公園で野外フェス、水辺でキャンプ…新幹線駅から5分の“非日常” 福井のまちなかに人呼ぶ仕掛けづくり

【グラフィックレコード】まちなかを楽しむ
音楽だけでなく、福井城址でのサウナやお堀でのカヌー体験などが企画されたワンパークフェスティバル=2022年9月、福井県の福井市中央公園

 一流アーティストのステージを椅子に腰かけながら眺め、酒を楽しむ。少し歩いてフードエリアに立ち寄り、福井の食に舌鼓を打つ-。2022年9月に福井県の福井市中央公園で開かれた「ワンパークフェスティバル」。福井城址でのサウナやお堀でのカヌーが体験できる企画もあり、十人十色の“非日常”があふれた。新幹線駅から徒歩5分という中心市街地のど真ん中でのフェスは全国的にも珍しい。歴史や自然がコンパクトに詰まった「音楽プラスアルファ」も魅力だ。

 フェスは3回目を迎え、県外客の割合が初めて5割を超えた。特に関東圏からの来場者が増え、経済波及効果は過去最高の約8億円に上った。民間主導のイベントは、新しいエンターテインメントとして定着しつつあり、新幹線福井開業を前に一定の集客を見込めるコンテンツに育っている。

 今後のフェスの方向性について、実行委事務局で市の第三セクターまちづくり福井の岩崎正夫社長(59)は「まち全体を楽しむという色合いを濃くしていきたい」。ライブ客が足羽川河川敷でキャンプをしたり、県内観光地をフェスのサテライト会場にしたりとアイデアは尽きない。実行委の勝田達運営委員長(39)は、福井市東公園を建設候補地とするアリーナ構想と結びつけ、屋外と屋内のステージをつなぐなど規模を拡大した将来像を描く。

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 新たな担い手の創出に向け、JR福井駅周辺をキャンパスに見立てた「ふくまち大学」が22年夏に立ち上がった。足羽川の水辺空間を活用する取り組みでは、季節ごとにキャンプやクラフトビールイベントが形になった。まちなかでのイベント実現を伴走支援し、若者らの思いを形にする福井市の制度も整いつつある。

 市街区の土地利用などを研究する福井大工学研究科の原田陽子准教授は「既存の資源を多くの人が見つめ直す契機になったことが何よりの新幹線開業効果」と指摘する。

 福井商工会議所と県、市でつくる県都にぎわい創生協議会が22年10月に策定した「県都グランドデザイン」は、足羽川河川敷の整備、風情を残す浜町の洗練化、養浩館庭園や福井城址の歴史に触れる散策路創出といった、それぞれの個性を磨き上げた未来予想図を提示した。これまで主流だった都市の郊外化に対するアンチテーゼともいえる指針で、策定に関わった都市計画の専門家、後藤太一さん(福岡市)は「福井市は(職場や住居、公的施設などの)都市機能が郊外に分散していて、真ん中(中心市街地)が小さい。そこに市内外から人を呼び込む処方箋になると考えた」。

 人が人を呼ぶ好循環をまちなかに、ひいては福井全体にどう広げていけるか。新幹線開業は変わりゆくまちとの関わり方を一人一人に問いかけている。

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 2024年春の北陸新幹線県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シン・フクイケン」。第2章のテーマは「変わるかも福井」です。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

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