<新型コロナ>クラスター7件…埼玉595人感染6人死亡 ウィズコロナできる人できない人、分かれる理由

埼玉県庁=さいたま市浦和区高砂

 埼玉県は23日、新型コロナウイルスに感染した6人が死亡し、新たに0~90歳以上の595人の感染を確認したと発表した。感染者の内訳は県管轄が388人、さいたま市118人、川口市33人、川越市31人、越谷市25人。

 これまでに確認された感染者は178万4396人。死者は3814人。22日夜時点の重症者は14人、入院は429人、宿泊療養は91人。

 県によると県管轄で70~90代の男女6人が死亡した。さいたま、川口、川越、越谷市での死亡はなかった。

 クラスター(感染者集団)関連は医療機関と高齢者施設で7件確認された。

■感染対策、新たな段階に 23年度県予算「新型コロナ医療」点検

 完全な収束が見通せない新型コロナウイルスへの対応のため、県は2023年度予算案に対策費用約1372億円を計上した。国は5月8日から感染法上の分類を2類から5類に変更し、対応方針を3月に示す見通しで、現段階では県予算執行の先行きに不透明感も漂う。国の交付金を受ける病床確保への補助金や診療・検査医療機関の環境整備などへの影響も大きく、一部からは不安の声も挙がっている。

 大野元裕知事は13日の記者会見で「今年はポストコロナ元年の第一歩。経済や環境などコロナ関連の新予算も入っている」と前向きさを強調。一方、コロナ対応は「新しい役割があるか検討したい。移行期には今ある機能が適用されると思う」と述べた。

 県は妊婦のPCR検査や、感染妊婦の相談対応の予算を盛り込んだ。川越市の埼玉医科大学総合医療センターの産婦人科病棟では14日、江良澄子医師(51)と看護師が「今は皆、卒業したんだね」と話していた。感染疑いの妊婦が隔離を解かれ、専用病室を出たという意味だ。感染者らには、医療用ガウンや二重の手袋など個人防護具(PPE)で対応する。装着を体験してみると、ガウンは熱がこもり、ゴーグルやN95マスクは顔に食い込んだ。脱ぐのも神経を使い、うっかり外側に手が触れるとすぐさま「ウイルスが付いて感染の危険がある」と指摘が飛んだ。看護師はヒーター付き新生児保育器を指し「PPEだと本当に暑い」と訴えた。

 「出産前に子どもを実家に預けに行き、食事をした人は感染疑いとなる」と江良医師。実際に親と食事して入院後感染が分かった人がいたという。疑い妊婦は健康観察などの度、時間や人手が割かれる。分娩(ぶんべん)も、時間が短く感染拡大リスクが低い帝王切開となる。江良医師は「人員や分娩室の確保や調整は大変だが、お産は待ってくれない。感染者への対応に手を取られれば、本来周産期センターが対応すべき患者に対応できなくなる」と話し、「世の中がウィズコロナになっても、そうできない人々はいる」と懸念を示した。

 同院を含む周産期病院が緊急の感染妊婦に対応する「産科リエゾンシステム」など、医療機関の連携や分業が進んだ。県医師会の金井忠男会長は「コロナ禍で構築した良い仕組みは今後も残すべき」と継続の必要性を強調した。5類化は「オミクロン株以降、怖さが減った。死亡者は長いコロナ禍で体が弱った高齢患者が多く、活動的になった方が良い」と歓迎。マスク着用を巡っては「対立が起きないようにすべきだ」と話した。

 コロナ専門病院だった戸田市の公平病院もポストコロナへ動いている。感染者を受け入れていた仮設病床が5類移行で廃止されれば、一般の個室で対応する。公平誠院長(43)は「個室が少ない日本ではクラスター対策が難しかったが、今後、感染対策を踏まえ個室や動線の確保が進むだろう」と展望。一方で「院内感染は対策するが、リスクはゼロにならない。一般の患者は隣の病室に感染者がいる環境を受け入れないのでは」と案じ、「マスクを外す動きは否定しないが、医療機関では着用をお願いするのでトラブルを防ぐ配慮や、次の感染拡大の波が来た時に再び着用するようにしてほしい」と行政に期待した。

 埼玉医科大学総合医療センターでは産婦人科の松永茂剛医師(49)が「5類になった後の感染者や疑い患者への対応はまだ定まっていない」と頭を悩ませている。「全国的に周産期医療体制は脆弱(ぜいじゃく)で、急激な波が来たらベッドとマンパワーのバランスが崩れる。周産期の負担軽減のためにも、一般の産科医療機関への感染対策教育が大事だ」と指摘。江良医師も「感染者数や死者数をただ発表するのではなく、日本や海外のデータを基に、どういうところが逼迫(ひっぱく)するのか発信してほしい。そうでないと、人々の心には響かない」と検証を求めた。

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