カタールW杯後の2023年Jリーグ!絶対に見逃せない「要チェック」な7人

カタールワールドカップの熱狂から2か月。いよいよ、今シーズンの明治安田生命Jリーグが開幕する。

J1は、今季も横浜F・マリノスと川崎フロンターレが優勝戦線をリードするのか。昨季のトレンドだった“強度”が引き続きホットなワードとなるか。

例年以上の混戦が予想されるJ2は、清水エスパルスが独走するのか。戸田和幸(SC相模原)と中山雅史(アスルクラロ沼津)の両監督はJ3でどのような采配を見せるのか。

W杯で高まったサッカー熱がJリーグにどれだけ作用するかという点にも注目が集まるなか、2023シーズンでチェックしたい7名をピックアップ。

“新たなJリーグの顔”から“マルチロール界の新星”まで取り上げたので、最後までご一読頂けると幸いだ。

松木 玖生

所属クラブ:FC東京

選出理由:「スター性抜群の現代型MFが“Jリーグの顔”へ」

青森山田高時代から“超高校級”として注目を集め、大きな期待とともにFC東京へ入団した松木玖生。ルーキーイヤーだった昨シーズンは川崎フロンターレとの開幕戦でスタメン起用されJリーグデビューを飾る。その後も説得力のある働きぶりでアルベル監督の信頼をつかみ、高卒1年目からリーグ戦31試合に出場した。

総合力の高い現代型ボランチで、推進力あふれるプレーと圧巻のフィジカルで攻守に貢献。自身の特徴に「運動量」「守備力」「左足キック」(※クラブ公式サイトから引用)を挙げる通り、90分を通してピッチを駆ける豊富なスタミナとパンチ力のある強烈な左足が光る。

加えて、いかなる時にもブレない強靭なメンタルにも定評がある。年上の選手とも遠慮なくコミュニケーションを取る姿は、堂々とした振る舞いも相まってスターの風格を漂わせる。度胸の強さは今季から町田ゼルビアを率いる恩師の黒田剛監督も舌を巻くほどだ。

世代別代表でも主軸を担い、来年開催のパリ五輪での活躍が大いに期待される。とはいえ、得点力に磨きをかけ、更なる成長を実現できれば、森保一監督が指揮を執るA代表からも遠からず声がかかるだろう。

SNSや動画共有サイトで多くのサッカーファンから熱視線を浴びるスター性抜群の大器が、プロ2年目にして“Jリーグの顔”となってもおかしくはない。

鈴木 優磨

所属クラブ:鹿島アントラーズ

選出理由:「何かと話題を呼ぶエースがタイトル獲得に導く」

昨季の鹿島アントラーズは激動の1年を過ごした。7月に得点源の上田綺世がベルギーへ旅立ち、それまで好調だったチームは得点力不足に直面。翌8月にレネ・ヴァイラー監督の退任と岩政大樹コーチの新監督就任がアナウンスされ、最終的に4位でリーグ戦を終えた。

そのなかで鈴木優磨は、一貫して頼れる存在であり続けた。上田とコンビを組んだ前半戦は万能性を存分に発揮し、前線を幅広く動いてチャンスメイク。上田移籍後は組み立ての局面に参加しつつ、よりゴール前で仕事ができるよう試行錯誤を繰り返した。

また、強烈な個性も引き続き話題を呼ぶだろう。相手DFとの激しい駆け引きでヒール役が定着しているが、実兄の翔大がいわきFC時代にQolyのインタビューで「やはり世間だと『ヤンチャ』とか『悪童』といった嫌われる今のイメージがあって、批判も多いじゃないですか、ああいう性格だと。でもピッチを一歩出れば本当にかわいい弟ですし、見た目通りではないんですよね」と明かしており、ピッチを去る際の一礼など礼節を重んじる一面もある。

器用さゆえに様々なタスクを担うが、ここはゴール量産を求めたい。得点後の岩政監督との熱い抱擁を披露する回数が多くなれば、チームの勝利も増えるはず。エースがゴールを積み重ねた先にタイトル獲得が待っているだろう。

髙橋 利樹

所属クラブ:浦和レッズ

選出理由:「昨季大ブレイクの本格派CFはJ1でも結果を残せるか」

J3から昇格1年目のシーズンで大躍進し、J1昇格まであと一歩に迫ったロアッソ熊本。リズミカルなパスワークとアグレッシブなプレスを両立させた“大木スタイル”のなか、河原創(現・サガン鳥栖)、杉山直宏(現・ガンバ大阪)とともにブレイクしたのが、本格派センターフォワードの髙橋利樹だ。

3トップの中央で起用され、182cmの長身を生かしたポストプレーで基準点となりつつ、ポゼッションの仕上げ役として機能。チームトップの14ゴールを挙げる活躍を見せ、シーズン終了後に浦和レッズへステップアップした。

昨季奪った14ゴールを振り返ると、もっとも多いのが利き足である右足でのゴール(計8得点/PK含む)で、次点がヘディングでのゴール(計5得点)。味方のクロスに合わせて決める形が半数を占め、エリア内での勝負強さが際立った。

また、前線からの精力的なプレスも武器だ。今季から指揮を執るマチェイ・スコルジャ監督は就任会見で「浦和レッズで私が変えたいと思っているポイントの一つに、ハイプレスを増やしたい、というところがあります。ボールを失ったらできるだけ早く取り返す、できれば相手のペナルティーエリアの近くで取り返す、ということをしたいと思います」(※クラブ公式サイトから引用)と語っており、戦術との相性はいいだろう。

前線のし烈なポジション争いを埼玉県出身の点取り屋が制する可能性は十分にある。

川﨑 颯太

所属クラブ:京都サンガF.C.

選出理由:「新キャプテンに就任した攻守両用ボランチの更なる飛躍に期待」

歴史の新たな扉が開かれた。京都サンガは1月7日、川﨑颯太が新たに主将に就任することを発表。21歳での就任はクラブ最年少で、将来有望なボランチが重責を担うことになった。

山梨県出身の川﨑は、U-12およびU-15時代をヴァンフォーレ甲府の下部組織で過ごした。U-18から京都でプレーし、2020シーズンにトップチームに昇格。プロ1年目からリーグ戦16試合に出場すると、2年目からは主力に定着し、3年目の昨季は28試合に出場した。

4-3-3が採用されている京都では、アンカーを主戦場とする。ストロングポイントはボール奪取力で、鋭い読みを生かしたタックルでボールをかすめ取り、アタッカーの侵入を防ぐ。広範囲をカバーする豊富な運動量も売りで、前線への攻撃参加も魅力的だ。

攻守に貢献できる万能性、そして意外性のある攻め上がりを踏まえると、タイプ的には川辺駿(グラスホッパー)に近いだろうか。

パリ五輪を目指すU-22代表での活躍も期待されるが、ボランチはライバルが多い。前述した松木玖生をはじめ、藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス)、松岡大起(清水エスパルス)、田中聡(コルトライク)、山本理仁(ガンバ大阪)ら逸材が揃う。

持ち味のボール奪取力をいかんなく発揮し、大岩剛監督にアピールできるか。クラブでの活躍が更なる飛躍のカギを握るだろう。

大南 拓磨

所属クラブ:川崎フロンターレ

選出理由:「対人戦の強さとスピードが売りのDFが満を持して川崎へ」

昨年12月、川崎フロンターレに大きな動きがあった。キャプテンでありディフェンスリーダーの谷口彰悟がカタールのアル・ラーヤンへ移籍したのだ。安定感のあるプレーと正確なパスでビルドアップの起点だったCBの退団は、当然ながら特大の影響を及ぼす。

谷口の退団を見越してだろうか、クラブは即戦力DFを獲得済みだった。柏レイソルから完全移籍で迎え入れたのが、対人戦の強さと抜群のスピードに定評のある大南拓磨だ。

キャリアをスタートさせたジュビロ磐田で若手有望株として注目され、2020シーズンからは柏に活躍の場を移す。3バックの右ストッパーまたは右ウィングバックを主戦場とし、3シーズンでリーグ戦77試合に出場。経験値を高め、満を持して川崎に加入した。

川崎は最終ラインからボールをつなぎ、流麗なパスワークと巧みなコンビネーションで崩していくスタイルで、近年のJリーグを席巻してきた。大南としては、独特のスタイルに適応することが必須となる。

とはいえ、鋭い縦パスはこれまでも見せてきており、大きな不安はないか。“慣れ”という側面から考えると、最初はCBではなく右SBで起用される可能性もあるだろう。

今季は可変システムや3バックの導入が予想されており、仮に3バックのストッパーという慣れ親しんだ場所でのプレーとなれば、背番号3にとって追い風となるはず。新天地で存在感を示せれば、昨年7月のE-1選手権以来となる日本代表入りも現実味を帯びる。

山原 怜音

所属クラブ:清水エスパルス

選出理由:「攻撃センスに秀でるSBがJ2から日本代表入りを狙う」

1年でのJ1復帰を目指す清水エスパルスは、強力な陣容で今季のJ2を戦う。権田修一、吉田豊、鈴木義宜、松岡大起、乾貴士、チアゴ・サンタナ、北川航也ら各ポジションに実力者が名を連ねるなか、攻撃的サイドバックの山原怜音にも期待が集まる。

主に左サイドでプレーする山原の武器は、スピードあふれるドリブルと左右両足から放たれる正確なクロスだ。ドリブルは一気の加速でギアチェンジしてマーカーを置き去りにする形を得意とし、クロスは浮き球とグラウンダーを使い分けピンポイントで味方に合わせる。

加えて無回転の強烈ミドルやカットインからのシュートも兼ね備え、サイドチェンジや前の味方につけるパスで攻撃のアクセントにもなる。

なお、清水は開幕前のキャンプで従来の4バックのほかに3バックをテストしている。サイドバックよりも高い位置を取れるウィングバックでのプレーは、攻撃センスに秀でる山原の強みを更に引き出すだろう。

J2で圧倒的なパフォーマンスを披露し、日本代表入りへ――。という青写真を描きたいところだが、森保一監督はスケジュール面も考慮し、J2からの招集に否定的な姿勢だと一部メディアで報じられている。

長きにわたり代表をけん引してきた長友佑都の後継者として、その姿をサムライブルーで見たいところだが、果たして。

佐野 航大

所属クラブ:ファジアーノ岡山

選出理由:「中盤全域で機能するマルチロール界のニュースター」

クラブ史上最高のリーグ戦3位でフィニッシュするなど、充実のシーズンを過ごした昨季のファジアーノ岡山。フィジカルとハードワークを前面に押し出したソリッドなスタイルを構築した木山隆之監督が重用したのが、高卒ルーキーの佐野航大だった。

鳥取県の名門・米子北高から加入した佐野は、途中交代のカードとして序盤戦から起用され、シーズンが進むにつれて出場時間を増加させた。

インサイドハーフとボランチをメインとしつつ、両ウィングやトップ下でプレーし、指揮官が3バックを導入した後は左ウィングバックでも躍動。両サイドバックにも対応するなど、あらゆる役割をまっとうしてみせた。

まだ19歳ながら、まるでベテラン並みの戦術眼と対応力の高さには恐れ入る。

監督目線で考えると、複数ポジションに対応する選手がひとりいるだけで戦術の幅が広がるだろうし、選手起用にも柔軟性が出るだろう。実際、後半途中に左ウィングで投入されながら、その後の選手交代によってボランチへ移行した試合もあった。

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今季も引き続き様々なポジションで起用されるのか、それとも最適なポジションで固定して起用されるのか。2シーズン連続の上位進出を狙う岡山の戦いぶりとあわせて、ポリバレントな背番号22の起用法を注視するのも一興だろう。

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