“コロナ世代”の高校3年生が卒業式で語った胸の内…「前向きに生きようと必死だった」「初めて素顔見た」

マスクをせず笑顔で卒業証書を受け取る生徒=3月1日、福井県坂井市の坂井高校

 福井県内の高校の卒業式が3月1日始まった。文部科学省や福井県教育委員会が「マスクを着用しないことが基本」と通知する中でも、習慣になったマスク姿で出席する卒業生が目立った。「親に晴れ姿を見てほしい」とクラス単位で素顔で退場した生徒や、校歌斉唱を再開した学校も。新型コロナウイルスに翻弄され続けた高校生活から、それぞれの形で新たな日常へ一歩を踏み出した。

 1日は県立の約半数と私立5校で卒業式が行われた。国公立大2次試験の中期、後期日程を控え、県立の普通科系を中心に「マスク着用を勧める」と判断した学校が多かった。

 坂井高校は、県教委などの通知を踏まえ、マスク着用を「一人一人の判断に任せる」と卒業生213人に事前説明した。入場した生徒の9割ほどが着用し、教員は「思った以上に多かった」。各コースを代表し卒業証書を受け取る8人は事前に話し合い、全員がマスクなしで臨んだ。退場の際は情報システムコースの32人が一斉にマスクを外し、大きな拍手に包まれた。保護者の来場制限は今回からなくなり、両親そろって見守る姿も見られた。

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 啓新高校は、「就職に向けた研修にも配慮」(伊藤昭一教頭)し、卒業生323人全員がマスクを着けて式に臨んだ。新型コロナ流行後初めて、国歌や校歌を斉唱。卒業生全員の名前を各担任が読み上げ、生徒は大きな返事で応えた。

 今年の卒業生は、全国一斉休校の中で入学し、3年間各種行事の縮小・中止を余儀なくされた。卒業生の7割がマスク姿で臨んだ足羽高校で、女子バスケットボール部主将を務めた生徒は答辞で「目標を失いそうになりながら、前向きに生きようと必死だった」と振り返り、在校生に向け「当たり前の日常は当たり前ではない。残された時間を悔いのないように過ごして」とエールを送った。

 マスクなしで出席した同校の男子生徒は「みんなの顔が見たいと思って、まず自分が外した。クラスが違うと、卒業式で初めて顔を見た同級生もいた。春からの大学生活ではマスクをしなくてもいいことも楽しみの一つ」と話した。

 啓新高校のサッカー部主将だった男子生徒は「卒業アルバムの写真はマスク姿ばかりで、コロナがなければ、もっと思い出がつくれたのではないかと悔しい」とこぼした。生徒会長だった女子生徒は、同級生全員で歌う最初で最後の校歌に「みんなの気持ちが一つになった気がした」と、笑顔で学びやを巣立った。

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