セレブのチップに命かける白人クルー その下には外国人清掃スタッフ 「逆転のトライアングル」本編映像

2023年2月23日より劇場公開される、第75回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した映画「逆転のトライアングル」から、本編映像の一部が公開された。

公開された映像は2種類。1つ目の映像では、出発前に気合いを入れるクルーたちの様子が切り取られている。リーダーであるポーラが「最後の1時間でも、私たちは常に“かしこまりました”。乗客が望むなら麻薬でもユニコーンでも!」とサービス業の心得を説くと、クルーたちのボルテージは上がっていき、「金!金!」のコールが始まる。一方で接客をしない外国人労働者の清掃スタッフたちは、船の下層で騒がしくなる天井を見つめる。

2つ目の映像では、船の上でひまを持て余したロシア新興財閥“オルガリヒ”の妻・ベラとクルーのシーン。クルーのアリシアをプールに呼び寄せたベラは、「役割を交換するの」「私みたいに優雅に過ごして」と語り、勤務中のアリシアにプールへ入るよう指示する。さまざまな理由をつけて断ろうとするアリシアだが、「私に逆らうの?」とベラにすごまれると、思わず「イエス」と言ってしまう。

2種類の映像とも、クルーたちの必死な姿が切り取られている。乗客たちの無理難題に応える白人クルーが不びんに描かれる一方で、彼らのさらに下には外国人労働者たちの存在も見られ、船内での階級社会について描き出されている。物語の後半では、船が難破して無人島に漂着することによって、この階級のトライアングルが大逆転する。

「逆転のトライアングル」は、ファッション業界とルッキズム、現代階級社会について描いた作品。監督は、「ザ・スクエア 思いやりの聖域」で第70回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞し、本作でカンヌ史上3人目の2作品連続パルムドール受賞を果たしたリューベン・オストルンド。「キングスマン:ファースト・エージェント」のハリス・ディキンソンが主演を務め、本作が遺作となったモデル出身のチャールビ・ディーンのほか、ドリー・デ・レオンやウディ・ハレルソンらが出演する。3月に発表されるアカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚本賞にノミネートされている。

一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■内田けんじ/映画監督(『鍵泥棒のメソッド』)
我々が普段頼りにしている社会性が茶化され、剥ぎ取られ、大笑いさせられる。映画自体が良質な一片のジョークのよう。面白くてちょっと怖い。

■大根仁監督/映像ディレクター(「エルピスー希望、あるいは災いー」)
この映画がパルムドール!?
カンヌ映画祭は狂ってる!良い意味で!!
最高に笑えて、深く考えさせられる最先端映画です!!

■荻上直子/映画監督 (『川っぺりムコリッタ』)
ザマアミロの大連発。金持ちセレブにひがみ根性丸出しにして、ハラを抱えて笑うしかない。

■かが屋 加賀翔/芸人
パルムドールを受賞した作品と聞いていたため、「え!こんなにお笑いなの!?」と驚きながらひっくり返るくらい笑ってしまいました。冒頭からずっと面白かったですがディナーのシーンからは「そんなことされたら笑ってしまいますよ」という展開の連続で正直落ち込むくらいです。自分の世界や価値観が正しいと考えている人の行動はあまりに哀れで恐ろしく、そんな価値観を育ててしまう力がお金にはあるのだと思うと同時に、その おかげでこんなにも面白い映画を観れたのかと不思議な気持ちです。お笑いが好きな人、コントが好きな人に絶対に観てもらいたい作品でした。

■片山慎三/映画監督(『さがす』)
資本主義の本質をブラックユーモアで炙り出し、観ているもののモラルに問いかけてくる。無駄なショットが一切なく、被写体との距離感が絶妙。
ワイドな視点で鑑賞出来る様に設計されているから笑ってはいけないのに笑ってしまう。 2連続のパルムドールにも納得の傑作。

小泉徳宏/映画監督(『線は、僕を描く』)
唯一無二。
演出における『アングル』とは、カメラワークではなく、世の中を眺める角度の事だと突きつけられる。
一生、観ていたい。

■小島秀夫/ゲームクリエイター
四角(スクエア)から三角(トライアングル)へ!
「ザ ・スクエア 思いやりの聖域」の鬼才リューベン・オストルンド監督の才能がまた爆裂!
四角い痛烈な現代社会批判、三角な人間批判!しかし、□でも△でもない、”スフィアな地球“に棲みつく我々人間たちを、超ブラックな笑いのMAD WORLDの中で、逞しく、愛おしく、丸く応援する!
パルムドールだけではなく、あらゆる賞取り合戦で逆転受賞するはずだ!

■斎藤幸平/経済思想家(「人新世の『資本論』」著者)
超格差社会とその批判者への挑発に満ちたユーモア!それでも私は自由と平等を諦めない。

■ゾフィー上田航平/芸人
前半に登場する人生勝ち組連中の行動に虫唾が走れば走るほど後半が爆笑になります。長距離走らせてじっくりお待ちください。

■竹林亮/映画監督(『14歳の栞』『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』)
こんなにぶっ飛んだ話なのに、ずっと自分自身と関連づけて見入ってしまうという凄まじい体験で、巨大な合わせ鏡で我々の常識を覗きつづけさせられているような気分になり眩暈がしました。 観客の思考回路まで精巧にコントロールされているような感覚で、自在に設計された型破りの構成が見事でした。大変勉強になりました。ありがとうございます。

■玉城ティナ/女優
闘うか奴隷になるか、まだまだ世界はこの二択だけなのかと映画を見て愕然としました。
笑っていいの?と思っても周りを伺わず、自分のモラルを確認するように観たい作品です。ウディ・ハレルソンが出てきたときの安心感たるや!

■中田クルミ/俳優
人類皆平等と謳う世界。絶対的に存在するヒエラルキー。
そして欲望に対する弱さ。人間はなんて愚かで滑稽でみっともない生き物なんだろうか。
清々しくも超痛快なアイロニーをブラックユーモアたっぷりに突きつけられ、終始ゲラゲラ笑いっぱなしでした。ぜひ大画面でグラグラと酔いながら見て欲しい。

■中田秀夫/映画監督(『事故物件 恐い間取り』)
欧州の固定化された階級社会への辛辣なるブラックユーモアに見えて、 その虚飾が剥がれ落ちた時に表出する人間のドス黒い情動に戦慄した。

■中野量太/映画監督(『浅田家!』)
現代階級社会をこんなにも大胆かつ緻密なブラックユーモアで魅せ切るなんて大笑いするか、ドキドキするかは、あなたの階級しだい?とにかく、吐きそうなくらい面白いことをお約束します

■成島出/映画監督(『八日目の蟬』)
ここ何年かのパルムドール受賞作の中では群を抜いて面白かった。鬼才が醸し出すブラックユーモアはまるで芳醇なシャンパンのよう

■萩原健太郎/映画監督(『サヨナラまでの30分』)
最高のブラックコメディ。それも大爆笑ではなく、意図せず吹き出す笑いの連続。物語中盤のある出来事と同じように…。効果音であんなに笑ったの初めて。ぜひ5.1chで。

■原田眞人/映画監督(『ヘルドッグス』)
上級民と下級民、美と醜、その境界線で綱渡りする面白さがプロローグから弾ける。これ一作でスターになったチャールビの運命の逆転が無性に哀しい。

■深田晃司/映画監督(『LOVE LIFE』)
経済、ルックス、ジェンダー、あらゆる格差を乗せ出航するこの船を、資本主義の申し子たる複製芸術を通じて眺める観客はもう監督の罠にかかったも同然。しかしこれは率先してかかるべき罠だ。船に乗ろう。まずはそれから。

■福田雄一/脚本家・演出家
人間関係や立場が変わるだけでこれだけの笑いを生み出せるとは!コメディの基礎はこんなところにあるんだなと実感しました!大変勉強になりました!

■ヴィヴィアン佐藤/美術家・ドラァグクイーン
これは『シャイニング』と『蝿の王』とアルトマンの『プレタポルテ』の変奏よ!!! ホテルのエレベーターからインディアンの血が噴出するのではなく、ワタシたち自身の糞尿で窒息するのが現代のホラーなのよ!!!

■前田哲/映画監督(『ロストケア』)
緩んだ身体のネジを締め上げ、頭を揺さぶり続けられる。しかし、この心地良さはなんだ!
映画に酔ってしまった。
この刺激は快感になります。

■みうらじゅん/イラストレーターなど
いや、笑ってる場合じゃない。本作は、ざんねんないきものとしての人間を遺憾なく描いたアンチ・ラブ&ピースの集大成!地獄に堕とされる前に観とくべき。

■三木聡/映画監督(『大怪獣のあとしまつ』)
数年に一度、革新的思想からなるコメディ映画が出現して、全てを過去のものにする。2023年、新たな地平が広がる瞬間を目撃して、あゝ快感…

■ヤマモトレミ/漫画家
爆笑+ドン引き、観る劇薬!

【作品情報】
逆転のトライアングル
2023年2月23日(木・祝)TOHO シネマズ 日比谷 他 全国ロードショー
配給:ギャガ
Fredrik Wenzel © Plattform Produktion

© 合同会社シングルライン