読んでもまだモヤモヤする。この社会に渦巻くモヤモヤの正体に真っ向勝負せよ。| 尹 雄大『モヤモヤの正体 迷惑とワガママの呪いを解く』

自分をリープアップしてくれる本を、ライター目線で1冊ずつ紹介する「フクリパbooks」。 先回で『中学生のためのテストの段取り講座』をセレクトしてくださった「本と羊」神田さんによる、オススメの本をご紹介します。

ここ最近、本屋の店主はモヤモヤとしています。共感って必要なのか、個性って必要なのか、協調性ってなんなのか…。何が正しくて何が悪いことなのか。

今回の一冊はこのモヤモヤに応えてくれる内容となっています。

生きづらさという言葉を良く耳にしますが、その点においても、多くの方が心の中に抱えている漠然とした不安を、迷惑とワガママという観点を踏まえて、子育て、コミュニケーション、仕事、感情、教育、笑い、社会、他者の視線・・・8つのモヤモヤに分けて冷静に分析し、考察しています。

私がここで、内容を評するような文章は稚拙すぎて書き切る事は出来ないのですが、一つだけ書かせて下さい。

この中でまず気になったのは「ベビーカー乗車の可否に関する問題」です。問題と書くのも憚られるのですが、僕は昔、混んでいるバスに乗車中に大きなベビーカーで乗り込んで来た女性に苛立ちました。なぜ迷惑を顧みずに、たたみもせずに乗り込むんだろうと。それを友人の母親に話したら「それはあまりにも自己中だよ」と叱責されました。

それからしばらく考えていましたが、要は私自身の都合で怒りが起きているんだという事に気がつきました。赤ちゃんは可愛い。でもその母親の立場まで考慮せずに「みんなが迷惑」「自分勝手なワガママな親だ」と感じていたんだと。本当にみんなは迷惑だワガママと感じていたのか。同じ母親が乗客なら大変だなと感じるだけだろうし、空いていればもちろん迷惑だとも思わない。結局「空気を読め」という漠然とした怒りに過ぎなかったのです。

みなさんはどう考えますか。僕は完全にその答えを持っていません。でも自分の考えを「みんな」という実体のない考えに置き換えてはいけないと思うのです。そして「みんな」に合わせないと疎外されてしまうんじゃないか、そんな意味のない根拠に怯え、従い、不安なままなんとなく生きる事をしないで欲しいとこの本を読んで感じました。

今回はまだ私も全てを理解出来ていないままこうしておすすめしています。

でも読み通してみると、みなさんには、そう簡単に解決出来ないこのモヤモヤの正体に真っ向から立ち向かってほしい。勝負を挑み、「自分」というものを決して「空気を読むだけの下らない人間」にはしてもらいたくないと感じます。

この本の中で朝青龍という元横綱の話が出てきます。この力士の人間味あふれる話はとても参考になります。迷惑とワガママ…この人には関係ありません。自分を持った男だから。彼に不安などないのです。

ぜひ読んでください。さあ、待ったなし、はっけよい!

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モヤモヤの正体 迷惑とワガママの呪いを解く
尹 雄大(著/文)
出版社:ミシマ社
定価:1,800円+税
書店発売日:2020年1月30日
https://honto.jp/netstore/pd-book_30121518.html?partnerid=02vc01

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