ソ連で生まれたサメ人間“ハイブリッドシャーク”とは?『ムーンシャーク』はアサイラムが気合を入れた(当社比)サメ映画

『ムーンシャーク』©2022 The Asylum

志が高い? 低予算サメ映画

今回のアサイラム製サメ映画、『ムーンシャーク』(2022年)は、(当社比で)そこそこ気合いが入った作りをしている。

まず本編開始からわずか2~3分でちゃんとサメが画面に映る上、「一瞬映る」ではなく大暴れもする。そして「サメの手足がまともに動いている」という点で、ほかのどうしようもない部類の低予算サメ映画よりも志が高いことが理解できよう。

もちろん、ジャンル映画という色眼鏡抜きで観た場合の安っぽさまでは否定できないどころか、「月の裏側に生息する宇宙サメ人間(ソ連製)と、人類が対決する」というストーリーは荒唐無稽。そもそも「サメの手足がまとも」も何も、まともなサメに手足はない。

ともかく今回は、アサイラム社がちょっとだけやる気を出したらしい新作サメ映画、『ムーンシャーク』(原題:Shark Side of the Moon)を紹介していこう。

ソ連で生まれたサメ人間、ハイブリッドシャーク

1984年。当時のソ連で密かに研究が進められていた、“直立二足歩行するサメ”が暴走を開始。多数の犠牲者を出したうえで、プロジェクト関係者はサメ人間をロケットに隔離。サメ人間を乗せた機体はそのまま発射され、関係者もろとも月に放逐する形となった。

時は流れて現在。アメリカ合衆国の宇宙船タブラ・ラサが、月に向かって出発。だが月面着陸間近となって、突然マシンにトラブルが発生。通信手段を失い、月の裏側に不時着したクルーは、そこで驚くべき光景を目撃する。

かつてソ連で生まれたサメ人間“ハイブリッドシャーク”は、その後過酷な宇宙空間に適応して繁殖を続け、ついには独自文明を築き上げてすらいたのだ。地球侵攻を目論むサメ人間は、移動に必要となる宇宙船を奪取せんと、クルーに迫り来る。

こうして人類とサメとの、月面戦争が始まった――。というのが、本作の概要である。

アサイラムらしからぬ独創性と瞬間風力の高さに注目

まず本作、やたらマッシブでプロポーションが良く、ことあるごとにさりげなく決めポーズを取っているサメ人間こと“ハイブリッドシャーク”軍団がなかなかカッコいい。月面をサメのように掘り進み、獲物に飛びかかるサメ人間の勇姿はそれだけで十分評価点。かつ、やたら胸が大きくスタイルがなまめかしい女性サメ人間(美声で言葉を話す)が、人類に拷問を加えるシーンといったような、謎の見所にも事欠かない。この手のサメ映画には定番の巨大ザメだって出る。

設定はトンチキながら、ストーリーは終始シリアスで、悪ふざけに逃げていない点も好印象。オチは投げっぱなしだが、ある種のパニック映画のお約束に沿ったものでもあり、その辺りの肯否の捉え方は個々人によって異なるか。

ただし、月面や宇宙船のセットと合成は驚くほどにチャチ。特に役者の動作をスローにして無重力歩行感を演出しようと四苦八苦している様は噴飯物。中盤からはその合成すら放棄したのか、ただ真っ黒な背景の手前で、かろうじて宇宙服だけを身につけたキャストがひたすら立ち話を続けているシーンまで登場。これで何が「そこそこ気合いが入っている」のかと疑問に思われるかもしれないが、一応最低限作品としての体裁は整っていることと、要所要所の山場では映像面のクオリティがアップし、瞬間的に及第点を超えてくる点は考慮したい。そのほか、序盤の会話劇の冗長さやカメラワークの単調さ、申し訳程度の時事問題・社会風刺要素は平常運転だ。

さて締めくくりになるが、普段なら「毎回手癖で似たようなSF・パニックものばかり作っており、正直コメントに困る低予算映画が多い(『シャークネード』シリーズなどは例外中の例外)」アサイラム作品の中では、その独創性が評価できる一本だろう。

もちろん随所に漂うチープ感は否めず、見過ごし難い欠点も相当数存在するが、とにかく長所と短所がそれぞれかなりはっきりした作りになっているのは、ある意味強みでもある。

少なくとも“サメ映画”と聞いて「じゃあ、とりあえず観てみるか」となる方にとっては問題ないはずだ。

文:知的風ハット

『ムーンシャーク』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:夏だけじゃない!サメフェス リターンズ」で2023年2月放送

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