テンバガー(10倍株)になりやすい条件とは?金融アナリストが注意点とあわせて解説

「テンバガー」という言葉をご存知でしょうか?

テンバガーとは、英語で10のtenと、野球の俗語で「塁打」を意味するbaggerをあわせた言葉で、10倍以上の株価成長を見せる銘柄のことを指します。皆様のなかには、テンバガーの銘柄を持って、利確した経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

テンバガー銘柄を予想できれば10万円が100万円に、100万円は1,000万円になります。一攫千金が狙えるということで夢が膨らみますが、テンバガーの予想はプロでも難しいと言われます。

今回は2021年、2022年にテンバガーとなった日本の銘柄と、テンバガーになりやすい条件について、私なりの考えをまとめてみましたのでお伝えします。相場の値動きを知るだけでも知見が溜まっていくと考え、毎回恒例の一週間の相場まとめもありますので、どうぞ最後までお付き合いください。


2021年テンバガーを達成した銘柄

ではまず、2021年にテンバガーを達成した銘柄をお伝えします。2021年は大納会終値比でテンバガーを達成した銘柄はありませんでしたが、一年の中で安値と高値を比較すると、テンバガーを達成したといえる銘柄を紹介します。その点はご承知おきください。

グローバルウェイ (3936)

2021年7月21日(水)に発表した業績予想の上方修正をきっかけに、7回連続でストップ高をつけ、その後もストップ高を連発、短期間でテンバガーを達成した銘柄です。

システム投資やDX化を支援するクラウド型のプラットフォームや、口コミ情報等を基にしたニュース記事や転職や就職の情報サイトを展開する企業で、求人企業・転職希望者の両面に対するコンサルティングサービスや、エンジニアの採用・育成によるケイパビリティ拡大にも取り組んでいます。

暗号資産の売却で業績予想の上方修正を発表したのちの急騰がひと段落した2021年8月26日(木)に、5分割の株式分割を実施すると発表。さらに、資本業務提携していたベンチャー企業の株を売却することによる上方修正を発表したことで、株高に拍車がかかったよう。

INCLUSIVE(7078)

出版社やテレビ局、事業会社などのWebメディアの収益化、メディア企業のネットサービス運営を支援する企業です。メディアコンテンツ事業、企画プロデュース事業、食関連事業、その他事業の4セグメントで事業を展開しており、企画制作から収益化まで支援できるところが強み。

2021年10月26日(火)、北海道のロケット開発ベンチャーであるインターステラテクノロジズと資本提携を発表したことが材料視されて急騰しました。ちなみに、インターステラテクノロジズは室蘭工業大学と包括連携協力協定を締結したほか、共同で研究開発を進めている超小型人工衛星打上げロケットZEROは2022年4月にエンジン試験が本格始動しており、2023年度にも打ち上げを目指すと報じられています。

東京機械製作所(6335)

国内最大手の新聞向け輪転印刷機メーカーです。インターネットの普及などから新聞業界は販売部数の落ち込みや広告収入の減少傾向が続いていますが、輪転機事業のほか、AG V(自動搬送装置)の販売や加工組立事業などの新規事業と、ICTプラットフォーム事業の3つのセグメントで企業価値の向上に努めています。

2021年7月21日(水)に通期連結業績予想を大幅に上方修正したことから急騰すると10月、11月には2度の株式分割を実施したことなども買い材料となったようです。

2022年テンバガーを達成した銘柄

2022年の一年間で、安値と高値を比較するとテンバガーを達成したといえる銘柄は2銘柄あります。

バンク・オブ・イノベーション(4393)

スマホ向けゲームアプリを開発している企業で、完全自社開発に強みがあります。「ミトラスフィア」が代表作で、「幻獣契約クリプトラクト」や「ポケットナイツゲーム」、恋活アプリ「恋庭」などを提供しています。

2022年10月18日(火)、約5年ぶりとなる新作スマホゲーム「メメントモリ」がリリースされたことで、急騰につながりました。リリース前から注目を集めており、2023年には200万ダウンロード突破しています。メメントモリは今年のお正月にCMもかなり流れていたので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。同社の代表的ゲームに育ちつつあるという印象です。

マツモト(7901)

日本に数台しかない高性能の印刷設備と高精細FMスクリーンによるオフセット印刷、デジタル・インクジェット印刷など、高い技術力が強みの記念アルバムを制作する企業。学校アルバムの販売が売り上げの約8割を占めるため、4Qに利益が偏重する傾向があります。

2022年6月8日(水)に発表した2022年4月期予想の営業利益が、8期ぶりに黒字転換するとの発表から急騰。薄商いの銘柄だったこともあり、買いが集まったことでの上昇率は激しく、短期間でテンバガーとなりました。

テンバガーが狙える銘柄とは?

プロでも難しいと言われるテンバガーの予想ですが、テンバガーになりやすい傾向の銘柄の条件をまとめてみます。

  • IPOしたばかりの企業、できればその年に上場、上場してから3年以内で新興市場の企業
  • 増収率、高成長が見込める株価500円以下の低位株(300億未満の時価総額が小さい銘柄)
  • 割安(PSRが30倍以下)の新興株
  • 事業内容がわかりやすい企業、新興の産業や世の中の流れに合うビジネスをしている、話題性のある企業はなおよし
  • 創業者や経営している方が大株主となり、業績を牽引していく企業
  • 政策関連など、その年のテーマといえる企業
  • 競合が少ないビジネスを営んでいる、または差別化ができている
  • 有利子負債が少ない企業、粗利益率が5割以上の企業、売り上げ成長が高い企業
  • キーワードとしては事業拡大、提携、市場拡大がホット

テンバガーのように、高い売買益というリターンを追求するということは、リスクも背負うということ。ボラティリティが大きい銘柄であることも想定されます。加えて、チャートをご覧いただいた方はお気づきのように、短期間でテンバガーとなった銘柄は株価が上昇するのも早い一方、トップをつけたあとの下落が早く、下落幅も大きい傾向にあります。「利食い千人力」という相場格言を念頭に、取引をした方がよいかもしれません。

個人的には、1銘柄でテンバガーを狙うより、安定利益を積み重ねて資産を10倍にする方が優位性が高いと感じています。私自身が安定性を重視する投資スタイルだからかもしれませんが……。皆様の投資戦略の参考になれば幸いです。

2月20日週「相場の値動き」おさらい

前回分のFOMC議事要旨は市場の想定の範囲内だったといえる内容で、利上げ長期化観測が引き続き相場の重しとなっています。2022年10-12月期の米実質国内総生産(GDP)改定値は、年率換算で前期比2.7%増と速報値から下方修正したものの2四半期連続のプラス成長となりました。

名目GDPから物価変動の影響を除いた GDPデフレーターは3.9%と上方修正されています。2月24日(金)の日本時間午前9時半過ぎに衆院で行われた所信聴取では、植田総裁候補が金融緩和を継続するという方針が明らかとなっています。

2月24日(金)の日経平均株価は前営業日比349円16銭高の2万7,453円48銭と3営業日ぶり反発。前週末2月17日(金)の日経平均は2万7,513円13銭でしたので、週間では59円55銭安となりました。週足で小幅に続落となっています。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

© 株式会社マネーフォワード