2年間何をしていたのか…気球問題から日本の防衛意識の低さが浮き彫りに

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。2月20日(月)放送の「GENERATION」のコーナーでは、“気球問題”と“日本の防衛”について議論しました。

◆自衛隊法はもう古い、法律を改正すべき!?

2月4日、アメリカ軍が中国の偵察気球を撃墜し、その残骸から情報収集活動に使われる重要なセンサーなどを回収したことを発表しました。その後、米ブリンケン国務長官は、中国の外交担当トップと会談し、中国の偵察気球がアメリカ領空を飛来したことを「無責任だ」と非難すると、中国側は反発しました。

一方、日本でも過去に同様の気球の目撃事例があります。防衛省は2月14日、2019年から2021年にかけて九州と東北で確認された3件の飛行物体について「中国が飛行させた無人偵察用の気球だと強く推定される」と発表。今後は領空侵犯を防ぐため、気球の情報収集・監視強化を行っていくとしており、岸田首相は「領空侵犯は断じて受け入れられない」と強調しました。

なお、上記3件の飛行物体確認時、政府は自衛隊の緊急発進の対象とせず、当時、防衛大臣だった河野さんは当時、気球の行方について「気球に聞いてください。安全保障に影響はない」と話していました。

こうした政府の対応に、獨協大学特任教授の深澤真紀さんは「先日、(自民党の)石破(茂)さんが言っていたように、自衛隊法84条を、緊急事態的に解釈を広げることはあり得ると思うが、そもそも自衛隊法が古い。ドローンや無人飛行機などに対し、いかに対処するかは大事」と懸念。

また、気球というと多くの人が観光や乗り物のイメージを持つものの、歴史的に見ると第一次世界大戦時にドイツのツェッペリン号がロンドンを爆撃したり、日本でも第二次世界大戦時にアメリカに向け風船爆弾を飛ばしたり、過去に軍用として使われてきたことがあるとし、「歴史に学んだり、今後新しい技術が出来てきたりすることも考慮して考え直していかないといけない」と慎重な対応を希望します。

自衛隊法84条は「有人で軍用の航空機が領空侵犯した場合、着陸や退去を促すため必要な措置を講じられる」とあり、武器使用は正当防衛・緊急避難のみ承認されているため、今回のような気球に対しては攻撃できないというのが、政府の見解でした。しかし、2月16日に領空侵犯への対応として無人機は撃墜しても人命が失われないため、正当防衛・緊急避難以外でも武器使用問題なしと判断。空路の安全確保や地上の国民の生命や財産保護のためでも撃墜可能とし、要件を緩和しています。

◆問われる日本の防衛インテリジェンス

一連の状況を踏まえ、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは「日本のインテリジェンスは弱い」と指摘。というのも、2019~2021年にかけて3つの飛行物体が確認されたものの、それが中国のものと推定されると発表したのがつい先日。「もしアメリカで騒がれなければ、おそらく今回の法解釈の見直しもなかった。日本の防衛分野におけるインテリジェンスの弱さが浮き彫りになった」と指摘します。

現在、緊急的に法解釈の運用を見直す話がありますが、「本来これは真正面から法改正するか、もしくは政府与党で詰めるとしているが、せめて国会で議論してもらわないと。防衛に関わることを政府与党だけで決めていいものではないと思う」と意見します。

株式会社ABABA代表の久保駿貴さんも、今回の法解釈の見直しは「アメリカで動きがあったから」と推察しつつ「そもそも(飛行物体を確認して以降)何をしていたのか」と疑問視。加えて、中国側もアメリカが偵察用の気球を飛ばしていると訴えたり、日本を牽制したりと問題が拡大していることもあり、それがどう外交に影響が及ぶかを危惧。「日本も防衛費を増やしたが、防衛意識というところから考えていく必要がある」と主張していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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