医療、介護、事業承継…「2025年問題」の恩恵を受ける企業は?

「2025年問題」というのをご存知ですか?

団塊の世代が2025年に、75歳以上の後期高齢者となることによって、日本の人口の年齢別比率が変化し、全人口の4人に1人が高齢者という超高齢化社会を迎えるということを指します。団塊の世代は昭和22(1947)年から昭和24(1949)年に生まれた方々で、総務省が発表した「統計からみた我が国の高齢者」によると、団塊の世代を含む75歳以上人口は1,871万人(総人口に占める割合は14.9%)で、80歳以上人口は1160万人(同9.2%)とのことです。

超高齢化社会を迎えることによって、社会や私たちの生活に問題が出てくることも予想されます。


2025年問題で投資家が注目すべきポイント

政府は2025年問題の対策として、全世代型社会保障検討会議を設置して議論を進めていますが、今回は投資家目線で、どのような分野が影響を受けることが想定されるのか、またチャンスにするための考え方を、具体的に例を挙げて私の見解をお伝えしたいと思います。

(1)医療、介護問題

まず考えられるのが、医療分野への影響です。新型コロナウイルス感染拡大の際に医療従事者への負担が社会問題にもなりましたが、超高齢化社会でも医療の必要性の高い方が増えるわけですから、医療現場の逼迫や医師や看護師の不足が問題となることが想定されます。認知症高齢者数も急速な増加が見込まれるほか、死亡者数も増えると言われています。

また、介護や老人ホーム需要は増加するでしょう。医療や介護に必要な社会保障費の増大も深刻な問題になることが予想されます。支える側が減り、支えられる側が増えるわけですので、現役世代の負担はかなり厳しくなるほか国や自治体の財政が圧迫されることも考えられるでしょう。

関連銘柄の例として、まずエラン(6099)を紹介します。同社は東証プライム市場に上場しており、病院への入院や介護施設での入所生活に必要な日常生活用品などの「入院セット」のレンタルするサービスを提供している介護医療関連企業です。

手ぶらで入退院が出来るように、洗濯サービスのついた衣類やタオル類の貸し出しや、日常生活の必需品を定額制でレンタルするCSセットを提供する、入院セットサービスのパイオニア。CSセットは複数のプランがあり、病院や介護老人保健施設などに合わせ、商品構成品目や料金をカスタマイズしてプラン設定ができているのが強みです。

また、定額制のサービスなのでストック型収益モデルのビジネスであり、利用者数の増加が売り上げの増加につながるほか、業績が底堅いというメリットが考えられます。核家族化などで入院や介護施設への入所の際に頼る人がいない、準備ができないという方にとってありがたいサービスだと思いますし、

超高齢化でサービスの需要が増加していくことが見込まれ、中長期的な業績の成長も期待できるのではないでしょうか。

銘柄の例としてもう1つ、チャームケアコーポレーション(6062)も紹介します。同社は、東証プライム市場に上場しており、近畿、首都圏を中心に大規模老人ホームを展開している企業で「介護付有料老人ホーム」(特定施設入居者生活介護)に経営資源を集中させており、自社所有の施設の多さに優位性があります。首都圏近畿圏の都市部で富裕層向けなど付加価値の高いホームを拡大するなど、多角的にニーズを捉えていて、高い入居率を維持していることも特徴です。

加えて、AI対話技術を有するスタートアップ企業である「ウェルヴィル株式会社」に出資している、隠れAI関連銘柄でもあるといえます。

(2)人材、事業継承問題

超高齢化社会は、労働力人口が減少することを意味します。すでに人材不足は社会的な課題となってきていますし、後継者がいない企業も増えてきており、第三者承継を支援する政策なども打ち出されています。生産性の向上など、人材不足や事業継承の課題に、どのような対策をしていくかは中長期的に取り組む必要がありそうです。

人材関連の銘柄例として、まずはセルム(7367)を紹介します。同社は、東証スタンダード市場に上場していて、企業内研修や人材開発コンサルティングなどをてがける企業です。リーダーの育成や企業風土の醸成に優位性があり、研修は若手を対象としたものや中堅層向け、リーダー向けなど、企業のニーズに応じた支援を実現する対応力とフィッティング力に強みがあります。

越境型リーダーシップ研修のTEXを提供するほか、中国進出の日系企業および現地企業における次世代リーダーとミドルマネジメントの育成の支援なども手がけています。

銘柄の例としてもう1つ、続いてインバウンドの恩恵もうけそうな、クックビズ(6558)も紹介します。同社は東証グロース市場に上場しており、飲食・フード産業に特化した人材サービスを提供する企業です。飲食ブランドのFC本部として飲食企業の成長を支援したり、子会社を通じて飲食事業者と介護事業者向け、外国人特定技能人材の紹介・登録支援事業なども展開する企業です。支援してきた人材を起点とした事業規模の再拡大に向けた取り組みを加速させています。

また最適なソリューションを提供する採用総合パッケージの契約社数が今後も増えることが成長につながる見通しです。食×事業再生の取り組みも開始しており、第1弾として久一米田商店をM&Aしています。

そして事業継承やM&Aの関連銘柄も紹介します。日本M&Aセンターホールディングス(2127)は東証プライム市場に上場している、中堅、中小企業を対象としM&A仲介を行う最大手企業です。また、ストライク(6196)は、東証プライムに上場しており、全国の中小企業の事業承継や事業整理や事業再生、スタートアップ企業のイグジットなどのさまざまな目的のM&Aを手掛ける企業です。同社の運営する「SMART」というマッチングサイトは、業界の草分け的存在です。


今回は大きく医療・介護と人材・事業継承に分けて2025年問題を紐解いてみました。それ以外にも、高齢者世帯数の増加や住まいの問題などさまざまな問題がすでに顕在化してきています。

超高齢化が追い風となるような銘柄も、まだまだたくさんあると思いますので、よろしければこの記事を2025年問題について考える、また中長期的に成長できそうな銘柄を探すきっかけにしていただければ幸いです。

2月13日週「相場の値動き」おさらい

2月13日(月)発表の1月のニューヨーク連銀消費者調査では米国の消費者は、所得の伸びが 4.6% から 3.3% に低下すると見られており、3年先の予想物価上昇率が2.7%と2年3ヵ月ぶりの低水準となりましたが5年先のインフレ期待は2.5%に上昇しています。

消費者はインフレ鈍化するもののインフレは高止まりを見込んでおり、賃金は上がらないと考えているようです。

2月14日(火)発表の米1月消費者物価指数(CPI)は前月比0.5%上昇と市場予想を上ぶれ。食品とエネルギーを除くコア指数も0.4%上昇と市場予想を上回ったことでインフレ懸念から株は売りが優勢となりましたが、前年同月比では7ヵ月連続で伸びは鈍化しています。

2月16日(木)発表の1月の米生産者物価指数(PPI)は前月比0.7%上昇。前月は0.2%マイナスでしたので、前月を上回ったほか、市場予想も上振れ。

CPIも強い結果でしたが、PPIも市場予想を上回る強い結果であったことや、クリーブランド連銀のメスター総裁が前回のFOMCで0.5%の利上げを主張していたことが明らかになったほか、セントルイス連銀のブラード総裁が次回のFOMCで0.50%の利上げを支持する可能性を示唆したことなどから、米国の金融引き締めが長期化するとの観測が相場の重しとなっているようです。

日銀総裁人事が経済学者の植田和男氏となり、米CPIも通過して、来週以降どのような値動きとなっていくのか、株式市場もチェックしていきましょう。

貿易赤字が続いており、2月16日(木)に発表された1月の貿易統計では、貿易収支は3兆4,966億円の赤字と、はじめて3兆円を超える単月として過去最大の赤字となりました。貿易赤字は円安圧力になるため、ドル円は引き続き円安に優位性がありそうです。

TradingViewより

2月17日(金)の日経平均株価は前日比183円31銭安の2万7,513円13銭と反落。前週末2月10日(金)の日経平均は2万7,670円98銭でしたので、週間では157円85銭安となりました。週足で5週ぶり反落となりました。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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