指導者不在だった下関国際高校野球部が甲子園決勝へ! 坂原監督とナインの奮闘を追った1冊

書籍「貫道 甲子園優勝を目指す下関国際高校野球部・坂原秀尚監督とナインの奮闘」が、3月8日に発行される。

東北勢初、仙台育英学園高等学校の全国優勝で幕を閉じた第104回全国高校野球選手権(2022年開催)。その決勝の対戦相手は、優勝候補・大阪桐蔭を破り、勢いに乗る下関国際高校。本書は、不祥事で誰もなり手のいない同校野球部の監督に就任し、短期間で全国の強豪へと導いた、坂原秀尚監督の苦心の指導者生活をひもといている。

05年8月、就任初日にグラウンドに顔を出すと、ピンポン玉と練習用の細い木製バットで“ピン球野球”に興じる選手たちに遭遇。雑草だらけのグラウンドで、無気力な表情を浮かべる選手たちを見て、「大きな目標に向かう野球部にしなければ、生徒、学校が変わらない」と直感し、「日本一になる」と宣言。しかし、その練習の厳しさに退部者が続出した。

08年に、会長旗争奪大会で念願の公式戦初勝利を挙げると、09年夏に県内8強、11年の夏に同4強に食い込むなど着実に力をつけてきた。17年の夏には初の甲子園出場を果たす。けれど、甲子園では初戦で三本松に4対9で敗戦。試合時間“1時間39分”は同年の甲子園で最短だった。「甲子園用の戦い方を作らないといけない」と痛感させられたと坂原監督は述懐する。

3季連続で出場した18年夏の甲子園では、初戦で花巻東を下し、悲願の甲子園初勝利。勢いをそのままに、8強まで勝ち進んだ。そして、記憶に新しい昨年の夏には、下関国際高校が過去最高の甲子園準優勝に輝いた。

坂原監督は「下関国際は負けから強くなってきたチーム」と常々語る。何度も弾き返された公式戦の壁、2大会連続で初戦敗退した甲子園。敗戦から学び、その悔しさを原動力に野球に向き合うのがチームの伝統となっている。甲子園の決勝に進出したことで、その年に全国で1チームしか味わえない「甲子園の決勝での負け」を経験した。この悔しさをどう今後につなげていくのか──。本書は、そのビジョンを描いた高校野球ファン必読の1冊だ。

【著者プロフィール】

井上幸太(いのうえ こうた)
1991年、島根県生まれ。大学卒業後、出版業とは無関係の会社員生活を約2年半送るも、野球の知識欲が抑えきれず、衝動的に退職。実績、人脈をほとんど持たない中、2017年10月からライターとして活動を開始する。現在は、居住地である島根県の高校野球を中心とした中国地方のアマチュア野球をメインの取材領域とし、「報知高校野球」「野球太郎」などの野球雑誌や、「web Sportiva」「山陰中央新報デジタル」などのwebサイトでも執筆している。ライター活動開始間もない時期に、17年夏の甲子園出場直後の坂原秀尚監督を取材し、熱意と圧倒的な知識に驚愕。「今後10年以内に全国制覇を果たす監督」と直感し、以降坂原監督、下関国際野球部の取材を継続的に行っている。22年の夏には、下関国際が甲子園で戦った決勝までの全5試合も球場で見届けた。

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