郷土史家の竹内佑宜氏 『日本理想の里 勤皇村への挑戦〜棟方志功と保田與重郎、作州の仲間たちの奇跡』を自費出版 / 岡山県津山市

郷土史家の竹内佑宜さん(75)=山下=が、戦後間もないころ日本の復興を夢見て日本原に入植した開拓団と、板画家・棟方志功や文芸評論家・保田與重郎らとの交流をまとめた記録集『日本理想の里 勤皇村への挑戦〜棟方志功と保田與重郎、作州の仲間たちの奇跡』を自費出版した。
登場人物の一人でもある、元作楽神社宮司の福田景門さんの一年祭に合わせて発刊した。
旧陸軍演習場があった日本原で、元国学院大教授で哲学者の松永材が主導した日本再建運動に共鳴した人たちが共同体を形成し、農業に臨んだ。その中心にいたのが、のちに「ケンコウ牛乳」で知られるようになる武山巌だった。
武山らは松永を通して日本主義の維新者・影山正治を知り、運動に共鳴した上斎原出身の詩人・柳井道弘を介して日本浪曼派の文人・保田與重郎や、板画家・棟方志功と出会う。
棟方は戦後、作州の地をたびたび訪れている。開拓団の共同生活にふれた棟方は日本原を「日本理想の里」と呼んだ。日本原での棟方は「モンペ姿で、菅で編んだ籠を背負い、村内の同志間を回っている」と紹介されている。宴が催されると当時大流行した「わたしのラバさん」を共に歌いながら、ふんどし一つになって天真らんまん、腰を振って踊ったという。一方で棟方が津山の芸術家や文化人と交流を持った記録もある。
日本原の開拓史や、武山巌が代表を務めた「直毘塾」の資料、M&Y記念館所蔵資料、福田景門さんらへの取材をもとにまとめた。一連の運動は短歌を通じた文芸運動の側面もあり、登場人物たちが詠んだ多数の歌も収録している。
竹内さんは「戦後の日本原で繰り広げられた、日本精神の復興を目指した素朴な運動をいまに伝えたかった。棟方志功は作州を遍歴した平賀元義の歌を好んでいた。日本の歴史文化を心より尊んだ先人たちの思いを大切にしたい」と話している。
A5判、226㌻、1200円(税込)。柿木書店(元魚町)、照文堂書店(堺町)、津山朝日新聞社で販売中。
また同書をテーマにした展示会「棟方志功と仲間展」が25、26の両日、山下の旅館お多福で開かれる。棟方志功直筆の絵や書、関係書籍、資料などを展示する。入場無料、午前10時〜午後4時。
問い合わせは、竹内さん(☎090―7509―2662)。

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