坂本龍一とDumb Typeのコラボレーションアートボックス、『Playback 2022』が8月30日に発売決定

Photo by zakkubalan ©2022 Kab Inc.

『Ryuichi Sakamoto|Art Box Project』として、1年の活動をまとめたアートボックスを数量限定で制作し、毎年完売している坂本龍一。 今年は、坂本龍一がディレクションしたDumb Typeのインスタレーション作品のために特別に制作された「レコード」を個人が所有できる作品として再構成した作品を発売する(詳細はこちら)。 ミュンヘンでのDumb Type 展のためにインスタレーション作品《Playback》のディレクションを手がけた坂本龍一。発案したのは世界16地域のフィールドレコーディング音源を集め、それぞれの場所の「位置」、「時間」、そしてコントリビューターが切り取る「固有の音」を俯瞰するように再生すること。

▲Photography:shiro takatani

今回のArt Boxでは、この16の音源に坂本龍一による未発表の音源「Tokyo 2021」を加え、17枚のレコードをコンパイルした。レコードA面にDumb Typeの《Playback》と《2022》にも組み入れられている各都市のフィールドレコーディング音源を収録。B面(※)には、AUTORA FACTORY PLATEの独自技法により絵の濃淡を音の強弱に置き換え音声データ化することで、各地域の地図が透明な盤に浮き上がり、それぞれの都市を中心とした円形の世界地図となるように特殊カッティングを施す。Dumb Type の高谷史郎がアートディレクションした特別仕様のArt Boxは8月30日に世界限定100セットのみ発売される。 特設サイトでは予約が開始され、アートジャーナリストの小崎哲哉による作品解説が公開されている。 また、2月25日よりアーティゾン美術館(東京・京橋)にて、Dumb Typeが『第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap』を開催している。会場では坂本龍一を新たなメンバーに迎えてヴェネチアで初披露された新作《2022》を再構築した《2022: remap》を日本初公開している。坂本が本作のために新たに制作した音源に加え、坂本の盟友デヴィッド・シルヴィアンや、カヒミ・カリィらによる朗読、そしてこのArt Boxにも収められている、坂本の呼びかけにより世界各地でフィールドレコーディングされた音が、ダムタイプの視覚言語を通じて、その場に立って各人が耳を澄ませることの意味、機械を通じた知覚のあり方を浮き上がらせることを試みる。

▲Photography:maximilian geuter

※B面には、音(ノイズ)によって図柄が描かれています(「音楽」は収録されていません)。

坂本龍一コメント

『壊すことから始まる。もう30年以上前から、音楽作品自体がアートであるようなものを作りたいと思っていた。

以前はいろいろなルールがあり出来なかったのが、ようやく出来るようになった。』

と前作を発表した時に言いましたが、それに尽きる、という思いがあります。

同時に、今作は長年共に制作してきた高谷史郎さんによるアートディレクション、

そしてDumb Type の作品を16枚、さらにインスタレーションでは使っていない僕の音源を加え、17枚のアナログ盤を届けるという試みにとても興奮しています。

高谷史郎コメント

2018年フランスのポンピドゥー・センター・メッスでのダムタイプ展の際に制作した《Playback》はレコードを使ったサウンド・インスタレーションで、いつか様々な音楽家の方たちにレコードを作ってもらってコラボレーションできたらと考えていました。今回(2022 年5 月から9 月にかけて)ミュンヘンのHaus der Kunst 美術館でのダムタイプ展の機会に、坂本龍一さんディレクションによる《Playback》を展示することができてとても嬉しく思っています。

坂本さんの友人知人16 名によるこのフィールド・レコーディング音源は、ヴェネチア・ビエンナーレのために制作した新作《2022》にも組み入れることになりました。なぜならこの作品は「ソーシャルメディアの普及や新型コロナウイルスの感染拡大などによって大きく変化した、コミュニケーションの方法や世界を知覚する方法について」をテーマに構想し、1850 年代の地理の教科書からテキストを引用している作品なので、世界各地から届いた環境音は、展示室から遠く離れた地球の様々な場所を想起させるトリガーとして作用してくれるからです。

このプロジェクトは、そこに存在しない街の雰囲気をその音から感じる──世界を都市のノイズから認識する試みでもあります。あなたの周りにもある様々な音や、静寂に、耳を傾けてみてください。

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