石木ダム 反対住民に「収用地での耕作中止」求める 長崎県が文書送付

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、県は17日、水没予定地に暮らす反対住民13世帯に、土地収用法に基づき所有権が国に移っている収用地の田畑で耕作を止めるよう求めたと発表した。15日付で文書を送付した。
 県河川課によると、2015年に事業用地となる農地の一部を収用。翌年から所有していた4世帯に明け渡しを求める文書を毎月送っている。残りの農地や宅地など全用地を収用した19年以降は13世帯に文書を送っているが、住民は米や野菜を作り続けている。耕作中止を求める文書は初めて。
 「事業用地の不法使用について」と題した文書で、県石木ダム建設事務所長名。県民の安全安心確保へ早期完成は行政の責務とし、工事で作物に被害が出ても「補償の対象とはならない」と警告。同課は「今後、工程に沿った施工が必要になる。具体的な場所、開始時期は妨害で支障が出る可能性があるので示せない」としている。
 一方、住民は反発。岩下すみ子さん(74)は「先祖代々切り開き、受け継いできた田畑。耕作するなということは身が削られるのと同じ」と話し、石丸勇さん(73)は「いよいよ13世帯の土地にも踏み込んでくる可能性がある」と警戒感をにじませた。


© 株式会社長崎新聞社