつにも”って事はいつも眠そうみたいに言うのん止めて。ほら、先生に趣味が役に立ってるって言われたやん? だから、プライベートでもしっかりゲームに励んでたら、気づいたら朝になっててん。

酒井:もう、先生を口実にしてますけど、ただゲームがやりたいだけじゃないですか(笑) 本当にゲームが好きですねぇ。

有野:そう、ゲームが好きやねん。お金のこと勉強して、老後の不安がなくなったら、仕事を辞めてず~っとゲームしてたいわ。実況系YouTuberになりたいねん。

酒井:なれると良いですねぇ。

有野:もうやってるわ! もうすぐ20年やぞ、なんで知らんねん!

酒井:知ってますよ、課長。じゃあ、そのためにも真面目に授業を受けましょうね! あ、先生がいらっしゃいましたよ。

塚本俊太郎(以下、塚本):みなさん、今日もよろしくお願いします。あれ、有野さん、なんだかお疲れですね。

有野:そうなんですよ、先生。前回の授業の経済がグローバルと繋がってインフレが起こる話の復習をして、寝るのが遅くなってしまいまして……。

酒井:うわ~、朝までゲームしてた、って言ってたじゃないですか!

有野:酒井君、授業が始まりますよ。静かに!

「投資」と「投機」は大違い!

塚本:さて、前回は日本経済がデフレからインフレに進もうとしていて、そうなるとお金の価値がどんどん下がってしまうので、投資をしていきましょう、というお話をしました。

酒井:それに、稼ぐ力を上げるための自分への投資、「自己投資」も投資の一種ということでしたね。

塚本:そうですね。それでは今回は、「投資と投機」についてお話したいと思います。

有野:北京からもう1年経ったんやもんな、経済がグローバルと繋がってるとは言え、先生、冬のオリンピックと投資は何か関係あるんですか?

酒井:それは「冬季オリンピック」じゃないですか、先生が言ってるのは「投資と投機」です。真面目にって言ってるじゃないですか、起きてください!

有野:寝言で言うてへんわ! でも、投資はわかるけど、投機って聞いたことないなぁ。

塚本:投資とは、資金を投じることで会社の成長を手助けし、会社が成長したら株価の上昇や配当金によって還元してもらうこと。つまり、会社の経済活動や成長のために資金を投じる行為が「投資」です。

酒井:会社に成長してもらって、その利益を分けてもらうイメージなんですね。

有野:投資家、企業、経済それぞれにメリットある「三方よし」ですもんね、先生。

塚本:おっしゃる通り。ただ、会社が投資で調達した資金をもとに商品やサービスの開発に取り掛かっても、すぐに利益が出るわけではないんです。まずは研究や開発から始まり、生産するための工場を作らないといけませんよね。いろいろなところに営業をかける必要だってあります。

有野:確かに……運転資金が集まったぞ、って思いつきでなんか作られても売れへんくて、倒産されても嫌やもんな。ゲームで言うたら、お金が集まったからって、カジノに入り浸られてもアカンし、そのお金で装備を整えたり、レベル上げたり、イベントをこなしていったり、ボスをやっつけに行く為にはコツコツするしかないもんな。

酒井:私、有野さんほどゲームやらないんですけど……とにかく長い時間がかかるってことですね。

有野:そうやで、朝までやってもクリアなんて出来ひんからな!

酒井:下手なんですか?

有野:上手くはないね。投資と一緒、コツコツタイプやねん。

公営ギャンブルの期待値はマイナス

塚本:長い時間をかけて、資金を投じた会社に成長してもらうことで、利益を得るのが「投資」なんです。一方で「投機」は、安く買って高く売ることだけが目的。会社が成長しようがしまいが関係ありません。お2人は、「投資はギャンブルだ」などと聞いたことはありませんか?

有野:聞いたことあります! だったら、パチンコやら競馬競輪とか行ったらいいのに、って思うし、ぼんやりとやけど、汗流して働いてないって印象です。だから何となく怖いイメージがあんねんなぁ。

酒井:投資=ギャンブルって聞くと、やっぱりお金がなくなっちゃうのかなって、怖いですよね。

塚本:お2人が抱えているイメージは、「投資」ではなく「投機」なんです。以前かなり流行った「デイトレード」なんかも投機ですね。

有野:デイトレードは知ってます! 仕事部屋ですって所でパソコンにモニターが何枚も繋がってて、グラフが並んでるモニター見ながら、「これ良いですね」とか言うて。カチカチってやって、「はい、今ので20万円儲けました」とか言う人! 「今日はこれくらいで」って。ドバイとかに住んでる日本人が言うてんねんで、もう!

酒井:なんでドバイなんですか? 怒ってるし。

有野:なんかお金持ってるとあっち行くイメージあるやん(笑)

塚本:デイトレードは、1日の間で買ったり売ったりを繰り返して利益を取る手法ですが、こうした「投機」は会社の経済活動に使われることはありません。「投機」では、勝つ人がいれば同じ数だけ負ける人がいるので、プラスマイナスでいうとゼロになります。

塚本:少し余談ですが、有野さんは競馬をやられたことはありますか?

有野:競馬場に営業で行ったことはありますけど、馬券を買ったりは仕事でしかしたことないですね。競馬新聞見ても見方が分からへんです。でも、今はデイトレードの話でしょ先生、なんで競馬の話するんですか?

塚本:競馬では、馬券を買って集まったお金のうち、10%が国庫、つまり国のお財布に入り、15%がJRAなどに運営費として差し引かれます。差し引かれて残ったお金を、馬券を的中させた人に還元するんです。その差し引かれる割合を「控除率」というのですが、投じたお金の25%が最初から差し引かれているため、買った人たちに全額が返ってくることはないんです。

酒井:え~っ、最初から引かれているんですか!? 全然知らなかったです……。

有野:「ギャンブルは胴元が勝つ」って聞いたことあるけど、そういう意味だったんや。1,000円の馬券買っても250円引かれてるのか……凄い取られてるな。でも運営費がいるのは分かるけど、国庫で10%は凄いですね。

塚本:宝くじも同じで、控除率は55%程度です。当選金は、残りの45%から支払われます。こうなると、投資を行なった際にリターンを得られる確率を表す「期待値」は、競馬や宝くじなどの公営ギャンブルではマイナスになります。

有野:えぇ〜、半分以上も取ってるんや。宝くじのお金って確か、公園の遊具とかを作るのに使われてるんですよね? それなのに、あのガッコンガッコンって動くやつしか置かないんですか!?

酒井:なんですか、ガッコンガッコンって(笑)

有野:なんか胴長の3人乗りの犬みたいなお尻に宝くじって書いてあるねん。名前はロッキンパッピーて言うねんけど、気になって調べてんけど(笑) でも、ガッコンガッコンに……なんかアレ、子どもは絶対に乗りたがるけど、55%とってるんやったら、もうちょっといい遊具置いて欲しいなぁ。

※画像はイメージです。

塚本:宝くじによる収益の用途はさまざまありますが、公園の整備もその一環です。いずれにしても、最初から半分以上が差し引かれるわけですから、購入する側の期待値はマイナスですね。期待値でいうと、投資は会社の成長という要素が加わるのでプラス、投機はゼロ、ギャンブルはマイナスになります。

有野:そっかぁ、ギャンブルと宝くじは勝ったところで、胴元というか経営してる人が結構持って行ってて。娯楽や趣味でやるのはいいけど、長い目で見ると負ける可能性が高いってことかぁ。投機は会社の成長には何も貢献してない。自分の為だけか。なんかドバイに住まんでもええかなって思うわ。

酒井:なんの話ですか?

有野:手っ取り早く儲けても、胴元の控除率はどこでもあるって言う事ですかね、先生。

塚本:それを理解していないと、短期的にはどれもお金を増やせる可能性がありますから、「じゃあギャンブルでいいじゃん」と考える人が出てくるわけですね。

金融商品を選ぶ時に知っておきたい「3つの基準」

有野:なるほどなぁ。宝くじって「今年はすごい売れてます!」って、行列がニュースになっても「だから、1等前後賞の当選額がアップします」とか、「本数増えます」とかないもんなぁ。今日の授業で気づいてしまったわ、宝くじに夢見てる人のドリームなジャンボは、半分以下にされてるドリームなジャンボだって。投資もギャンブルだと思ってたから、それなら宝くじとかのほうがさっとできるから、そっちのほうがええわと考えてたもん。

酒井:そうですよね、それに投資するには、いろいろ自分で調べないといけないから大変そうですしね。

有野:そうやねん、だったら手っ取り早く、ドリームなジャンボを、って考えるやん。でも、そのドリームなジャンボは胴元が55%も取ってるという、ドリームな半分ジャンボやねんな。

酒井:もう、ドリームなジャンボって言いたいだけでしょ!

有野:正解。でも投資は知らなさ過ぎて、何から勉強すればいいのかもわからへんもんな……先生、どうしたらいいですか?

塚本:投資を始める前に考えていただきたいのは、「安全性」と「収益性」、そして「流動性」の3つの基準です。

有野:安全性は投資したお金が減らないか、収益性は儲けを期待したいけど元本割れのリスクもありまっせて事ですかね? 芸人のライブだと、安全性は誰にでもちゃんとお見せできるライブですか、出演者は印象悪くされたり損しないですか、ってところかな。収益性はお客さん入って、チケットは完売しますよね、ネット配信もしますか、会社は赤字背負いたくないですよ〜、かな。2つはなんとなくわかりますけど、流動性ってなんですか?

塚本:ここでいう流動性とは、「現金化のしやすさ」です。たとえば、不動産を持っていても、売って現金にするには時間がかかりますよね。一方で、銀行預金だったら、近くのATMやコンビニですぐに現金を引き出せます。収益性は、「どのくらいの利益が期待できるか」、安全性は「元本が減らないかどうか」を表します。

有野:なるほど、芸人のライブで言うと、流動性は転売ヤーがどれだけでるかって事ね、いや、転売アカンがな!

酒井:何ひとりではしゃいでるんですか。先生、銀行預金はほとんど金利がつかないけど、安全性は高いし、すぐに引き出せるのは強みで、流動性が高いですね。でも、収益性が低いか。

塚本:大事なのは、この3つの基準が、すべて二重丸な金融商品はないということです。銘柄にもよりますが、株式投資や投資信託は、基本的には収益性と流動性は高い金融商品ですが、元本を割り込む可能性はあるので、預金や債券と比べると、安全性の面では劣ります。この3つの基準のバランスを考えながら、自分の目的に応じてさまざまな金融商品を選んでいくことが、「資産運用」なんです。

酒井:そっか、全部が二重丸なんて上手い話はないんですね。

有野:先生、ここまでの話を一度整理したいので、続きは次回にしてくれませんか?

酒井:そんなこと言って、実はゲームをやりたいだけじゃないんですか?(笑)

有野:ちゃうねん、株の話が出てきたから、ファミコンの「松本亨の株式必勝学(※)」やって、しっかり予習しとこうと思ってん。
※編注:1988年発売の株式投資シミュレーションゲーム

酒井:ほらぁ、やっぱりゲームじゃないですか(笑)

塚本:そんなゲームがありましたね(笑) では、それでは今回はここまでにしましょう。

有野:よっしゃ、じゃあさっそく、どこに売ってるか帰って検索します!

酒井:持ってないんですか、有野課長!

有野:当たり前やん、課長程度やからな! ちゅうか、ここでは委員長て呼んで。

次回(2月21日配信予定)は「金融商品を選ぶ3つの基準」について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

酒井瞳
1989年5月3日生まれ。宮崎県出身。2008年4月に女性アイドルグループ「アイドリング!!!」に14号として加入し、2015年10月に卒業。その後は地元・宮崎県に関わる活動や、テレビやドラマ、YouTubeなど活動の幅を広げている。2022年2月よりジムでパーソナルトレーナーを開始。また、同年に故郷の宮崎県延岡観光大使に就任。 アイドル専用ジム「iウェルネス」ではトレーナーとしても活動している。

塚本俊太郎
金融教育家、日本CFA協会執行理事。1994年、慶應義塾大学総合政策学部卒、97年に米国シラキュース大学大学院国際関係論修士。同年、UBS信託銀行に入行し、債券運用部ファンドマネジャーを務める。02年以降、メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズ(現ブラックロック・ジャパン)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど外資系運用会社にてストラテジストや投資戦略部長などを歴任。20年、金融庁に入庁し、金融教育担当として高校・大学・社会人向けに授業を行う。高校家庭科での金融経済教育指導教材や、小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在はフリーランスの金融教育家として金融リテラシーや資産形成について発信・寄稿・講演を行う。また、金融教育プログラム構築に関するコンサルティングも実施している。Eテレ「趣味どきっ!」に3月1日(水)21:30から「金育」をテーマに4週に渡り出演。著書『今日から楽しむ“金育” 』(NHK出版)が2月22日(水)発売。

ライター:新井奈央 / 写真:文化工房

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