【寄稿】スマート遊技機ばかりになる未来像(WEB版)/POKKA吉田

年が明けて令和5年として本誌への初寄稿となることから、表題について中長期的な想定として触れてみようと思う。なお、私はスマート遊技機推進&肯定派ではあるが既存機否定派ではない。また、スマート遊技機「だけ」の遊技機市場に早くなっていくべきだとは「考えていない」。諸条件が満たされてすべてのホールが自然にスマート遊技機だけを選択するようになればスマート遊技機市場として到達点になるとは考えているが、その是非については実は意見はない。「そういう遊技機市場になるかどうかは、ホール職域とメーカー職域が決めるだけ」という考えである。

では触れるのはどういう内容か。それは「遊技機市場が(ほぼスマート遊技機だけになる)ための条件はどのようなものか」ということであり、それを単なる私の予想的なものとして触れるということである。この点は誤解なきようにお願いしたい。

さて、スマート遊技機だけの市場になるための条件をざっと挙げるといくつもあるが、最も重要なものは鶏卵の先はどちらかというのを置いておけば次の2点となるだろう。

・ホールがスマート遊技機しか買わなくなる
・メーカーがスマート遊技機しか作らなくなる

実は究極にはコレだけが条件となると考えている。では上記2点の条件が満たされるのはどういうときか。それぞれについて簡単に述べてみたい。

まずはホールがスマート遊技機しか買わなくなるという状況。これが実現するためには「すべてのホールがスマート遊技機を設置している(か、近い将来に設置の準備をしている)」ことが必要だろう。そのためには各種設備等や遊技機の供給が総需要にすべて対応できていることが前提である。

今、ホール関係者の間ではスマート非導入店と導入店と、やはり分かれている。そして非導入店の数はとても多い。すなわちこの状態ではスマート遊技機だけの市場になることはないわけだ。

総需要に応じるだけの供給があるかどうかは、半導体等の調達の問題とはまた別次元の話になるかと思う。現在はありがたいことに昨年10月の途中頃から調達難は改善されてきたが、それは「ホールの今の総需要にすべて対応できる供給環境にあるということではない」ことに留意が必要である。

たとえばCR機の普及に大貢献した花満開。何台販売されたか。あるいはその他名機と呼ばれたCR機群がそれぞれ何台販売されていたか。そしてそれは何年続いていたか。それを考えると、スマスロで最大でも数万レベルの台数となっている現状では、とてもじゃないが一年やそこらで供給は追い付かないだろう。しかも今年は春にスマパチの導入も予定されている。ユニットだけで考えても、あるいは遊技機だけで考えても、供給の視点からはこの条件を満たすのはとても難しいということはわかる。

しかも、供給は総需要よりも「もっと全然多くされている」ことも前提だ。現在、新台を購入することが難しい店舗もまだまだ残っている。購入することは可能でも事業として許される設備投資額の幅も法人・店によって異なっているし、設備も遊技機も優良法人であっても中古市場が機能していた方がありがたい。中古市場が市場成立の前提になると考えれば、総需要「程度の供給」では足りないわけだ。どれくらい多ければいいかはわからないが、ざっくり300万台市場で300万台分ではかなり厳しいと言える。

設置台数市場をシュリンクさせていけば話は別だが、スマート遊技機は専門店の登場も視野に入る。少台数ならセキュリティの面は対応しなければならいが下手したらワンオペ営業もあり得るとすれば、設置台数市場は昨年と同様にシュリンクしていくとは限らない。むしろ、10万台レベルの大ヒット機が登場すれば、減少してきた設置台数が増加に転じる可能性すら一応は残していると思う。となれば、供給の問題は調達改善「程度」では完全スマート遊技機市場成立は難しいのではないか。

となれば単純に「かなりの期間を要する」ということになるかと思う。それは1~2年程度ではないだろうというのが今の私の予想だ。

もう一つのメーカーがスマート遊技機しか作らなくなるという状況についても触れてみよう。

CR機の普及の過程には花満開だけではなく、日工組の内規改定や大量の現金機の社会的不適合機自主撤去(CR機も一部含まれていたが主に現金機だった)という、かなりイレギュラーな事情があった。特に社会的不適合機自主撤去は大きなきっかけだったと思うが、それでも現金機はなくならなかった。現金機が消滅していったのはその後、2004年の規則改正「後」である。社会的不適合機自主撤去は全日遊連小野理事長(当時)が会見で「終了」と発言したのは1997年末のことであり、そこから何年も経て、ようやくなくなっていったわけだ。

スマート遊技機を作ることを優先する、というメーカーはしかしあってもおかしくはない。やはり遊技機レギュレーション上、既存機よりも優位であり開発企画自由度で既存機に勝るからだ。

しかし、遊技機メーカーのビジネスの根幹は「ホールに遊技機をたくさん買ってもらう」である。ホールがスマート遊技機ばかりを買うのなら既存機を作るメーカーは存在しなくなるが、既存機を買うホールがあれば(≒スマート遊技機の総需要台数が市場全体に比較して圧倒的多数でないのなら)、普通に既存機を作ってスマート遊技機を作って、両方販売するのがメーカーとしての立ち位置だろう。

スマスロが登場したとき、多くのホール関係者が「コンプリート機能がなければどうなっていたか」と心配したほどのデータも見られていた。実際には本稿執筆時点で最も稼働が良いのが鏡なので出玉性能最優先という市場「ではない」が、行政視点で言っても「既存機を作るな」とは言いづらい、くらいの環境にはあるかもしれない。データ管理によって射幸性管理に資するから「とにかくスマート遊技機を最優先にしろ」と行政が言うかも、という懸念も今はない。そもそも射幸性管理をしっかりしたところで依存対策に資するというエビデンスがないことを行政は何年も前から把握しているのである。

だから○○年後にはメーカーはスマート遊技機しか作らない、というルールが実施されるという可能性は低いというのが私の予想だ。仮にそういうルールを用意したとしても、ホールの総需要がそうじゃなければ、ルールは変更していくのがメーカー職域だろう。

よって、すぐにすべてがスマート遊技機になるとは私は考えていない。もちろんスマート遊技機需要は旺盛には違いないので、求めるホール法人にメーカーや設備業者がどこまで供給できるか、その総量が完全スマート遊技機市場が成立するほどになるまで何年かかるか、ということなのだろう。

これが私の予想である。

昨年末、スマスロ北斗の型式試験適合が発表された。今、かなりのホール関係者が北斗に大注目している。そして同じ春にはスマパチも登場予定だ。スマスロのおかげで単月の業績良化という法人はたくさん存在する。スマパチもそうなってほしいと思うしその可能性は高いとも思う。

が、すべてがスマート遊技機になるかどうかはまた別の話だ。いずれそうなるにしてもかなりの期間を要することになるだろう。

本稿の趣旨として、スマート遊技機も既存機も、ともに発展していくべき、というのが令和5年からしばらく続く重要課題だという私見だ、ということを述べて本稿を了としたい。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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