「大きなスライスとたまに出る引っかけ」は8時のボールを打つイメージで直す

スライスとたまに出る引っかけに悩む受講者のスイングを分析

「基本的には球がつかまらず、意識的につかまえようとすれば大きく引っかけてしまう」、そんな悩みを抱える方は多いと思います。ショットが安定せず左右に球が散ってしまう人は、改めてゴルフクラブの特性を知っておく必要があります。ゴルフクラブはそもそも、フェースターンする前提の重心設計なので、それを生かすスイングができれば球は勝手につかまるものなのです。プロゴルファーとの決定的な違いも解説していきます。

今回の受講者は…

「3年ぐらい前はフックに悩んでいましたが、手を使わないように意識したら今度は球がつかまらなくなって。常につかまらないわけではなく、ときどき引っかけも出てしまいます。いろいろなレッスン動画を見て自分なりに試行錯誤していますが、解決策が見つかりません…。」(松澤さん 平均スコア100前後)

インパクトでスイング軌道に対して4度近くフェースが開いている

松澤さんのインパクトの瞬間のヘッド挙動を見ると、インサイドアウトでスイングできているにもかかわらず、軌道に対してフェースが開いていることが多いですね。中・上級者はインサイドアウト軌道で振れているものですが、実は、安定するインサイドアウト軌道と、そうでないものがあるのです。そうでない場合は、再現性を維持するのが困難で、乱れ始めると右へ左へと球が荒れ、ショットが不安定になりがちです。

テークバック時のフェースの開きがプロの倍以上

クラブの挙動を見ると、ハーフウェイバック時、トップ時ともに、プロの平均のフェースの開き具合より、大きく開いています。左手の甲が空を向く形でテークバックしているためトップではクラブを支え切れず、左手首が甲側に折れ、さらにフェースが開いています。今回は、ゴルフクラブの特性を最大限に生かすための振り方を体感してみましょう。

ダウンスイングの“8時”時点でのヘッド位置比較(左が辻梨恵プロ、右が受講者)

レッスン前に、辻梨恵プロと松澤さんのインパクト直前のヘッド位置を飛球線後方からの視点で比較してみましょう。時計で例えると、体の正面から見て6時をインパクトとすると、その手前の8時でのクラブヘッドの位置です。この時のボールとヘッドとの距離感に注目してください。プロはかなり遠いところにあるのに対して、松澤さんはほぼ飛球線上まで接近しているのが分かると思います。プロの場合はフェースが勝手にターンするクラブの特性を生かしてインパクトに向かうので、この時点でボールとヘッドの距離に開きがある。一方で多くのアマチュアはそれができていないのです。

ヘッド軌道上にある8時のボールを意識してみよう

上げた軌道より低い軌道で下ろすとヘッドは自然にターンする

プロのスイングでは、ヘッドはどのような動きをしているのでしょうか。それは右手1本でスイングすると体感できます。右手1本の素振りで、今まで通りトップまで上げてそのまま下ろす場合と、トップから少し低いところを下ろす場合の違いを感じてみてください。後者の方はヘッドが自然にターンするはずです。プロはテークバックの軌道よりも低い軌道からクラブを下ろしていて、これにより手を返す意識がなくてもヘッドがターンするのです。かといって、実際にスイングの切り返しで故意に腕を低くしようとしてもなかなか上手くはいきません。

ハーフウェイバックでヘッドは手元と同じ高さ、フェースは正面方向に向ける

まずは、テークバックで意識すべきポイントをお教えします。これまでのでは松澤さんはヘッドがあまり上昇せず、インサイド方向へ引きすぎていました。ハーフウェイバックでは手元とヘッドを同じ高さにして、その時点でフェースが体の正面方向を向くように意識しましょう。ハーフウェイバックからトップまでは、何も意識する必要はありません。

空中の8時のボールを6時のボールに向かって打つイメージ

ダウンスイングでは、8時地点にある仮想ボールを6時のボールに向かって打つイメージで振り下ろします。このようにペットボトルにボールを乗せ、そこをヘッドが通るようにゆっくりダウンスイングしてみましょう。ダウンスイングでの体の使い方が、いままでと大きく異なることが分かるはず。腰をしっかり切らないとその位置にヘッドを下ろせないですし、ここを通れば自然にハンドファーストのインパクトになることも分かります。ただし、実際にペットボトル上のボールを打つのは危険なので、あくまでもプロのスイングを体感するだけにとどめておきましょう。

コースに出ると頭が真っ白になって、6時の位置にあるボールに当てたいという意識に支配されがちです。そうなると、小手先を使った悪い調整が始まります。コースで調子を崩してしまう一因はそこにあるのです。そんなときは、空中にある8時のボールを通過させるイメージを持ってみてください。練習時には常に意識しておくと良いでしょう。

それでは今回のレッスンを動画でおさらいしましょう。

動画:左右に球が散るときはどうやって直す?【サイエンスフィット】動画はオリジナルサイトでご覧ください

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