2023年のレース距離、GT500新規定はいかに!? GTアソシエイション坂東正明代表インタビュー

 スーパーGTを毎戦ライブ中継しているスポーツ専門テレビ局・J SPORTSでは、2023年に向けたファン待望の番組『SUPER GT FESTIVAL 2023』を2月18日(土)午後3時20分から午後6時まで放映する。この放送を前に、スーパーGTをプロモートするGTアソシエイションの坂東正明代表に、2023年へ向けたインタビューを行った。2023年、さらに近い将来に向けての施策と、その狙いを聞いた。

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──まず、1月の東京オートサロンではホンダが次期GT500車両としてシビック・タイプR-GTコンセプトを発表しました。市販車は4ドア、FFですがGT500では4ドアのFRになります。このシビック・タイプRーGTコンセプトについてはどう感じていますでしょうか。坂東正明(以下坂東):マーケティングに寄与するための次期車両としてホンダさんが“これで行く”と決定されたものであり、新しい車両の投入は歓迎なので、ぜひ受け容れたいと思う。ただ4ドアベースなので空力面では、かなり厳しい面もあるのではないかと思っている。

 車両サイズについてはルーフからリヤスポイラーに至るまでのラインがスケーリングで決まっているが、ベース車両の幅がないところを伸ばしているので、オートサロンで発表されたようなスタイリングになっているが、もう一度チェックしなければいけないと思う。空力面など、HRC Sakuraが一生懸命やっているところだと思う。

東京オートサロン2023で公開されたホンダ・シビック・タイプR-GTコンセプト

■GT500の新規定は2025年導入か

──そのシビック・タイプR-GTが登場する2024年についてですが、このタイミングでGT500の新しい車両規定が導入されるのでしょうか。坂東:現在使用しているモノコックは、2019年に製造し、2020~2022年に使う予定のものだった。それを1年延ばして2024年に新しい規則、モノコックを使うという了解があったが、耐久性に問題がなく現在使用しているモノコックが使えるのであれば、わざわざ新しいものにしなくても良いだろうと。今後、全車のモノコックのねじり剛性などのデータを取っていくが、それで使用に問題がないのであれば、2024年までは現在のものをそのまま使用して、2025年に新しいものを入れようと考えている。

 その場合、シビック・タイプR-GTは現行のモノコックにボディを載せることになるはず。もし今から2024年に向けて新しいモノコックを作るとなると、日程的に15台目は間に合わなくなってしまうタイミングであり、そもそも何のために新しいモノコックを入れるのかを考えなければならない。規則のため、予算のためであれば、現行のものが保つのなら継続して使えば良いと考えている。

──では今季、さらに来季もGT500の開発は凍結されるということでしょうか。坂東:開発、開発というが『そんなに速く走りたいのか?』と問いたい。各社とも細かな部分を開発してくるが、ファンに見えない、分からない部分にはあまり費用をかけないで欲しいと考えている。また製造過程でのCO2排出量もコストも大きくなってしまう。CO2の排出がない状況でやるのであれば良いが、今後は速さというよりも、マニュファクチャラー、サプライヤーともに長く保つタイヤ、ブレーキ、強くて壊れず、燃費が良いエンジンの開発にシフトしてもらいたいと思っている。今後450kmレースが増えることで(1スティントの距離が短くなることで)燃料搭載量が減れば車両の前後バランスも良くなるし、ピットイン時間も短くなる。またタイヤの保ちも良くなるはず。
 こういった取り組みをみんなで考えていくことで、結果的に環境に良いものに繋がると思う。本気になって燃費が良いものに取り組んでいけば、必然的にモータースポーツ界が環境を考えていることを示すことができると思うし、CO2の排出量削減に繋がっていくと思う。

──その方向性を、これまで開発を重視していたメーカー側も理解してくれているということでしょうか。坂東:かなり考え方は変わってきたと思う。

鈴鹿サーキットでのスーパーGT GT500クラスのメーカーテスト
富士スピードウェイでのスーパーGTメーカーテスト
岡山国際サーキットでのスーパーGTメーカーテスト

■2023年のレース距離は5戦が450kmレースに

──また、こちらもうかがっておきたいのですが、最近GT300チームからはタイヤ代が非常に高いなど、コストに対する声も聞こえていますがいかがでしょうか。坂東:スポンサーの獲得や、チームとしての将来的な設計、運営を行うことについては、アマチュアではないというところを示さなければならないと思う。お陰様で、いまスーパーGTにはシリーズへのエントリー待ちのチームが複数存在する状況で、チームとしては『スーパーGTに参戦している』ことを活かし、しっかりスポンサーを見つけられる環境にはあると思っている。

──今オフのメーカーテストでは、まだ今年から導入されるカーボンニュートラルフューエル(CNF)が十分使用されていないようですが、岡山での公式テストから全車に投入されるのでしょうか。坂東:GT500のメーカーはベンチテストでは使用している。(ドイツのハルターマン・カーレス社から)現在、2万リットルほど国内に入ってきていて、各メーカーに分けているし、GT300もGT300規定車両はベンチテストを行っている。

──昨年の最終戦後のテストでは、チームスタッフやドライバーからCNFの強烈な匂いに関する懸念の声も聞かれてきました。坂東:あれはエンジン内での燃焼に関してしっかりと適合がとれていなかったメーカーがあったということ。今はそれほどでもないし、今シーズン後半に向けては、匂いや色について変更ができると思う。あとはレース後に余った燃料の次のレースに向けた保管などの問題もあるので、その点は今後話し合っていく。ロジスティックの面ではすでに6月の鈴鹿までの分はデリバリーが終わっている。

──今シーズンのレース距離について、大阪オートメッセのトークショーで明かされたそうですが、改めて教えて下さい。坂東:第1戦岡山、第6戦SUGO、第8戦もてぎが300kmレースで、それ以外はすべて450kmレースで、2回のピットインが必要になる。またタイヤの持ち込み本数は300kmの場合5セット、450kmの場合6セットと、1セットずつ昨年から少なくなる。それ以外は大きなスポーティングレギュレーションの変更は予定していない。

──政府は3月13日からマスク着用について、個人の判断に委ねる方針を示していますが、新型コロナウイルスに関するGTAの方針を教えて下さい。坂東:基本的に開催地の自治体のガイドラインなどに従わなければならない部分もあり、また政府の基本的対処方針のイベント開催時の留意事項として、演者……我々の場合はドライバーやチームスタッフだが、参加者=お客様との適切な距離を確保しなければならないとの安全計画項目があり、その点も勘案しながら、GTAとしてはできるだけ早いタイミングで2019年までと同様の状況に戻していきたいと考えている。

15台のGT300車両が参加しての富士スピードウェイで
2022スーパーGTもてぎCNFテスト ハルターマン・カーレス社製ETSレーシング・フューエル

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 坂東代表からのメッセージをはじめ、2023年の見どころやラインアップ紹介など、開幕に向けた期待を高める『SUPER GT FESTIVAL 2023』は2月18日(土)午後3時20分から午後6時まで放映される。番組放送予定はホームページ(https://www.jsports.co.jp/motor/supergt/)まで。

SUPER GT FESTIVAL 2023

VTR出演:GTアソシエイション 坂東正明会長
特別ゲスト:服部尚貴オブザーバー
MC:ピエール北川、サッシャ
コメンテーター:高橋二朗、田中康二(オートスポーツ)
ガレージリポーター:竹内紫麻
ゲスト監督:脇阪寿一、星野一樹
ゲスト:松下信治、小暮卓史、山内英輝、大草りき
レースクイーン大賞(アワードサポート):名取くるみ

日本モータースポーツ記者会高橋二朗会長と『SUPER GT FESTIVAL 2023』の収録に臨んだGTアソシエイションの坂東正明代表

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