苦境の春、値上げ続々 原材料費や電気代高騰... 要因重なり「努力も限界」 栃木県内食品メーカー

 原材料費や電気代などの高騰を受け、栃木県内の食品メーカーで値上げの動きが広がっている。納豆業界で売上高3位のあづま食品(宇都宮市)は1日、約5年ぶりに商品を値上げした。4月にはそば粉製造の松屋製粉(上三川町)、6月には米菓の丸彦製菓(日光市)などが価格の引き上げを予定している。帝国データバンクの調査では、今年1~4月に全国で1万5千品目を超える食品が値上げされる見通し。昨年に続いて値上げに踏み切る県内事業者もあり、苦しい局面が続いている。

 あづま食品は約20の全商品を値上げする。2018年5月以来という。引き上げ幅は主力の納豆が12~20%で、有機大豆納豆は20%を超える。岡安男(おかやすお)副社長は「原材料、光熱費などあらゆるものが値上がりし、企業努力も限界を超えた」と苦しい胸の内を語った。

 麺類製造販売のオニックスジャパン(宇都宮市)も1日、日配品を除く調理麺を8%値上げした。

 松屋製粉は来月1日、輸入玄ソバを使ったそば製品を1キロ当たり50円、平均10~15%引き上げる。玄ソバの北米での作付け減少やロシア産の関税引き上げも影響し、外国産の仕入れ価格が19年と比べ約2.3倍になっているという。

 滝沢ハム(栃木市)は円安進行で輸入肉の価格が上昇し、昨年に2度値上げした。それでも電気代高騰など取り巻く環境は厳しく、山口輝(やまぐちあきら)常務は「上げ幅は一概に言えないが、これまで上げ切れなかった部分を4月に上げたい」と話した。

 丸彦製菓も油脂や包装資材などの高騰を受け、昨年9月、商品の一部を8%引き上げた。現在、主原料の加工米も値上がりしているため、6月には他の商品も同様に引き上げる予定だ。

 原材料高などに加え、高病原性鳥インフルエンザの影響による卵の供給不足も事業者にとって打撃となっている。煮卵製造の日光食品(日光市)は4月1日に10%程度値上げすることを決めた。担当者は「卵価格は2倍以上になっており、この程度の値上げではまだ赤字」と吐露する。

 帝国データバンク宇都宮支店の担当者は「全国と同様、県内食品メーカーも値上げしないと利幅が取れず、生きていけない状況だ」と説明している。

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