「ネコを空に飛ばしたい」 長崎市の堀田さん 伝統の張り子でオブジェ創作

「新しい民芸品として作り続けたい」と話す堀田さん=長崎市内の自宅

 伝統的工芸「張り子」の技術を使って実物大のネコのオブジェを作り続けている人がいる。長崎市の堀田孝さん(70)。自身で「長崎はりこ」と名付け、創作は約30年に及ぶ。近年は宙を飛ぶネコを表現し、全国の公募展などで入賞。「長崎のさまざまなネコを空に飛ばしたい」と意欲を燃やす。22日は「猫の日」。
 堀田さんは栃木県宇都宮市出身。40歳で妻の父が住んでいた長崎市に移住した。近所のネコの多さや人がいても逃げ出さない悠然とした姿が目に付いた。ほかにも市内に「工芸品」と呼ばれる物が少ないことも気になった。当時は船舶修繕の企業で金属加工の仕事をしていた堀田さん。幼い頃は粘土細工が好きで手は器用な方。「長崎のネコを張り子で作ってみよう」と思い付き、手のひらサイズの置物を作り始めた。

堀田さんが制作したネコの張り子

 張り子は、粘土などで作った型に紙を何度も貼り重ねて乾かした後、中の型を抜いて中空にした細工物。国内では古くから郷土玩具に用いられてきた。堀田さんは作り方を独学で習得。ネコの柔らかな体を表すため、紙を曲面にぴったり重ねる方法や、障子紙で強度を高める技法などを編み出した。
 着色はせず、色和紙を切って貼ることで三毛やしま模様を表現し、縁の方はあえて紙の繊維が見えるように工夫するのがこだわり。「単に紙を切るだけではなく、日本独特の和紙の風合いをどう生かせるか考える」と話す。
 近年手がける「FLYING CAT」シリーズは、「ネコが部屋の中を飛んでいたら面白そう」と発想した。脚の上げ方や首の位置などを細かく観察し、飛び上がったり地面に降り立ったりするネコの一瞬を張り子で表現。モビールのようにつり下げると、ネコが宙をかけるように見える。
 同シリーズの作品はここ数年、伝統工芸や現代美術の公募展で入賞しており、受賞は意外だったが自信につながったという。現在は夏に東京で開かれる展覧会が目標。尾曲がり猫など長崎らしいネコの表現にも挑みたいとする。
 「失敗しながらも自分で技術を生み出したどり着いた」と振り返る堀田さんは「今の暮らしに取り入れられる『ネオ民芸品』としてこれからも作り続けたい」と前を見据えた。


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