<就農研修・諫早の現場> 技術習得、やりがいと課題と 農業学校では補習取り入れ

ゴーヤーの成長を確認する山口さん=諫早市高来町

 長崎県は、人口減少を背景に地域の維持活性化につなげようと、若い世代や移住者に就農を促している。2015年度から技術習得支援研修を実施。農業学校の生徒にも補習を取り入れている。諫早市内の現場を訪ねた。
 同市高来町の山口信太郎さん(28)は19年まで造園会社に勤めていたが、手にけがをしたのを機に転職した。キク農家だった大伯父の勧めで、同市小船越町の県新規就農相談センターで同研修を受講。2カ月の座学後、先輩農家の下で10カ月間、マンツーマンで具体的なノウハウを学んだ。
 早速21年からゴーヤー栽培に単身挑戦。12アールで120株を育て、1年目から7.5トンを出荷した。原油や資材が高騰する折でも、ボイラーなどを使用しないゴーヤー栽培は打撃が少なく、高額なビニールハウスも中古で入手できた。
 肥料の成分バランスや量を見極めるのが難しく、何より自分の体が資本-。こうした不安や課題はあるが、「師匠たちが作ったマニュアルもあり、害虫対策などで失敗しない限り、初心者でも年間6トンは生産できる。やった分だけ成果が出るので、会社員の頃より楽しくやりがいを感じている」と笑顔を見せる。目標は地元雇用を生み出せる規模の企業に育てることだ。
 一番の課題は農地確保だったという。山口さんの場合、研修中に亡くなった大伯父が畑を譲ると言い残してくれた。今後就農する人のためにも「耕作可能な場所を県が新規就農者に優遇して紹介してもらえれば」と提言する。

 同市立石町の県立諫早農業高は、通常の授業とは別に、14年度から「諫農担い手育成塾」を開設。希望する生徒が先進農家や農業施設を見学するなどして、農業に関する広い視野や知識を身につける。今年も76人が受講している。

将来の目標や研修の感想を話す参加者=諫早市栗面町、JAながさき県央本店

 7月27日、同市栗面町のJA施設であった県内農業系高校交流・研修会も、塾のカリキュラムに組み込まれている。諫早農業高を含む計約40人の生徒がスマート農業などを学び、農家の体験談に耳を傾けた。同校の陣野瑠偉さん(16)は「ICTを活用し建物内からも畑を管理できるような、楽に楽しめる農業ができれば。長崎にはおいしいものがあると世界に発信したい」と夢を語った。
 県によると、Uターンなど含めた新規就農者数は11年度に166人だったが、昨年度は287人と増加傾向にある。


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