サッカーのアルビレックス新潟が6年ぶりにJ1の舞台に上がる。2023年シーズン、松橋力蔵監督が昨季に引き続き指揮を執る。選手もほとんどが残留し、ブラジル人選手2人を含む4人が新たな戦力として加わった。今季のチームの顔ぶれを紹介する。
選手一覧
左から背番号、氏名、生年月日、身長、出身地、好きな食べ物、ひとこと紹介
GK(ゴールキーパー)
DF(ディフェンダー)
◆新井直人 両サイドバック、センターバックでもプレー
「新潟でもう一度、J1で挑戦したい」。シンプルな思いが、3年ぶりに古巣へ復帰することの決め手となった。C大阪でJ1を戦い、J2徳島では主力として力を付けてきた。「プレーや行動で見せていきたい」と経験をチームへ還元するつもりだ。
サイドバック(SB)やセンターバック(CB)と複数ポジションをこなせる万能性は健在だ。高知キャンプの練習試合では主に右SBで起用されていたが、練習では左SBやCBもプレー。チーム内に新たな競争をもたらす。昨季は右SBにMF藤原、左SBにDF堀米と先発がほぼ固定されており、アクセントとして期待が掛かる。
2021年に移籍したC大阪では、MF清武ら国内トップクラスの選手がそろう環境に身を置いた。チーム内で競争しながら技術力の高さや、状況判断の正確さ、試合をコントロールする力を肌で感じた。「対戦相手として戦っただけでは分からなかった」と言い、日常の全てが刺激的だった。
出場数は6試合と多くはなかったが、出場した試合では1対1で競り勝つ強さも発揮できた。「トップレベルの選手とやっても、間違いなく通用する」と確かな手応えはあった。22年に移った徳島では、試合に出場し続けながら対人の強さやサイドからの攻撃参加に磨きをかけた。
2度目の新潟は、「アジアの舞台(アジア・チャンピオンズリーグ)で戦いたい。タイトルに近づけるチームになっていきたい」と背番号2。再びオレンジのユニホームに袖を通す喜びをかみしめながら、成長した姿を見せていく。
MF(ミッドフィールダー)
◆グスタボ・ネスカウ 得点源として期待のストライカー
189センチと恵まれた体格を持つストライカーへの期待は大きい。初めての海外と、新たな環境に身を置く今季は「新潟でテクニックとメンタルをもっと上げたい。J1で得点王も目指したい」と決意を語る。
高知で行ったキャンプでは、チーム練習よりもコンディションを上げることに重点を置いた。「いまはまだ8割くらい」の仕上がりだ。トレーニングには前向きに取り組み、「チームのスタイルを分かるために頑張らないといけない」と汗を流す。
「自分のキャリアにとっていい経験になる」と海外挑戦を決断した。前所属のブラジル1部のクイアバECでは、主にセンターFWとしてピッチに立った。強みに挙げるのは、パワーやバイタルエリア内でのポジショニングだ。「クロスが来る前にどんな動きをすれば、シュートを打てるかを常にイメージしている」と語り、高さを生かしたヘディングシュートも磨いた。
「新潟でいい活躍をして、いずれはセレソン(ブラジル代表)に呼ばれるような選手になりたい」。日本でのプレーの先に、大きな夢を膨らませる背番号23。そのためにもゴールを量産し、チームを勝利に導くつもりだ。
◆ダニーロ・ゴメス 左利きのドリブラー
「サポーターを喜ばせるようなドリブルを見せたい」。24歳の若きドリブラーは、新潟での挑戦に期待を膨らませている。「チームが勝利を連続できるように」自身の持てる力を存分に発揮する覚悟だ。
加入前に所属したブラジル2部のAAポンチ・プレッタでは、主に右ウイングとしてプレー。走力を生かした縦への突破や、カットインからのシュートを得意としていた。「自分の特長と合わせて、意味のあるスプリントをしたい。そのためにも早く新潟のサッカーを学びたい」と意気込む。
幼少期はブラジル代表のFWネイマールや、自分と同じ左利きでアルゼンチン代表FWメッシにあこがれ、まねするところからサッカーを始めた。14歳からは、ブラジル1部のサンパウロFCの下部組織へ加入。20歳でトップチームへ昇格した。その後はブラジル国内のチームを渡り歩き、「世界でも自分のサッカーを見せたい」と日本でのプレーを決めた。
チームに合流して日は浅いが、持ち前の明るさではじける笑顔は印象的。一方、ピッチに立てば常に真剣で「点を取って、アシストもできれば勝利に貢献できる。そんな1年にしたい」と力を込めた。
FW(フォワード)
◆太田修介 苦渋の時期乗り越え、能力開花
隙を突いてDFラインの裏へ抜け出し、相手ゴールを脅かす。動き出しのタイミングや、スピードは誰にも劣らない。磨き上げてきた最高の武器で「ビッグスワンを沸かせたい」と意気込んでいる。
プロ6年目で、初めてのJ1の舞台。選んだチームは、昨季J2の最終節で、対戦相手として戦った新潟だった。試合で大勢のサポーターが後押しするスタジアムの雰囲気に圧倒された。スタイルも魅力的で「自分がここに入ったら、どうなるのか想像したらワクワクした」。
自身の武器を見いだしたのは、日体大でプレーしていた大学2年時。かつて磐田をJ1優勝へ導いた鈴木政一氏(元新潟監督)が監督に就任した。それまで気にも留めていなかった、裏への抜け出しを鈴木氏は高く評価してくれた。抜け出す角度やタイミングなど事細かにアドバイスを受け、ひたすら鍛え続けた。そして、2018年、中高生の時に下部組織に在籍していたJ2甲府から声がかかり、念願だったプロの道を切り開いた。
だが、プロ入り後は試合に出られない日々が続いた。当時の甲府には、同じFWに強力な外国人アタッカーが多数在籍。練習試合でいくら結果を残しても、出場機会を勝ち取れず。1、2年目の出場は、リーグ戦わずか5試合にとどまった。「人生で一番きつかった2年間だった」
それでも己を鍛えることは決して怠らなかった。すると3年目の20年、ようやくシーズンを通して試合に絡めるようになった。3年間同じ監督の下でプレーし続け、評価してもらえたことで「腐らずにやり続けてよかったし、すごい成長を遂げられた」と大きな手応えも得た。1試合に懸けるハングリーさも身に付いた。
さらなる成長を求め、21年にはJ2町田へ移籍。監督から厳しく要求される環境下で、「自分の武器の生かし方を学んだ」。常にゴールに直結できるようにプレーを洗練し、22年にはキャリアハイの11得点をマークした。
高みを求めて、たどり着いた新天地。いまは「『究極』を求めるための一員になりたいし、新潟で大きなものを成し遂げたい」と思い描く。そして、その先には日本代表と意欲は尽きない。J1での第一歩となる今季は「貪欲に結果と、さらに成長を求めてやっていきたい」と躍進を誓った。
◆松橋力蔵監督 「貫き通す」戦い方はぶれず
就任2年目の指揮官にとって、J1を戦う上で重要なのは「やってきたことを貫き通す」ことだ。ボールを保持して主導権を握りながら、攻める新潟のスタイル。ステージが変わっても戦い方にぶれはない。
今年の立ち上げのミーティングで、選手に伝えたのは「自分たちのスタイルをどこまで究極のところまで持っていけるか」だった。昨季は積み上げてきたサッカーでJ2を制した。「追求し続け、最終的にどこに行き着くのだろう」。尽きないテーマを掲げる。
強敵が居並ぶ戦いの舞台に、順位や勝ち点など数字的な目標は言及しない。戦ってみないと分からないことも多く、「単純にタフなリーグだと思うし、慣れていく時間も絶対に必要になる」と言う。自分たちの成長に全力を注ぐことが、勝ち点を獲得する近道と考えている。
J1横浜Mのコーチなどを歴任。2019年には優勝を支えるなど、J1をよく知る。「J2と歴然とした差があるとは感じていない」と語る一方で、テクニック、フィジカル、スピードといった特長を高いレベルで生かし切った選手が多いことを挙げる。それゆえに「個々の強さはごまかしがきかない」と、キャンプからチーム力を上げるために個の強化を求めた。
J1での初采配には、「自分みたいな者が18人にしか与えられない権利を得られて、感謝でいっぱい」と謙虚に話す。開幕に向けて静かに闘志を燃やしながら、「どんな状況に置かれようとも、目標に対してチームが一歩でも前進し、成長するような一年にしたい」と決意を口にした。
◎松橋力蔵(まつはし・りきぞう)1968年8月22日生まれ、千葉県出身。2004〜20年、J1横浜Mで下部組織の監督、トップチームコートなどを歴任した。21年に新潟のコーチを務め、22年に監督へ就任した。