変わる街支える普遍の味 レトロ飲食店を訪ねて 宇都宮・まちなか

創業からの味を守り続けている慶安楼の「レバニラ炒め」

 意識して歩くと、街なかには中華料理店が多いことに改めて気付く。本場の味をうたう「ガチ中華」やホテルにある高級店、モダンな料理を提供する新店などジャンルも豊富だ。中でも大衆的な町中華には常連をつかんで放さない魅力がある。

 1970年創業の「慶安楼」(西1丁目)は、変わり続ける街を変わらぬ味で支え続けている。

 ■要望応えてLLサイズも

 開店当初は、周辺に金融や保険会社が多く、客はサラリーマンが中心だった。しかし10年ほどすると企業がJR宇都宮駅近くに相次いで移転。代わりに常連となったのが高校生の運動部員たちだった。「作新学院高のラグビー部を中心に、口コミで広がったみたいだね」と2代目店主の白井文男(しらいふみお)さん(59)。彼らの要望に応え、丼物のご飯が2倍の2合ほどになる「LLサイズ」(150円増し)も始めた。現在は高校生やOB、周辺の専門学校生など幅広い層に愛される。

 時代は変わったが、白井さんは母で初代調理担当の故キヨ子(こ)さんの味は変えない。塩コショウのみでシンプルに味付けする「レバニラ炒め」(570円)はご飯にもビールにもぴったりの一皿だ。「他の店はオイスターソースを使ったりする。おいしいとは思うけど、お客さんのためにも母の味は変えない」。“いつものあの味”をずっと守り続けてほしい。

 ■心躍る食品サンプル

 店頭の食品サンプルを見ると、不思議と心が躍るのは記者だけだろうか。最近はあまり見かけなくなったが、街なかの町中華ではまだまだ現役だ。

 東京・下北沢の「珉亭」本店で修行し、1988年にのれん分けされた「珉亭」(中央2丁目)は開店当初から食品サンプルを飾る。店主の仁瓶智彦(にへいともひこ)さん(63)によると専門の業者と契約し、2年に1回程度、新品と入れ替えている。「メニューだけよりも、自分が何を食べたいかイメージしてもらえる」(仁瓶さん)。町中華ブームの影響か、土日は若い客が増えたそうだ。

 早朝から営業する「你来(ニーライ)」(中央本町)にも食品サンプルがある。こちらも専門業者と契約し、1985年に店舗を改修した際に設置した。店主の大岩悦子(おおいわえつこ)さん(79)は「サンプルがあるからってお客が来るわけじゃないけど、今更なくせないよね」。

 他にも街なかでは「明朗飯店」(宮園町)や「中華園」(泉町)などの老舗が元気に営業中だ。一方で昨年4月に「ミヤコレ」で取り上げた「大番」(泉町)を久しぶりに訪ねると、扉には閉店を告げる張り紙。ご飯が進む濃い味付けと、店主の嶋田(しまだ)さん夫婦の明るい接客を思い出した。

メモ

 【慶安楼】▽西1の4の3▽営業時間 午前11時~午後8時▽定休日 日曜▽(問)028.633.1735

 【珉亭】▽中央2の3の6▽営業時間 午前11時半~午後3時、午後5~11時(日曜、祝日は午後5時40分~10時)▽定休日 火曜▽(問)028.632.9517

 【你来】▽中央本町1の18▽営業時間 午前3時~午後2時▽定休日 日曜▽(問)028.633.1661

 【明朗飯店】▽宮園町1の2▽営業時間 午前11時半~午後1時50分ラストオーダー(LO)、午後5時半~8時半LO▽定休日 水曜、日曜▽(問)028.634.1731

 【中華園】▽泉町2の12▽営業時間 午前11時~午後2時、午後6時~午前0時(各30分前LO)。土曜は夜営業のみ▽定休日 日曜、祝日▽(問)028.621.8159

食品サンプルが並ぶ店頭に立つ仁瓶さん
レトロ感が漂う你来の食品サンプル

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