名門WSR最後のシートはターキントン。フォード陣営NAPAレーシングUKは4台体制に/BTCC

 共通ハイブリッド機構を導入し2年目を迎えるBTCCイギリス・ツーリングカー選手権に向け、各陣営の2023年体制が続々と確定している。名門ウエスト・サリー・レーシング(WSR)は、サテライト的位置付けでジェイク・ヒルが走らせるBMW 330e Mスポーツの新カラーリングを公開するとともに、本家WSR最後のシートに“4冠王者”コリン・ターキントンの残留を正式にアナウンスした。

 一方、長年フォード陣営の強豪モーターベース・パフォーマンスは、昨季2022年より体制を一新した元王者アシュリー・サットンとダン・カミッシュのペアを継続し、残る2台のフォード・フォーカスSTも編入するかたちで『NAPAレーシングUK』を4台体制に拡充。そのうち1台に、ホンダ陣営のチーム・ダイナミクスから移籍したダニエル・ロウボトムを起用する。

 2022年シーズンまでBMW陣営の一角を形成したシシリー・モータースポーツの活動休止により、移籍加入となったアダム・モーガンと、昨季のオールトンパークで復帰後初優勝、キャリア4勝目を飾ったステファン・ジェリーの残留を発表していたWSRは、最後のシートとして予想どおり“チームの顔”との契約更新を発表。これにより昨季ランキング4位に終わっているターキントンは、前人未到5度目のシリーズチャンピオン獲得に向け、チームと15年目のシーズンを戦うことが決まった。

「2023年もWSRの一員として、このBMW 330e Mスポーツで戦えることを非常にうれしく思う。今年でWSRに加入して15年目になるが、これ以上のチームの一員になることはできないね」と、新年度への意気込みを語ったターキントン。

「2017年のチーム復帰以来、毎年のようにタイトルを争って来られたが、当然のことながら10月にすべてを賭けてブランズハッチに行くことが目標だ。オプションタイヤ、シュートアウトの予選方式、ハイブリッド展開の使用に関するルールの微調整により、2022年よりさらに競争の激しいシーズンになると考えている」

「狩りを続けるためには、すべてのイベントに“プランA”のゲームをもたらす必要がある。WSRのようなエンジニアリングの専門知識と、チャンピオンシップを獲得した経験を持つチームと一緒にいることは、大きなプラスポイントさ。それにアダム(・モーガン)が加わったことで、勝つという同じ野心を持った3人の強力なチームメイトができた。これにより、学び続けて自分自身を改善する機会を得られるだろう」

名門West Surrey Racing(WSR)は、本家最後のシートに”4冠王者”コリン・ターキントン残留を正式にアナウンスした
ジェイク・ヒルが走らせるBMW 330e M-Sportの新カラーリングを公開した『Laser Tools Racing with MB Motorsport』
BMW 330e M-SportでもLaser Tools Racingおなじみのホワイト&アクアブルーのカラースキームを採用した

 そうターキントンが語るとおり、本家のサテライト的存在として継続参戦するヒルは、今季よりレーザー・ツール・レーシングとジョイントし、新たに『レーザー・ツール・レーシング・ウィズ・MBモータースポーツ』としてエントリーするBMW 330e Mスポーツのカラースキームを披露した。

「チームは今年、カラーリングデザインのカードを胸の近くに置き、手の内を隠してきた」と今季もタイトル最有力候補のヒル。「僕自身、チームにできるだけ早くそれを明らかにするよう求める、ファンのコメントをオンライン上ですべて見てきたが、まさにその気持ちを共有していたよ(笑)」

「今週初めて生で見られたが、本当に特別だ。すでに言っているように、今季レーザー・ツールの旗を掲げられることを誇りに思うし、このクルマはシリーズの勢力図に確実に影響を与えるだろうね!」

 同じく実働部隊のMBモータースポーツを率いる、元F1ドライバーのマーク・ブランデルも「プレシーズンごとにマシンの外観を明らかにするのは、いつだってこのスポーツの素晴らしい部分だ」と語った。

「これまでのどのシーズンよりも、サポーターやパートナーからのカラーリング発表への期待が高まっていると感じていた。その期待を裏切らないと確信しているよ。紛れもなくレーザー・ツール・レーシングとのパートナーシップを開始し、テストプログラムでBMWがトラックに出たとき、このアクアブルーがどのように見えるか楽しみだ」

 一方、そのレーザー・ツール・レーシング時代にはインフィニティQ50 BTCCで、それ以前にはスバル・レヴォーグGTで、と2度のタイトルを獲得。前輪駆動のフォーカスSTにスイッチした昨季も4勝を挙げてタイトルレースの輪に加わったサットンは、僚友のカミッシュとともに体制継続で新シーズンに挑む。

「チームは今年、カラーリングデザインのカードを胸の近くに置き、手の内を隠してきた」とジェイク・ヒル
2年目のNAPA Racing UKでタイトル奪還を狙う元王者アシュリー・サットン
今季のMotorbase Performanceは『NAPA Racing UK』を4台体制に拡充

■「目標は、昨年よりも強くなること」と2冠王者サットン

「NAPAレーシングUKとモーターベースの全員が、冬の間もフォーカスの開発に懸命に取り組んできたから、それがトラックでどのように反映されるかを見るのは待ち切れないね。2023年は素晴らしいシーズンになりそうだ」と続けたサットン。

「NAPA陣営の一部として、サム・オズボーンの残留とダン・ロウボトムが加わることは、この冬にバックグラウンドで行われたハードワークのさらなる証拠だ。しっかりとしたテスト計画が整っているし、いくつかのセットアップ変更に取り組む絶好の機会を与えてくれる。目標は、昨年よりも強くなることさ!」

 2022年のオールトンパークで初優勝を挙げ、ランキングでもトップ10に喰い込んだロウボトムは、ここまで2年間所属したホンダ系の名門チームを去り、パーソナルスポンサーのカタクリーンとともに、引退したオリー・ジャクソンの後任としてモーターベース・パフォーマンスに合流する。

「興奮していると言うのは控えめな表現だ。僕自身だけでなく、長年のタイトルパートナーであるカタクリーンにとっても素晴らしい機会になる」と続けたロウボトム。

「僕はずっとNASCARのファンだったから、NAPAがBTCCに進出したとき個人的なレベルで心を打たれたんだ。だからNAPAレーシングUKとカタクリーンのサポートで、キャリアの次のステップを継続できることは言葉では表せない大きな特権だよ」

 そのほか、シリーズが用意するTOCAエンジンを搭載するFK8型ホンダ・シビック・タイプRを走らせてきたBTCレーシングは、元チームHARDでドライバーとして戦ったウィル・パウエル率いるモータス・ワンと併合し、新たにワン・モータースポーツ・チームとして再出発する。

 エースであるジョシュ・クックとの契約延長に加え、2014年以来の付き合いだったレーザー・ツール・レーシングと袂を分ったエイデン・モファットが新加入。この新ペアは『スターライン・レーシング・バイ・ワン・モータースポーツ』のエントリー名でシビックを走らせる。

ホンダ陣営のTeam Dynamicsから移籍したダニエル・ロウボトム(手前)の起用が発表された
旧BTC Racingは、『Starline Racing by One Motorsport』のエントリー名でシビックを走らせる
ヒョンデ陣営のEXCELR8 Motorsportは21歳のルーキー、ローナン・ピアソンを起用(左)、玉突きとなったジャック・ブテル(右)はTeam HARD復帰を決めた

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