初代王者ブラウンは第2世代アウディに。BTCC経験者オリファントも参戦/TCRオーストラリア開幕戦

 世界中で展開されるTCRシリーズのうち、先陣を切って開幕を迎えたTCRオーストラリアの第1戦が、2月24~26日の週末にシモンズプレインで開催され、ヒョンデ陣営のベイリー・スウィーニー(HMOカスタマー・レーシング/ヒョンデi30 N TCR)が3戦2勝と好発進。

 そんな豪州の新年度では、初代王者ウィル・ブラウン(MPCアウディ・リキモリ・レーシングチーム)が待望の第2世代アウディRS3 LMS 2にスイッチし、かつてBTCCイギリス・ツーリングカー選手権を戦ったトム・オリファントが新たな2年契約を締結。アシェリー・スワード・モータースポーツ(ASM)のアルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCRで、シリーズ初参戦を果たしている。

 2019年の創設初年度にチャンピオンシップ制覇を成し遂げたブラウンは、昨季2022年も散発的なプログラムながらシリーズ参戦を継続。初代のアウディで挑みつつも勝利を飾り、ランキングでも新王者トニー・ダルベルト(ホンダ・レーシング・チーム・ウォール/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)に次ぐ2位に入った。

 そんな元王者は、昨季は僚友ジェイ・ハンソンがステアリングを握っていたメルボルン・パフォーマンス・センター(MPC)所有の個体を引き継ぎ、通算4勝と9回のファステストを記録した現行モデルにスイッチした。

「まったく新しいアウディで、こうしてふたたびリキモリやMPCと提携できるのは素晴らしいことだ」と語ったRSCレプコ・スーパーカー・チャンピオンシップのレギュラーも務めるブラウン。

「2022年最後のバサーストでは2位に終わり、タイトルを奪還できず残念だった。でも、この新型でレースに復帰できることに興奮しているし、今季こそタイトルを獲得したい。それこそ僕がここにいる理由さ」と続けたブラウン。

 一方、2018年にBTCCデビューを果たし、2019年からは名門ウエスト・サリー・レーシングのBMWをドライブしたオリファントは、2021年を最後にイギリスでの活動を終えると、翌年には婚約者との生活のためオーストラリアに移住。そして今季よりASMと2年間の新規参戦契約を結び、同シリーズにフル参戦する最初の国際ドライバーとなった。

「こうしてダウンアンダーでも戦えることが発表でき、本当に喜んでいる。オーストラリアでレースをすることは夢であり、それが2023年になってようやく叶ったよ」と語ったBTCC通算2勝のオリファント。

「ここは明らかに競争の激しいカテゴリーであり、ウィル・ブラウンのようなドライバーがその質を証明している。彼らと戦えるのは素晴らしいことだし、本当の挑戦だ。すべての瞬間を楽しみにしている」

BTCCイギリス・ツーリングカー選手権を戦ったトム・オリファントは、Ashley Seward Motorsport(ASM)のアルファロメオ・ジュリエッタ・ヴェローチェTCRで、シリーズ初参戦を果たす
新王者トニー・ダルベルト(Honda Racing Team Wall/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)は新リバリーに
引き続き参戦のベン・バルグワナ(Burson Auto Parts Racing/プジョー308 TCR)は、シリーズでも開催指定を受ける『TCR World Tour』にも挑戦する

■ポールシッターが出走できず

 こうして始まったタスマニア島の週末は、最初のプラクティスから新型アウディの効力を発揮したブラウンが、古巣HMOカスタマー・レーシングのスウィーニーとトップタイムを分け合うと、予選ではアウディが先行。Q1からわずか3周で首位通過を決めると、Q2でもエンジントラブルに見舞われた同車種のザック・ソーター(タフリフト・レーシング/アウディRS3 LMS 2)らを尻目に、今季最初のポールポジションを射止めた。

「最後のアタックラップに入ることができたのはとてもラッキーだった。そのラップをした直後に、ドライブシャフトが飛び出していたからね」とあわやの事実を明かしたブラウン。

 結局、セッション終了直前に頭をもたげたこの問題が尾を引き、ポールシッターは土曜レース1をスタートすることができず。同じくトラブル発生でQ2出走が叶わなかったソーターも出走せず。

 これで単独フロントロウに着いたジョシュ・バカン(HMO Customer Racing/ヒョンデ・エラントラN TCR)だったが、今季より投入の新型サルーンはターボブーストの異常により後方に追いやられ、2列目3番グリッド発進だったスウィーニーがファステストラップの追加ポイントも獲得し、2023年最初のトップチェッカーを受けた。

「今年の素晴らしいスタートだ。まさに“メガ”レースだったね! プレッシャーが取り除かれたから、実際に最高のスタートを切ることができた」と勝者スウィーニー。

 明けた日曜は前日トップ10リバースのレース2をアーロン・キャメロン(プジョー・スポール・GRMチーム・バルボリン/プジョー308 TCR)が獲ったものの、最終レース3ではポール発進を決めたスウィーニーが週末2勝目を獲得。

 その背後ではプラクティスでのマシンに「本当に苦戦」していたと明かした王者ダルベルトが、周囲の脱落で得た「予想外の表彰台」と言う土曜の2位に続き、この最終ヒートでも連続2位ポディウムで喰らい付く結果に。注目のオリファントは8位、4位、5位と安定したリザルトで、TCRのデビューウイークを終えている。

2023年最初のヒートは、ヒョンデ陣営のベイリー・スウィーニー(HMO Customer Racing/ヒョンデi30 N TCR)が勝利
リバースグリッドのレース2はアーロン・キャメロン(Peugeot Sport GRM Team Valvoline/プジョー308 TCR)が逆転で制した
3戦2勝と好発進のスウィーニー(中央)に、王者ダルベルトが連続2位で喰らい付くシーズンスタートに

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