2月27日、ACOフランス西部自動車クラブは、6月10~11日に決勝レースが行われるWEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースの暫定エントリーリストを発表した。1923年に開催された第1回から数えて100周年となる今大会には、章典外“ガレージ56”のNASCARシボレー・カマロを含む合計62台が名を連ね、欠場チームが出た場合に備えたリザーブとして10チームが待機している。
スポーツカー黄金時代の再来と言っても過言ではないだろう。“世界三大レース”のひとつであるル・マン24時間での総合優勝という“栄冠”を目指し、最高峰カテゴリーのグリッドに7つのメイクスから計16台が参加する状況は、誰にとっても喜ばしい事態のはずだ。
そのトップカテゴリーのリストに並ぶ7メーカーは、前年に引き続きWECハイパークラスに参戦するトヨタ、グリッケンハウス、プジョーと、2023年からシリーズに参入するフェラーリ、ヴァンウォール、ポルシェ、キャデラックだ。
ポルシェとキャデラックは北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権で今季から採用されている次世代プラットフォーム“LMDh”を用いた車両での参戦となり、ポルシェに関してはペンスキー・モータースポーツと提携するワークスチームが走らせる3台のポルシェ963に加え、プライベーターのハーツ・チームJOTAのカスタマーカーも出場予定だ。JOTAのドライバーにはアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ、ウィル・スティーブンス、イーフェイ・イェの3名が指名された。
キャデラックはチップ・ガナッシ・レーシング(CGR)が運営するワークスチームと、同じくワークス格のアクション・エクスプレス・レーシングから計3台のキャデラックVシリーズ.Rが参戦し、CGRはWECに投入するクルマにIMSAの1台を加えた2台体制となる。
フェラーリはWECフルシーズンの布陣をル・マンでも維持し、新開発のプロトタイプカー、フェラーリ499Pによる2台体制で実に半世紀ぶりとなるワークス参戦を果たす。昨年WECにデビューしたプジョー・トタルエナジーズは“リヤウイングレス”のプロトタイプマシン、プジョー9X8で初のル・マンに挑む。こちらもシーズンの体制と同じくダブルカーエントリーだ。
ル・マン6連覇を狙う王者TOYOTA GAZOO RacingもWECの布陣を踏襲。前年と変わらぬドライバーラインアップでライバルメーカーの挑戦を受ける。エントリー車両は先日発表された改良型トヨタGR010ハイブリッドだ。
一方、トヨタと同じくハイパーカークラスで3年目のシーズンを迎えるグリッケンハウス・レーシングは、フルシーズンを戦う708号車に姉妹車709号車グリッケンハウス007 LMHを加えた2台体制を敷く。なお、ドライバーは6名中4名がTBAとなっており、現時点ではロマン・デュマとフランク・マイルーの2名のみが登録されている。
バイコレス改め往年のF1メーカーのブランド名を使用するフロイド・ヴァンウォール・レーシングチームは、ヴァンウォール・バンダーベル680単機での出場に。ドライバーには元F1ワールドチャンピオンのジャック・ビルヌーブを擁す。
■LMP2クラスは24台、LMGTEアマは21台がエントリー
最多24台がエントリーしているLMP2クラスは、WECにフル参戦するプレマ・レーシング、ベクター・スポーツ、ユナイテッド・オートスポーツ、JOTA、チームWRT、インターユーロポル・コンペティション、アルピーヌ・エルフ・チームの7チーム計11台と、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズやAsLMSアジアン・ル・マン・シリーズで成功を収めル・マンへの“自動招待枠”を勝ち取った6チーム、さらにELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに参戦している複数のチームが参戦を許された。
使用する車両が実質的にオレカ07・ギブソンのワンメイクとなるため、毎年激しい戦いが繰り広げられる同クラス。合計24台のうち3分の1を占める8台は、ブロンズドライバーの搭乗が義務付けられるプロ・アマエントリーとなっている。
2022年限りでLMGTEプロクラスが消滅したため、唯一の“ハコ車”カテゴリーとなるLMGTEアマクラスでは21台のGTEカーがリストに名を連ねた。この中には日本チームのDステーション・レーシングも含まれ、星野敏/チャーリー・ファグ/藤井誠暢が777号車アストンマーティン・バンテージAMRのドライバーとして登録されている。また、フェラーリ488 GTEエボを走らせるケッセル・レーシングからは木村武史が参戦予定だ。
参戦車両は前述のアストンマーティン、フェラーリとポルシェ911 RSR-19、シボレー・コルベットC8.Rの4車種で、ポルシェが最多の8台。次いでフェラーリが7台、アストンマーティン5台、シボレーはコルベット・レーシングの1台のみとなっている。
なお、アメリカのメーカーもう一台のシボレーマシンを、ジミー・ジョンソン/マイク・ロッケンフェラー/ジェンソン・バトン組という“夢のトリオ”で走らせるが、彼らが駆るNASCAR版シボレー・カマロZL1の特別仕様は章典外のガレージ56枠からの参戦となる。オペレーションを担当するのはアメリカン・オーバルの強豪ヘンドリック・モータースポーツだ。
この他、27日に発表された第100回記念大会のエントリーリストには、LMP2クラス3台、LMGTEアマ7台の都合10台で形成されるリザーブリストが付属されている。欠場チームが出た際に繰り上がるトップバッターは、フェラーリ488 GTEエボを待機させるスプリット・オブ・レースだ。同2番手にはファン・パブロとセバスチャンのモントーヤ親子を擁すドラゴンスピードUSAが並んだ。
「ル・マン24時間レースは、6月に行われる世界耐久選手権の第4戦で100周年を迎える準備ができている」と語るのは、ACOのピエール・フィヨン会長。
「100周年を記念する特別なエンターテインメント・プログラムに加え、コース上でも華やかなレースが繰り広げられることになるだろう。このような象徴的なレースの100周年記念に立ち会えることは、一生に一度の経験だ」
「これほどまでに長い歴史を誇り、史上最高のスポーツイベントのひとつとなることが約束されているイベントは他にそうないだろう」
■2023年WEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レース 暫定エントリーリスト(2月27日付)
** No. WEC Class Team Car Driver Tyre
1
2
W
HYPERCAR
キャデラック・レーシング
キャデラックVシリーズ.R
E.バンバー
A.リン
R.ウエストブルック
MI
2 3
HYPERCAR
キャデラック・レーシング
キャデラックVシリーズ.R
S.ブルデー
R.バン・デル・ザンデ
TBA
MI
3
4
W
HYPERCAR
フロイド・ヴァンウォール・
レーシングチーム
ヴァンウォール・
バンダーベル680
T.ディルマン
E.グエリエリ
J.ビルヌーブ
MI
4
5
W
HYPERCAR
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ
ポルシェ963
D.キャメロン
M.クリステンセン
F.マコウィッキ
MI
5
6
W
HYPERCAR
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ
ポルシェ963
K.エストーレ
A.ロッテラー
L.ファントール
MI
6
7
W
HYPERCAR
トヨタ・ガズー・レーシング
トヨタGR010ハイブリッド
M.コンウェイ
小林可夢偉
J-M.ロペス
MI
7
8
W
HYPERCAR
トヨタ・ガズー・レーシング
トヨタGR010ハイブリッド
S.ブエミ
B.ハートレー
平川亮
MI
8
38
W
HYPERCAR
ハーツ・チームJOTA
ポルシェ963
A.フェリックス・ダ・コスタ
W.スティーブンス
Y.イェ
MI
9
50
W
HYPERCAR
フェラーリ・AFコルセ
フェラーリ499P
A.フォコ
M.モリーナ
N.ニールセン
MI
10
51
W
HYPERCAR
フェラーリ・AFコルセ
フェラーリ499P
A.ピエール・グイディ
J.カラド
A.ジョビナッツィ
MI
11 75
HYPERCAR
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ
ポルシェ963
F.ナッセ
TBA
TBA
MI
12
93
W
HYPERCAR
プジョー・トタルエナジーズ
プジョー9X8
P.ディ・レスタ
M.イェンセン
J-E.ベルニュ
MI
13
94
W
HYPERCAR
プジョー・トタルエナジーズ
プジョー9X8
L.デュバル
G.メネゼス
N.ミューラー
MI
14 311
HYPERCAR
アクション・エクスプレス・レーシング
キャデラックVシリーズ.R
L.F.デラーニ
A.シムズ
J.エイトケン
MI
15
708
W
HYPERCAR
グリッケンハウス・レーシング
グリッケンハウス007 LMH
R.デュマ
TBA
TBA
MI
16 709
HYPERCAR
グリッケンハウス・レーシング
グリッケンハウス007 LMH
F.マイルー
TBA
TBA
MI
17
9
W
LMP2
プレマ・レーシング
オレカ07・ギブソン
B.フィスカール
J.M.コレア
F.ウグラン
GY
18
10
W
LMP2
ベクター・スポーツ
オレカ07・ギブソン
R.カレン
TBA
TBA
GY
19 13
LMP2
Pro/Am
タワー・モータースポーツ
オレカ07・ギブソン
J.ファラノ
TBA
TBA
GY
20 14
LMP2
Pro/Am
ニールセン・レーシング
オレカ07・ギブソン
R.セールス
M.ベッシェ
B.ハンリー
GY
21
22
W
LMP2
ユナイテッド・オートスポーツUSA
オレカ07・ギブソン
P.ハンソン
F.アルバカーキ
TBA
GY
22
23
W
LMP2
ユナイテッド・オートスポーツUSA
オレカ07・ギブソン
J.ピアソン
T.ブロンクビスト
O.ジャービス
GY
23
28
W
LMP2
JOTA
オレカ07・ギブソン
D.ハイネマイヤー-ハンソン
O.ラスムッセン
P.フィッティパルディ
GY
24 30
LMP2
デュケイン・チーム
オレカ07・ギブソン
N.ジャニ
R.ビンダー
N.ピノ
GY
25
31
W
LMP2
チームWRT
オレカ07・ギブソン
S.ゲラエル
TBA
TBA
GY
26 32
LMP2
インターユーロポル・コンペティション
オレカ07・ギブソン
C.クルーズ
TBA
TBA
GY
27
34
W
LMP2
インターユーロポル・コンペティション
オレカ07・ギブソン
J.スミエコウスキー
A.コスタ
F.シェーラー
GY
28
35
W
LMP2
アルピーヌ・エルフ・チーム
オレカ07・ギブソン
A.ネグラオ
TBA
TBA
GY
29
36
W
LMP2
アルピーヌ・エルフ・チーム
オレカ07・ギブソン
M.バキシビエール
TBA
TBA
GY
30 37
LMP2
Pro/Am
クール・レーシング
オレカ07・ギブソン
N.ラピエール
A.コイニー
M.ヤコブセン
GY
31 39
LMP2
Pro/Am
グラフ・レーシング
オレカ07・ギブソン
F.エリオー
TBA
TBA
GY
32
41
W
LMP2
チームWRT
オレカ07・ギブソン
R.アンドラーデ
TBA
TBA
GY
33 43
LMP2
Pro/Am
DKRエンジニアリング
オレカ07・ギブソン
T.バン・ロンプイ
TBA
TBA
GY
34 45
LMP2
Pro/Am
アルガルベ・プロ・レーシング
オレカ07・ギブソン
G.クルツ
J.アレン
C.ブラウン
GY
35 47
LMP2
クール・レーシング
オレカ07・ギブソン
R.デ・ゲルス
V.ロンコ
TBA
GY
36 48
LMP2
IDECスポール
オレカ07・ギブソン
P.ラファーグ
P.L.シャタン
L.ホア
GY
37
63
W
LMP2
プレマ・レーシング
オレカ07・ギブソン
D.ピン
D.クビアト
M.ボルトロッティ
GY
38 65
LMP2
パニス・レーシング
オレカ07・ギブソン
M.マルドナド
T.バン・デル・ヘルム
J.バン・ウイタート
GY
39 80
LMP2
Pro/Am
AFコルセ
オレカ07・ギブソン
F.ペロード
B.バーニコート
N.ナト
GY
40 923
LMP2
Pro/Am
レーシングチーム・ターキー
オレカ07・ギブソン
S.ヨロック
TBA
TBA
GY
41 16
LMGTE Am
プロトン・コンペティション
ポルシェ911 RSR-19
R.ハードウィック
Z.ロビション
TBA
MI
42
21
W
LMGTE Am
AFコルセ
フェラーリ488 GTEエボ
S.マン
S.コスタニティーニ
U.デ・ポー
MI
43
25
W
LMGTE Am
ORT・バイ・TF
アストンマーティン・
バンテージAMR
A.アル・ハーシー
TBA
TBA
MI
44
33
W
LMGTE Am
コルベット・レーシング
シボレー・コルベットC8.R
N.キャツバーグ
B.キーティング
N.バローネ
MI
45
54
W
LMGTE Am
AFコルセ
フェラーリ488 GTEエボ
T.フロー
F.カステラッチ
D.リゴン
MI
46 55
LMGTE Am
GMBモータースポーツ
アストンマーティン・
バンテージAMR
G.デルマン・バーチ
K.H.イェンセン
J.レノ・モラー
MI
47
56
W
LMGTE Am
プロジェクト1・AO
ポルシェ911 RSR-19
PJ.ハイエット
G.ジャネット
M.カイローリ
MI
48
57
W
LMGTE Am
ケッセル・レーシング
フェラーリ488 GTEエボ
木村武史
G.ハファカー
D.セラ
MI
49
60
W
LMGTE Am
アイアン・リンクス
ポルシェ911 RSR-19
C.スキアボーニ
TBA
TBA
MI
50 66
LMGTE Am
JMWモータースポーツ
フェラーリ488 GTEエボ
T.ノイバウアー
TBA
TBA
MI
51 72
LMGTE Am
TFスポーツ
アストンマーティン・
バンテージAMR
A.ロビン
M.ロビン
V.アッス・クロー
MI
52 74
LMGTE Am
ケッセル・レーシング
フェラーリ488 GTEエボ
D.フマネッリ
TBA
TBA
MI
53 77
LMGTE Am
デンプシー・プロトン・レーシング
ポルシェ911 RSR-19
C.リード
TBA
TBA
MI
54
83
W
LMGTE Am
リチャール・ミル・AFコルセ
フェラーリ488 GTEエボ
L.P.コンパンク
A.ロベラ
L.ワドゥ
MI
55
85
W
LMGTE Am
アイアン・デイムス
ポルシェ911 RSR-19
S.ボビー
M.ガッティン
R.フレイ
MI
56
86
W
LMGTE Am
GRレーシング
ポルシェ911 RSR-19
M.ウェインライト
TBA
TBA
MI
57
88
W
LMGTE Am
プロトン・コンペティション
ポルシェ911 RSR-19
G.ブルーニ
TBA
TBA
MI
58
98
W
LMGTE Am
ノースウエストAMR
アストンマーティン・
バンテージAMR
P.ダラ・ラナ
TBA
TBA
MI
59 100
LMGTE Am
ワーケンホルスト・モータースポーツ
フェラーリ488 GTEエボ
C.ハル
TBA
TBA
MI
60
777
W
LMGTE Am
Dステーション・レーシング
アストンマーティン・
バンテージAMR
星野敏
C.ファグ
藤井誠暢
MI
61 911
LMGTE Am
プロトン・コンペティション
ポルシェ911 RSR-19
M.ファスベンダー
R.リエツ
TBA
MI
62 24
INNOVATIVE
ヘンドリック・モータースポーツ
シボレー・カマロZL1
J.ジョンソン
M.ロッケンフェラー
J.バトン
GY
■リザーブリスト
Order No. Class Team Car Driver Tyre
R1
555
LMGTE Am
スピリット・オブ・レース
フェラーリ488 GTEエボ
D.キャメロン
M.グリフィン
D.ペレル
MI
R2
81
LMP2
Pro/Am
ドラゴンスピードUSA
オレカ07・ギブソン
H.ヘドマン
J.P.モントーヤ
S.モントーヤ
GY
R3
82
LMGTE Am
リシ・コンペティツィオーネ
フェラーリ488 GTEエボ
T.バイランダー
TBA
TBA
MI
R4
15
LMP2
Pro/Am
ニールセン・レーシング
オレカ07・ギブソン
A.ウェルズ
M.ベル
TBA
GY
R5
46
LMGTE Am
チーム・プロジェクト1
ポルシェ911 RSR-19
T.グロック
TBA
TBA
MI
R6
44
LMP2
Pro/Am
ARCブラティスラバ
オレカ07・ギブソン
M.コノプカ
TBA
TBA
GY
R7
52
LMGTE Am
フォーミュラ・レーシング
フェラーリ488 GTEエボ
J.ラウルセン
C.ラウルセン
TBA
MI
R8
95
LMGTE Am
TFスポーツ
アストンマーティン・
バンテージAMR
J.ハーツホーン
TBA
J.アダム
MI
R9
59
LMGTE Am
ガレージ59
フェラーリ488 GTEエボ
A.ウエスト
TBA
TBA
MI
R10
27
LMGTE Am
ハート・オブ・レーシングチーム
アストンマーティン・
バンテージAMR
I.ジェームス
TBA
TBA
MI