「アジフライの聖地・松浦」浸透 交流人口の拡大 問われる市外からの誘客

MR「アジフライの聖地 松浦」号を活用したイベント「松浦マーケット」でにぎわう会場=1月21日、松浦駅前アミスタホテル

 先月21日、長崎県松浦市志佐町の松浦鉄道(MR)松浦駅前周辺をメイン会場にイベント列車「アジフライの聖地 松浦」号を活用したイベントが開かれた。「アジフライの聖地」を冠した市内でのイベントは新型コロナ禍では久しぶり。チラシや交流サイト(SNS)だけの周知だったが、市内外の約600人が訪れ、駅前のホテルで農産加工品などを販売する「松浦マーケット」には行列ができた。
 「アジフライの聖地」は全国有数の水揚げ量を誇るアジに市が着目、地域活性化策として2019年4月に宣言した。刺し身でも味わえる新鮮なアジをそのままフライに、加工品は一度だけ冷凍したものしか使わない-など、8カ条の松浦アジフライ憲章を制定。基準を満たした市内35の連携店で提供している。
 取り組みは宣言前年の18年に初当選した友田吉泰市長の一声で始まった。アジフライは全国どこにでもある。それをどう差別化し松浦の活性化につなげるか。ある職員は市内で憲章に沿った松浦アジフライが味わえる連携店のマップを作成。他の職員は全国のイベントでアジフライを揚げまくった。PRが奏功し、東京や福岡に松浦のアジフライにこだわった店もできた。
 松浦市の観光客数は17年の80万2400人が聖地宣言した19年には93万500人に急増した。しかし、20年は新型コロナの影響で71万300人までに激減。勢いをそがれた形になったが、市地域経済活性課の髙橋聡美さん(30)は、取り組みを見直す好機になったと前向きに捉える。
 「イベントはできなかったが、コロナ対策交付金を活用したグッズ開発やモニュメント製作、アジフライ会議、インバウンド(訪日客)向け英語版アジフライマップなど、新たな魅力作り、内容の充実を図ることができた」

「アジフライの聖地 松浦」のヘッドマークを付けた列車から降りる観光客=MR松浦駅

 最近、テレビや雑誌で再び松浦が取り上げられる機会が増えてきた。観光客数も21年に87万1千人と宣言前の水準にまで回復。「アジフライの聖地」は「キラーコンテンツ」(集客力のある事業)として浸透、定着したことを裏付ける。
 友田市長は「コロナ禍で不十分だったインバウンドの誘客に取り組みたい」とする一方で「関西圏でも松浦のアジフライを扱ってくれる店を開拓したい」と国内にも目を向ける。
 松浦市は22年10月、鷹島町沖の海底から鎌倉時代の元寇船の大型木製いかりを引き揚げ、全国ニュースになった。保存処理中のいかりを展示する市立埋蔵文化財センターの入館者数は前年比1.5倍に増えた。同年12月には福島町が「九州オルレ」のコースとして認定。来月4日にオープニングセレモニーがある。
 髙橋さんは「『アジフライ』『元寇いかり』『オルレ』と交流人口の拡大につながるコンテンツがそろってきた」と言う。それぞれのコンテンツを磨き上げ、アクセスルートの整備や連携イベントの開催を通じ、いかに市外から客を呼び込むか。松浦市の人口は2万1369人(1月1日現在)。県北の小さな市の挑戦が続く。


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