「ゆがむ人口構成 活力に影響」南島原少子化問題 進む学校統廃合 催し継続に腐心も

北有馬町の地域一帯となったイベント「フェスティビタス ナタリス」。聖夜を巨大なツリーが彩る=南島原市立有馬小(2022年11月1日撮影)

 島原半島南部に位置する長崎県南島原市北有馬町。雲仙・普賢岳の山あいにあり、戦国時代のキリシタン大名、有馬晴信の居城跡で、国指定史跡「日野江城跡」が小高い丘にある。市中心部から雲仙市小浜町へ抜ける交通の要衝だが、人口は合併前の旧8町で最も少ない3062人(昨年末現在)。普段は静かな時間が流れている。
 しかし、年末になると町の様相は一変。南島原市立有馬小にある高さ約30メートルの2本の巨木に約5万個、周辺の街路樹計173本に約3万4千個の発光ダイオード(LED)が彩られる。恒例のクリスマスイベント「フェスティビタス ナタリス」は約440年前、日野江城下でキリシタン文化が繁栄した当時の行列などを再現。子どもたちの笑顔と歓声があふれる。
 北有馬町出身で実行委の野田直也副会長(41)は「少子化の影響でクラブ活動の維持も困難な地域。イベントや催し物が失われないように(地域の大人で)協力している」と語る。
 市の人口は昨年末現在、2006年3月の新市発足から1万3449人減少。65歳以上の高齢者の割合も上昇を続け41%に達する。合計特殊出生率(20年)は県平均の1.61をわずかに上回る1.68だったが、市の出生数は12年の333人から減少し、21年は219人。急速に進む少子化が人口構成にゆがみをもたらし、社会の活力にも影響している。
 市は児童数の減少に伴い、計31校あった小学校を計15校に統廃合。県立島原翔南高の生徒数は07年、424人だったが、翌年の島原鉄道南線廃止の影響などで現在93人に激減。今春の卒業予定者23人のうち、市内に残るのは5人という状況だ。基幹産業の島原手延べそうめんの生産者数は1978年、約450あったが、約240に減少した。
 市社会福祉協議会は少子化に歯止めをかけようと、2015年、南島原結婚サポートセンターを設置。婚活イベントや相談を実施するが、参加者の年齢層は38~45歳。仕事や若者向けの住宅物件の少なさを指摘する声があり、成婚時、島原や雲仙など隣接市や熊本、福岡に転出するケースも。
 担当の松永裕介さん(33)は「(南島原は)赤ちゃん券(オムツやミルク代)補助、保育所や幼稚園の充実、保育料補助など子育てについては、十分と言えるほど手厚いのだが」と首をひねる。
 1月4日の「二十歳の集い」に参加した長崎市在住の女子大生は「自然豊かで良いところだが、『結婚して住む』という選択肢はない。農漁業など第1次産業が多い印象で、企業や仕事も限られ、学んだことを生かせない。義父母との同居や家内労働者としての役割を求められそう。交通網が整備されて諫早市まで30分圏内なら選択肢に入る人はいるかも」と話す。
 北有馬町出身の元市議の男性は「まちの産業構造や交通網、若者の雇用・所得などさまざまな要因が複合的に絡んでいる。少子化問題は国策。もはや南島原市だけで解決できる問題ではない」と嘆く。

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