広がる探究活動の評価…福井県の武生高校から東京大学、京都大学の合格者 大学側が求める生徒像の傾向とは

写真を拡大 女子生徒が「6回作り直しました」と選抜プレゼンでつくったポスター
写真を拡大 「探究は楽しかった」と振り返る男子生徒の学びの成果

 大学の総合型・学校推薦型選抜(総合・推薦)で、合否を受験生の「探究」活動で判断する制度が広まっており、福井県教委では「県立高校においても探究活動が進み、推薦や総合型選抜で合格する生徒が増えている」と話す。このうち、武生高校からは本年度、同選抜で東京大学に1人、京都大学に1人が合格した。2人はともに武生高校探究進学科初の卒業生で「学びは楽しいと探究学習に取り組んで気づいた」と目を輝かせる。

選抜試験のプレゼンで鋭い質問

 「市民が育つ学校を目指して」の探究とプレゼンで、東京大学教育学部に合格したのは探究文科の女子生徒。取り組んだ校則見直しの活動で、参加意向の生徒数と実際の参加生徒数の差は「生徒の市民性の欠如」と考察。学校側も考えが不統一で生徒の混乱を生んでいるなどの3点の問題点を挙げ、「生徒と教員の幸せを両立できる学校」をつくる要件などを導いた。

 選抜試験のプレゼンでは「市民性とは?」「誇りを持って判断する、その主体は」などと鋭い質問もあったという。女子生徒は校則見直し活動で「武生高校の誇りについて考える会」の開催などを経て「武生高校改革会」を設立、後輩に活動を引き継いだ。「探究活動では、必要と思った行動ができてとても楽しかった」と振り返った。「中学時代は人前で話すのは苦手だった。自分の成長を実感できた」と話した。

「解き明かす楽しさ分かった」

 「越前市の小学校区分は効率的か」を研究した探究理科の男子生徒は京都大学経済学部に合格した。「最終的な結論から言えば、今の区分けは合理的です」

 男子生徒は、最短距離を直線で計測するユークリッド距離という計算方法と、タテ・ヨコ移動で最短距離を計算するマンハッタン距離という二つの計算手法ではじき出した通学距離と、実際の区分けとを照合。違いがある部分は区分け変更すべきかどうかを一つ一つを検討した。「計算上の距離と区分けが違う理由は、川や大きな道路を避けるという安全のためだったり、人口が少なかったりと理由があった。区分けはその点を配慮していた」と話す。

 1カ所だけ2つの学校が隣接した地域があり「この区域では通う学校をどちらか選択式にしたり、学校の統合も考えられる」と提案した。男子生徒は「探究はとことん突き詰めて考えられておもしろい。一度解いた数学の問題を、一般化したらどうなるかと考え直すなど、興味があることを解き明かす楽しさが分かった」と話す。

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「大学は主体的に探究学習に取り組む生徒を確保」

 同校の畑義則進路部長は「ない答えを導き出していく探究を楽しみながら学びを深めてくれた」と2人の高校時代を振り返る。

 総合・推薦での大学入学者が増えている点について、県教委では「各大学は主体的に探究学習に取り組んでいる生徒を確保しようとしている」と傾向を分析。大学以外の進路も含め「希望する進路を実現できるよう、各高校の探究的な学びを支援していく」とした。

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