2023年シーズンのMotoGP開幕に向け、マレーシアのセパン・インターナショナル・サーキットで2月5～7日にシェイクダウンテスト、さらに2月10～12日に公式テストが開催された。ヤマハのテストライダーを務め、両テストに参加した中須賀克行に2023年型ヤマハYZR-M1の開発具合について聞いた。
ヤマハのMotoGPマシンを長年開発している中須賀は、今回はシェイクダウンの最終日と公式テスト初日の計2日を走行。現地にはテスト期間中は滞在し、同じくテストライダーを務めるカル・クラッチローとレギュラーライダーのファビオ・クアルタラロ、フランコ・モルビデリ（モンスターエナジー・ヤマハMotoGP）の走りも眺めていた。
「基本カルがメインで、速く走ってタイムを出すのが役目でした。自分は細かい違いを見ることに時間を使い、精査して振り分けていく作業をしました」と切り出した中須賀。クラッチローと中須賀の走行日が異なったのも、役割の違いよるものだったという。
テストの内容は「主にエアロパーツがいっぱいあったので、どう組み合わせたらいいか、どう変わるかのコメントを出しました。あとは、リヤアーム（スイングアーム）が何本かあったので、同じ作り方で材質違いなどをどう違うかをテストしました」と述べる。
シェイクダウンテストでは、ヤマハのみリザルトにライダーの名前ではなく『Yamaha Test1』、『Yamaha Test2』、『Yamaha Test3』と表記されていた。ヤマハは仕様が異なる3台のマシンを用意して、特に3日目は中須賀とクラッチローが交互に3台のマシンを乗り比べていたためだ。
マシンの違いは「1台は去年のベース車、今年のプリ車が2台」と中須賀は説明。2023年型エンジンは後者の2台に搭載されており、その2台はフレーム違いや空力パーツ違いなどを装備しており、比較して良いパーツを選択していったという。
エンジンはバージョンアップした仕様が1種（後の2023年型）があり、昨年のエンジンとそのエンジンを比較したが、新しいものを全員が選択したと中須賀は語った。
「（エンジンは）ファクトリーのライダーから言われ続けたことだったので、少しは（ライバルに）追いついたのかなという印象でしたけど。馬力も出て、扱いにくいところも良いところもあり一長一短なんですけど、そこをマップで調整していくかを洗い出せたかなという6日間のテストでした」
「まだまだ必要ですが、エンジンは現段階ではヤマハとしては頑張って作ってきたので、（クアルタラロとモルビデリが）満足してくれていました」
空力パーツについては「去年にないくらい、いろんなパーツを作って持ってきていたので、（ヤマハが）一生懸命なのにはふたりは喜んでいたし、テストの内容自体は満足していたと思います。細かいエアロも最終的には彼らが判断するので、（開幕前最後の）ポルティマオテストが大事になると思います」
そんなヤマハは公式テストではクアルタラロが総合17番手、モルビデリが総合20番手と下位に沈んだが、アベレージタイムは良かったという。
「一発のタイムは出なかったけど、ファクトリーのふたりは高いアベレージを刻めていました。あとはニュータイヤを入れた時のマシンバランスが悪いみたいなので、そこをセッティングをどうするかが課題ですね。ポルティマオではバランスを変更するみたいです」
「一発のタイムが出なかったので、チームの雰囲気は暗かったけど、ベースアップには満足していました。去年はスリップ入っても離されていたけど、今年はスリップついたら引っ張られていくみたいなので『勝負はできそう』と言っていました」
テストではライバル勢の観察もしていた中須賀は「仕上がりはドゥカティが一番良かったよね。タイムもそうだし、みんなが速いし。次にアプリリアかな」というが、2023年からスタートするスプリントに向けては「走行時間が短くて、素のバイクの性能が試されるので、早くまとめないといけないですが、ファビオはFP1から速いので有利になると思いますけど」と締めた。
リザルト上は上位に食い込めなかったヤマハ勢だが、確かに2023年型YZR-M1の進化は見えている。2チーム4台から、1チーム2台体制と減ったが、クアルタラロとモルビデリによる活躍でタイトル奪還の可能性も高いだろう。
