SNSで会社の悪口を言いまくってませんか？
会社が本気を出したら損害賠償請求される可能性があります。匿名アカウントだから安心？ …ヤバイですよ。発信者を特定する手続きもカンタンになってきたので、今すぐツイートを削除して下さい。
今回は、社員さんが会社や上司の悪口を言いまくって、損害賠償請求された事件を紹介します。
SNSで悪口を言いまくったわけではないのですが、メールのCCに他の従業員や取引先も入れてて大乱舞しております（フジアール事件：東京地裁 R4.5.13）。「セーフ発言」もあるので「アウト発言」との違いもご覧ください（弁護士・林 孝匡）。
どんな事件か
会社はテレビ番組やイベントの美術制作などを行っていました。Xさんは契約社員として入社しました。
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▼ 会社とのイザコザ
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Xさんは契約期間が満了ということで1年で退職しています。これ以上更新されなかったのは、Xさんと会社との間でイザコザがあったからだと思います。
Xさんは未払い賃金や残業代が支払われてないことを主張したようです（Xさんは労働基準監督署（労基）に申し入れて、最終的に労基から是正勧告が入って会社に対して割増賃金の支払いが命じられています）。
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▼ Xさんの怒りメール＆発言
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Xさんは会社との折り合いが悪かったのでしょう。働いている期間と辞めたあとに数多くの怒りメールを送信します。
上司2名に送る際、CCに他の従業員を入れて送信することが多く、取引先や関係者をCCに入れることもありました。
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▼会社が訴訟を提起
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「この内容はヒドイ...」と思ったのでしょう。会社と上司2名はXさんに対して訴訟を提起しました。損害賠償請求です。
裁判所の判断
裁判所は「多くのメール＆発言が違法だ」と認定。以下、一部を抜粋して提示します（ザクっとまとめます。上司だけに送ったり、CCに従業員や取引先も入れたものもありますがザクっとまとめます）。
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○ セーフ
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裁判所は「以下のメールは違法じゃない」と認定しました。
- 「解雇されることになりました」
〈裁判所の判断〉
事実とは違うけど文面全体としては反省と謝罪を述べている。会社の社会的信用は低下していない。 - 「●一族に続いて2度目の創業メンバーの排除完了おめでとうございます！」
〈裁判所の判断〉
総務部長に対して自分の退職に関する不満を言ったもの - 「このままなら、あらゆる取引先の総務や現場の隣の方々に、色々な書類を送って、電話して、労働実態の記録をとります」
- 「未払いもたかだか20万円くらいにしかなりませんが、強硬な態度ならそのまま弁護士に依頼します。判例は公開されるので社長名も世に出ます」
〈裁判所の判断〉
会社にとっては迷惑であってもXさんの権利行使に向けた活動として許容される余地がないとは言い切れず直ちに違法とまでは評価し難い
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× アウト
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これに対して「以下のメールは違法だ」と認定。ズラっといきます。
- 「若者の人生破壊し慣れてて、感覚狂ってるかもしれませんが、大人として恥ずかしい振る舞い気をつけないと、死ぬ時に枕元に誰もいなくなりますよ」
- 「なんでこんな頭が悪いのか不思議です」
- 「〜人生設計を容易に破壊する●〜一部役員は相当に常軌を逸しています」
- 「(総務部長は)普通の会社ならクビになるレベルです」
- 「法学部1年目にも嘘だと判断つくような頭の悪いセリフ」
- 「炎上したいんですかね。なんて頭の悪い総務なんですかね」
- 「未払いを支払うように促し、柔らかい手段から順番に取っていますが、いまだに頑なな態度をとるのは、アホとしか言いようがありません」
- 「最悪、週刊誌に各種、やりとりと音声データを売りますか？」
- 「話を入れる対象を広げていきたいと思います」
- 支払いに応じない場合には「スキャンダラスな情報」を週刊誌に流出させることを予告
- 裁判に持ち込めば勝てるとして100万円の賃金支払いを要求
- 支払いに応じない場合は国民に向けてテレビ局を批判する活動に出ることを予告
- 「マセラッティ程度のイタ車に目を輝かせる成金志向」
- 「風俗ばっか行って〜部下の●さんの入社祝いに風俗連れていき嫁と子どもに愛想つかされて離婚寸前の人物」
- 「普通ない、大企業グループの子会社、総務部長が呼び出されるとか。学校の先生に呼び出される子ども。未だに大人になりきれていない。嫁と子に逃げられるのはそういうところ」
- 「早慶マーチでこんなレベル低い人なんて見たことないよ」
- 「●●出身者が多い企業で、出身地の情報教えるとか、●●差別者ですよ」
- 「〜の経営、総務は●●としかいえません」
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× アウト発言
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メールだけでなく発言もありました。以下の発言は退職手続きをとっている時に出たもの。
周りに他の従業員がいたんです。
総務部長に対して
「そんなんだから奥さんと子供に逃げられるんだ」
「こいつの家を知っているから、何かしてやろうと思えばいつでもできる」
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▼ 裁判所の見解
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裁判所はザックリ「未払い賃金などの問題があることを踏まえても言い過ぎだわ」と判断。
各発言に対して、裁判所が出した評価は以下の通り。
- 侮辱的な表現
- 名誉感情を侵害
- 社会的評価を低下
- 社会通念上許される限度を超える違法な行為
- 不当な金銭要求
- 口汚い誹謗中傷
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▼ 認められた賠償額
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- 常務取締役 慰謝料10万円
- 総務部の部長 慰謝料30万円
- 会社 約67万円
〈内訳〉
警備費用 約17万円（本社入口前に警備員1名。5日間）
無形損害 50万円（社会的地位の低下）
Q.
上司2名の金額が違うのは、なぜですか？
A.
言われた悪口のレベルですね。総務部長に対しては、自宅に押しかけるかもという発言があったり、性的志向や家庭内の問題というプライバシーを屈辱的な態様で暴露されたからです。
最後に
今回のケースはほぼアウトになりましたが、会社に対する批判が何でもかんでもアウトになるわけではありません。
必要以上に萎縮する必要はありませんが、なんやろ、やりすぎはヤバイのです！
優等生的に言えば「社会通念上許される限度に留めておきましょう〜」になるのですがビミョーな発言は私は分かりません。裁判にならないと白黒つきません。
これはもうあなたのセンスです（笑）。 上記の「セーフ」と「アウト」の表現を比較して、発信戦略を練ってみて下さいね。また裁判例を見つけたら紹介します。
今回は以上です。これからも働く人に向けて知恵をお届けします。またお会いしましょう！
【筆者プロフィール】
林 孝匡（はやし たかまさ）
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
HP：https://hayashi-jurist.jp Twitter：https://twitter.com/hayashitakamas1
