「絶望感 この事実を抜かすことは決してしてはならない」遺族憤り…第五福竜丸が教科書から消える “被爆地”市教委が決定

教材から漫画「はだしのゲン」の削除を決めた広島市教育委員会が、静岡県焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」の記述もなくすことが分かりました。この決定に、乗組員の遺族は「ものすごい絶望感を感じる」とコメントしています。

焼津港所属の第五福竜丸は1954年、太平洋で操業中にアメリカの水爆実験による「死の灰」を浴びて、乗組員全員が被ばくしました。

現在の広島市教委の中学3年生向けの教材では、核兵器をめぐる世界の現状について学ぶ際に、導入部分として、第五福竜丸の被ばくに関する記述がありました。ところが、これについて、教材の検証会議が「第五福竜丸が被ばくしたという記述のみにとどまり、被ばくの実態を確実に継承する学習内容となっていない」と課題を指摘。このため、新年度からの教材では記述をなくし、地図や表、グラフなどから、具体的にとらえられる資料に変更されたということです。

広島市教委では、第五福竜丸は中学3年生の社会科の教科書で、原水爆禁止運動のきっかけとして取り上げられていることから、「今後も教科書と関連付けながら教えていく」としています。

この決定に乗組員の遺族は…。

<第五福竜丸の元乗組員 大石又七さんの義理の妹 河村恵子さん(75)>

「あぁ…そうかっていう、ものすごい絶望感というか、がっかり感。すごく衝撃的でした。広島の原爆と長崎の原爆、それと第五福竜丸。これは1セットです。この事実を抜かすことは決してしてはならない。強い憤りを感じます」

広島市教委の平和教育の教材をめぐっては、漫画「はだしのゲン」が別の内容に差し替えられることになっています。

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