マクラーレン、720S GT3の改良型“エボ”モデルを発表。2023年からカスタマー供給開始

 マクラーレン・オートモーティブは2023年2月15日、約4年前にデビューした『マクラーレン720S GT3』に、今年からホモロゲーションを取得するためのエボルーション・アップデートパッケージを導入した『720S GT3エボ』を発表した。

 マクラーレンの“エボ”GT3カーは、2019年にグローバル・カスタマーデビューを果たしたイギリスブランドのフラッグシップGTレーシングカーが、初めて受けたアップグレードの後に誕生したニューモデルだ。

 現在マクラーレン720S GT3を走らせているチームは、既存のマシンを最新仕様にアップデートすることができる。もちろん、改良されたエボバージョンは新車として購入することも可能だ。

 マクラーレンによると720S GT3エボは、フロントバンパーやスプリッターなどに「いくつかの主要なボディワークの改良」が施され、ダウンフォースを増加させてクルマのバランスを前方にシフトするように設計されているという。また、フロントバンパーやスプリッターには、クイックリリース式の留め具が採用されている。

 さらに、冷却性能を向上させるためフロントリッドにガーニーフラップを追加している点や、ダウンフォースレベルを高める狙いでリヤウイングのガーニーが高く設定されている点などが外観上の変化として見てとれる。

エアロダイナミクスが改良されたマクラーレン720S GT3エボのフロント部

 サスペンションは、オーリンズ製の4ウェイ・アジャスタブル・ダンパーと、フロントとリヤのアッパーウィッシュボーンによってアップグレードされた。

 アップライトも新しくなり、フロントのブレーキキャリパーをボルトで固定することで、従来よりも素早く交換できるように設計されている。マクラーレンは、アップライトをホイール間の接触状況において「より強固に」になるように設計し、タイヤマネジメントとセットアップの面で柔軟に対応できるようにした、としている。

 同ブランドによると、既存のマクラーレン720S GT3をエボ仕様にアップグレードする場合、オプションとして新しいアップライト・アッセンブリを装着することが可能だという。この他、改良モデルでは夜間走行時の視認性を向上させるため、ヘッドライトも調整されている。

「マクラーレン720S GT3は、4年前の驚異的なデビュー以来、GT3レースにおいて素晴らしい成功を収め、(2018年の)ガルフ12時間レースでは数時間にわたってレースをリードした」と語るのは、マクラーレン・オートモーティブ・ディレクターのイアン・モーガン。

「それ以来、多くのレースとチャンピオンシップで勝利を記録し、最近では2022年のAsLMSアジアン・ル・マン・シリーズ、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権(のミシュラン・エンデュランスカップ)、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパでタイトルを獲得した。また、2023年はデイトナ24時間レースの表彰台で新しいシーズンを迎えている」

「その間、我々はカスタマーレーシングチームと密接な関係を保ち、彼らの提案の多くを新しいエボパッケージに取り入れ、パフォーマンスの一貫性と整備性を向上させた。これにより、マクラーレン720Sは今後何年にもわたってGT3レースでペースを維持し続けることになるだろう」

 マクラーレンは2023年シーズンに、新たにホモロゲーションを取得したふたつのGTカーを投入することになった。1台は今回発表された720S GT3エボ、もう1台は先月デイトナで行われたIMSAミシュラン・パイロット・チャレンジでレースデビューを果たしたアルトゥーラGT4だ。

エボパッケージは新車で購入するほか、既存の720S GT3からのアップデートも可能になっている。
従来よりも背の高いガーニーフラップが装着された、マクラーレン720S GT3エボのリヤウイング
ブランズハッチを走行するマクラーレン720S GT3エボ
デビュー戦となったIMSAミシュラン・パイロット・チャレンジで総合6位となったマクラーレン・アルトゥーラGT4

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