JR西日本・副社長、大雪立ち往生を知ったのは「社外の知人からメール」 情報共有されず

大雪に伴う列車立ち往生問題で記者会見する中村副社長(大阪市・JR西日本本社)

 「私が事象を把握したのは、友人から京都付近で列車が駅間で止まっているとの連絡だった」

 1月24日の大雪でJR京都線などで計15本の列車が長時間立ち往生した問題の原因をめぐり、JR西日本が2月17日に開いた記者会見で、鉄道本部長の中村圭二郎副社長はこう説明した。鉄道の「安全統括管理者」でもあるナンバー2が、都市部の京都エリアで大規模な輸送障害が起きている事態を会社外の知人の知らせでつかむとは一体どういうことなのか。会見では、質問が集中する一幕もあった。

 記者会見した中村副社長によると、午後9時すぎに友人のメールで列車が立ち往生となっていることを初めて知ったという。当時、雪による輸送障害の指揮を担っていた近畿総合指令所の輸送対策室からは一切連絡がなかった。

 会見での主なやり取りは以下のようなものだった。

 記者「知人は社外の人か」

 中村氏「社外の人だ」

 記者「しかるべきラインで情報共有されるべきものなのでは」

 中村氏「それは極めて重要で、必須と考えている。輸送対策室は初動から3時間強は(個別の列車の立ち往生などの)トラブル事象を扱っていたが、そこの情報の集約、共有が満足になされなかった。専属で配置する情報発信役も機能を発揮できなかった」

 JR京都駅や山科駅、向日町駅などで線路のポイント(分岐器)が凍結と積雪で切り替えられなくなり、後続の列車が詰まって次々に立ち往生したのは、1月24日午後7時以降だった。中には帰宅客らで満員の電車もあり、体調不良者も発生していた。立ち往生から2時間以上たってから、中村副社長は事態をつかんだことになる。

 寒波に備えて自宅で待機していたという中村副社長は、連絡を受けてすぐに近畿統括本部に状況を断続的に問い合わせた。「体調不良者が発生していないか」「乗客を徒歩で最寄り駅に避難させられないか」といった助言を同本部に伝えたという。

 命令や指示ではなく、「助言」であるのはどういうことか。

 中村副社長は「長谷川(社長)にしても、私にしても、現地の状況をつぶさに知る立場にない。運行の指揮の権限は、近畿統括本部長や指令所長にある。私たちは命令する立場になく、無理やり命ずることがかえって現場を混乱させると考えた」と説明した。

 15本の列車には、計約7000人が閉じ込められた。最も多い約1400人が乗車していた湖西線の列車(8両編成)では駅間停車から約3時間半後に乗客の降車が始まり、最後の1人が電車を降りたのは翌朝の午前5時半。最長で10時間近く車内にいたことになり、この列車だけで10人が救急搬送された。

 立ち往生した列車では、車掌らが運行指令に対して悲痛な訴えを何度も繰り返していたのを、乗客たちは証言する。湖西線の列車に乗り合わせた会社員の50代男性は「車掌は『前にいる貨物列車を移動させ、山科駅のホームに近づけないかとお願いしているが、返事がありません』と泣きそうな声でアナウンスしていた」と話す。

 当時の車掌と指令のやり取りは全て録音されており、中村副社長も内容を聞いたという。「そろそろ歩いてもらうことを考えた方がいいのではないか」「(列車を)前に少し出した方がいいのではないか」などと車掌からは問題解消に向けた具体的な提案が寄せられていたが、「残念ながら輸送対策室が個別のトラブルの対処に追われ、判断できていなかった」という。

 中村副社長は、一連の問題についてこう釈明した。「安全統括の責任者として近畿統括本部を指導する役割が果たせず、痛切に反省している。今回はっきりしたのは、大規模・広範囲のトラブル発生時には個々の乗務員の判断を最優先にすること。そのルールと運用の変更が重要だ」

© 株式会社京都新聞社