アストンマーティンF1『AMR23』の特徴はサイドポンツーン上面のくぼみ。95%を再設計し「ゲームチェンジ」に挑む

 マクラーレンF1がロンドンの南西に隣接するサリー州のウォーキングで17時から新車発表を開始した2時間後、ロンドンからクルマで1時間ほど北にあるノーザンプトン州にあるシルバーストン・サーキットに隣接するファクトリーで19時から新車発表会を行ったのがアストンマーティンF1だ。

 ただし、そのファクトリーはジョーダン・グランプリから使用してきたものではなく、2021年に着工し、2023年の5月に完成する真新しいファクトリーの一部を使用して開催され、新車の発表だけでなく、新ファクトリーの先行お披露目会も兼ねていた。つまり、2023年の新車『AMR23』は、従来のファクトリーで開発・製造された最後のF1マシンとなった。

 そのAMR23の開発を指揮したのは、2022年にレッドブルから引き抜いた空力エンジニアのダン・ファローズだ。マシンの開発は約1年前から開始されるため、ファローズにとって、このAMR23はアストンマーティンに移籍してから初めての作品となる。

 多くのチームが発表イベントにカラーリングだけを変更した旧型マシンを持ち込むなか、アストンマーティンは2022年の最終戦アブダビGPで使用したマシンとも異なる、おそらく2023年型マシンそのものを発表会の会場に持ち込んだ今年最初のチームとなった。その新車を前に、製作を指揮したファローズは次のように語った。

「この新車は昨年のマシンから95%変更されている。フロントウイングとノーズは一新され、サイドポッドの傾斜はよりアグレッシブなデザインとなった」

 ファローズが言うように、昨年のマシンではノーズの先端はフロントウイングの1枚目となるメインフラップではなく、2枚目のフラップから伸びていたが、AMR23ではメインフラップとノーズが接続。ノーズ先端の形状もやや丸みを帯びている。

アストンマーティンF1の2023年型マシン『AMR23』のフロント

 またファローズは「エンジンカバーはより大きなロールフープインレットを含んだ昨年とは異なる仕様となっている」と新車を解説していた。それが何なを示すのかは、発表会のイベント中はわからなかったが、発表会がスタートした直後にメディアに配信された新車の写真を見てわかった。サイドポンツーンの上面が昨年のフェラーリ以上にくぼんでいるのだ。これは明らかにサイドポンツーンの下面だけでなく、上面の空気もリヤへ積極的に流す意図が感じられる。

アストンマーティンF1の2023年型マシン『AMR23』のサイドポンツーン上部に施されたくぼみ

 チームオーナーのローレンス・ストロールは、このイベントのスピーチで何度も使用した言葉がある。それは「ゲームチェンジ」。発表会が行われた新しいファクトリーの総工費は約2億ポンド(約321億円)だったことを考えれば、ストロールの野望が決して口先だけでないことがわかる。その言葉を信じてファローズが移籍し、2023年シーズンから元王者のフェルナンド・アロンソも加わった。

 果たして、ゲームチェンジはいつ起きるのか。もしかしたら、もう起きているのかもしれない。そんなことを思わせてくれた発表会だった。

アストンマーティンF1の2023年型マシン『AMR23』。サイドポンツーン上部の黒色部分にくぼみがある
アストンマーティンF1の2023年型マシン『AMR23』。サイドポンツーン上部の黒色部分にくぼみがある
アストンマーティンF1の2023年型マシン『AMR23』をお披露目するフェルナンド・アロンソとランス・ストロール
アストンマーティンF1『AMR23』の発表会に登壇したランス・ストロール/マイク・クラック代表/フェルナンド・アロンソ

© 株式会社三栄