【特別寄稿】パチンコ産業の歴史⑪ 国家公安委員会規則の改正と「パチスロ3号機」(WEB版)/鈴木政博

創刊60周年記念にあたり、業界の歴史を振り返る意味に おいて「パチンコ産業の歴史シリーズ」を再掲載しています。 ※この原稿は2011年3月号に掲載していた「パチンコ産業の 歴史⑪」を一部加筆・修正したものです。

1. パチスロ2号機から規則改正で3号機へ
1990年の規則改正で、パチンコは「一発台」や「おまけチャッカー付きデジパチ」などの「開放した入賞口以外への遊技球の入賞が容易になるもの」が禁止されたことは前回書いた。ただし、デジパチに関しては「おまけチャッカー禁止」の一方で「最大10ラウンドから16ラウンド」に緩和されたため、実質的には大きな打撃を受けなかった。それどころかハネモノは「最大8ラウンドから実質15ラウンド」へ、権利物も「最大8ラウンド×3回セットから、16ラウンド×3回セット」へ変更されており、1990年の規則改正は規制強化部分もあったものの、パチンコについては実質「大幅緩和」であったといえる。

一方パチスロはどうだったか。パチスロが0号機時代を経て1985年に初めて「回胴式遊技機」として風適法に記載され、1号機が登場したものの不正改造が相次ぎ、不正改造対策を取り入れた「1.5号機」が登場するまでの経緯は昨年7月号「パチンコ産業の歴史④」に記した。

1988年には「2号機」が登場する。2号機は「貯留(クレジット) 50枚まで搭載OK」や、BB中のRB回数で「Aタイプ(RB3回)・Bタイプ(RB2回)・Cタイプ(BB非搭載)」の新ジャンル分け、「小役およびシングルボーナスの集中OK」などの大幅緩和に合わせ「1ゲーム4秒以上」、「ボーナス純増最大350枚」、「吸い込みや天井方式の禁止・完全確率方式の採用」などの規制もあり、パチスロは大きく変化した。特に「完全確率方式」は1号機時代の連チャンを禁止するもので、2号機として初期に登場したアークテクニコ製の連チャン機「アニマル」は、後に実質的には完全確率方式ではないことが発覚し、ホール登場から数ヵ月後に「アニマルG」として基板変更されるなどの措置が行われている。この「完全確率方式」の採用により、いわゆる連チャン機はホールから姿を消し、Aタイプは人気を落としていく。

一方で新たに緩和されたゲーム性である集中役に人気が集まった。フルーツの集中では高砂電器産業製「ウィンクル」やオリンピア製「バニーガール」が、また大量獲得が可能な集中役搭載機として尚球社製「チャレンジマン」が、シングルボーナスの集中では北電子製「ガリバー」やニイガタ電子精機(当時はサミー系企業)製「アラジン」などの集中役搭載機が人気を博した。

そんな中で行われた、1990年の規則改正。パチンコにとっては緩和要素の多かったこの改正も、パチスロにとっては規制色の強い内容だった。2号機で人気だった集中役については「シングルボーナスのみOKで小役の集中は禁止」となり、さらに「集中役は300分の1以上の確率でパンクすること」となって、期待獲得枚数は大幅に減ることとなる。またゲーム数についても「1ゲーム4.1秒以上」と若干の修正が加わった。そして、このように規制が強化されたパチスロ3号機は以降、思わぬ方向へ向かう事となる。

2. パチスロ3号機の明暗
集中役に規制が入り、2号機のようなゲーム性が期待できなくなった3号機において、最初にヒットを飛ばしたのが山佐製「スーパープラネット」 だ。この機種はボーナス終了後にチェリーが若干出やすくなり、コイン持ちが良くなる事から結果として連チャンに近いスランプグラフの状態を作り出す点が人気となった。大量のリーチ目やボーナス音「もろびとこぞりて」も人気を集めた要因だろう。しかし一撃数千枚という、「アラジン」に代表されるような2号機の高い射幸性に慣れていたファンには、十分に満足できる出方を見せるわけではなかった。

そんな中、1990年10月に登場するのが瑞穂製作所製「コンチネンタル」だ。この機種は7の3つ揃いだけなく「BAR・BAR・7」でもビッグボーナス、という斬新なゲーム性を取り入れた機種だったが、それよりも導入後の挙動で大きなハマリの反面、一度当たれば短いゲーム数でボーナスが連続するという、過激な連チャン性に注目が集まっていた。
元々「コンチネンタル」のプログラムには 「コイン4枚入れでレバーを叩くと100%ボーナスフラグ当選」というプログラムが適合時の仕様に書き込まれていた。しかし実際にはコインは3枚しか受け付けないため4枚入れになることはなく、その部分は全く無用なプログラムであるハズだった。ところが実際にホールに設置される際に、「コインの形状を記憶し、他店のコインを受け付けない部品」という謳い文句で「CS-90」というコインセレクターが搭載され納品されていたことが発覚する。 そして実はこの「CS-90」が、他店のコインを受け付けないといったものではなく、実際にはありえないハズの「4枚目投入の信号を出す」という仕組みが部品に組み込まれており、結果として過激な連チャン性を生み出す部品として機能していたのだ。この事が後に発覚し、この「コンチネンタル」は検定取り消し処分を受けることとなる。

また翌年1991年にはアークテクニコ製「ワイルドキャッツ」とバルテック製「セブンボンバー」が登場するが、この2機種も過激な連チャン性で一躍大人気に。ところがロムを調べても、保通協で適合した製品そのままで、不審な点はない。実はこの両機は、納品後に遊技機のメインである「ROM(ロム)部分」ではなく、一時的に書き込みを行う「RAM(ラム)」部分に別なプログラムを書き込み、こちら側で遊技性をコントロールするという「注射」という手法により連チャンしていることが後に発覚、この2機種も結果として検定取り消し処分を受ける。

ここまでで実際に検定取り消しまで至ったのはこの3機種だけだが、実際には正常ではない連チャンをする3号機はこれに収まらなかった。納品後に行う「注射」、納品後に交換する「裏口ム」など数々の手法で、メーカーが把握しているかどうかはともかくとして3号機は続々とウラ化してゆくことになる。有名なものだけでも「リノ」「ドリームセブンJr」「アポロン」「グレートハンター」「トライアンフ」「アラジンⅡ」「デートライン銀河Ⅱ」など…。まさに3号機は「パチスロ総・裏物時代」と言われたほどの状態と化していた。そして数々の裏ロム化した機種の中でも、それにメーカーが直接関与したとしてニイガタ電子精機製「リノ」は最終的に3号機4機種目の検定取り消し処分となる。

また、これら「裏物」には、バグや仕込みなどによる「攻略法が可能」な機種も数多く存在した。パチスロ闇の時代ではあったハズだが、一方で攻略雑誌が好調な売れ行きを示し、連チャンするモーニング台を目指し、朝から大勢の客がホールに並ぶなどの現象が巻き起こる。そして皮肉にもパチスロ人気は上昇し、非常に活気ある時代を迎えることとなった。

過激な連チャンを生み出す不正改造が発覚し「コンチネンタル」(瑞穂製作所製)、「ワイルドキャッツ」(アークテクニコ製)、「セブンボンバー」(バルテック製)、「リノ」(ニイガタ電子精機製)は検定取り消し処分に(写真はワイルドキャッツ)

(以下、次号)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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